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理系令嬢、没落公爵家を科学で救う  作者: 此花サギリ


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第68話 香りと妙薬――聖女への策略


隣国の小さな町に、キャサリン・フラン男爵令嬢の存在感が静かに広がっていた。一軒家での薬屋経営を続けつつ、彼女はもう一つの計略に着手していた――それは社交的影響力の拡大だ。薬屋の信頼を基盤に、彼女は魅惑の香水と恋の妙薬を駆使して町の貴族や教会関係者に接近していく。


「香水は微妙な香りで、心をほぐす程度に……妙薬は直接的な効果を与えるため、慎重に」


キャサリンは鏡の前で微笑む。香水を手首や髪の毛先にひと吹きし、ほんのりとした香りを漂わせる。町の貴族や教会関係者が接近すると、自然と距離を縮め、会話の機会を生み出す。


教会の大司教の子息もまた、町の評判を聞きつけ、薬屋に足を運んだ一人だった。キャサリンの香水の香りと微妙な心理的影響を感じた彼は、無意識に彼女に心を傾けていく。


「あなたの薬は本当に素晴らしい……それに、他の魅力も……」


思わず漏れた言葉に、キャサリンは微笑みを返すだけで、特別な反応は見せない。表情の端に微かな揺らぎを残すだけで、相手の心は彼女の策略通りに動く。


その後、キャサリンは巧みに町の社交イベントに出席し、大司教の子息や町の有力者と接触を重ねた。香水の効果で彼らの意識に柔らかく影響を与え、恋の妙薬によって好意や関心を増幅させる。側近たちは忠誠心を全力で活かし、彼女の周囲を守りつつ、薬や香水の使用のタイミングをサポートする。


「この町で、私の存在を無視できないものにする……」


キャサリンは心の中で計算する。香水や妙薬を駆使することで、教会関係者の間に自然と“信頼される令嬢”というイメージを植え付けることができる。彼女の行動はあくまで自然に見えるため、疑念を抱く者はほとんどいない。


大司教の子息は、町でキャサリンの話題を聞くたびに、その影響力の大きさに驚きを隠せなかった。彼は徐々にキャサリンを聖女のような存在として上に報告することを考えるようになる。


「大司教様……この町に、非常に徳の高い令嬢がおります」


こうして、キャサリンは教会の上層部に自然に注目されるようになる。彼女の香水と妙薬による影響力は、単なる心理操作ではなく、教会における“徳行と奉仕の象徴”として認識され始めたのだ。


そしてある日、正式に大司教の判断が下る。隣国の町における彼女の活動、薬屋での健康支援、そして社交界での礼節と魅力の発揮が評価され、聖女の称号が授与されることが決定した。


「聖女……ふふ、なかなか悪くない称号ね」


キャサリンは微笑む。その心の奥には、聖女の称号がもたらす戦略的価値を計算する冷静さがあった。これにより、隣国だけでなく、王都や乙女ゲーム続編での影響力も増すことになる。香水や妙薬の心理的効果が、単なる個人への魅力から、社会的評価の獲得へと昇華した瞬間だった。


側近たちは忠誠心を全力で発揮し、キャサリンの行動をサポートする。アルトは報告書や記録の整理を担当し、ビンセントは護衛として外部の干渉を防ぐ。ゲオルグは町の治安と物流を管理し、ニコルは薬屋の運営や原材料の確保を継続する。忠誠心が彼女の策略を形に変えていく。


キャサリンの計画は順調だった。薬屋の評判、社交界での存在感、香水と妙薬による心理的影響――すべてが連動し、隣国の町でキャサリンは“聖女”として認識されるまでに至ったのだ。


「これで、王都の者たちも私を無視できない……薬屋、香水、妙薬、そして聖女の称号。すべての布石が揃ったわ」


夜、薬屋の灯りが町に柔らかく漏れる中、キャサリンは窓辺で遠くの教会の塔を見つめる。鐘の音が静かに響くが、彼女の心は冷静かつ熱く燃えていた。聖女という称号は単なる名誉ではなく、心理戦と影響力拡大のための戦略的カードであり、王都や乙女ゲーム続編での次なる舞台での優位性を確保する重要な資産だった。


こうして、キャサリン・フラン男爵令嬢は、香水と恋の妙薬、そして薬屋と聖女の称号を駆使し、隣国で確固たる影響力を手に入れたのだった。



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