記録者:単一不認識果実修道会・第Ⅳ観測班
我々第Ⅳ班の任務は、世界の底(次元の最下層)から響く「クチバシの研磨音」の計測と、それが殻内宇宙の地殻や物理的均衡に与える影響の追跡である。神の身だしなみは、我々にとっての天災と同義である。
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■ 某月某日:【絶対防壁の微振動】
世界の底、次元の最下層にある絶対防壁に向けて、神が巨大なクチバシを激しく擦りつけた。
「シュッ、シュッ」という規則的な摩擦音が、次元の壁を突き抜けて観測所の計測器を叩く。
このわずかな震動が138億光年の距離を伝搬し、地球の地殻のプレートをわずかに鳴動させた。地上の地震学者はプレートテクトニクス理論でこれを説明しようと躍起だが、彼らがモニターしている波形の正体は、神がクチバシについたワカモレの食べ残しを削ぎ落としている音に過ぎない。
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■ 某月某日:【クチバシの鋭利化と災害確率】
神がクチバシの先端を、より鋭く、より冷徹に研ぎ澄ましている。
観測ログによれば、この研磨作業が長時間に及ぶほど、地上の火山活動が活性化する傾向が確認された。
神がクチバシを研磨するたびに、この宇宙の「境界線」が微細に削り取られている。
研磨されたクチバシの輝きが増すことは、ハッチング(孵化)の際、神がこの宇宙を突き破るための準備が整いつつあることを示唆している。観測所内の防震シェルターの稼働率を最大まで引き上げた。
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■ 某月某日:【ワカモレ残留物の検出】
研磨の過程で、神のクチバシから飛び散った微細な飛沫を回収・分析した。
驚くべきことに、その成分は高濃度の脂質と、未知のアミノ酸で構成された「ワカモレの残留物」であった。
この物質が地殻の深層に浸透した箇所では、物理法則が局所的に歪み、重力が逆転したり、時間が数秒間だけループしたりする現象が起きている。
我々はこれを「聖なる食べこぼしによる因果の汚染」と呼んでいる。人類が歩くこの大地は、神の食事のカスによって補強されているに過ぎない。
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■ 某月某日:【研磨作業の急停止】
神が突如として、クチバシの研磨を停止した。
あまりにも唐突な沈黙が、次元の最下層を支配する。
計測されていた震動がピタリと止まり、同時に地球上のすべての地震活動が連鎖的に収束した。
この不気味な静寂は、神が「クチバシの汚れが完全に落ちた」と判断したことを意味するのか、それとも別の「何か」に興味を移したのか。
クチバシの先端が我々の次元の方を向いて静止しているのを確認。修道士全員、呼吸を止めてその沈黙を監視中である。
── 研磨音の消えた空間は、次の暴力的な震動の前触れに過ぎない。 ──




