表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/24

第22話 冬休み②

そこから14日間、俺は冬休みミッションをこなし続けた。


朝は走って、冷水シャワーを浴びて、前日の復習を30分で終わらせる。昼はジムか勉強。バイトがある日は、行く前にできるだけ詰め込む。帰ってから読書と要点まとめ。寝る前にスキンケアとヘアケア。


毎日、順番を組み替えながら、どうにか条件を拾っていった。


対人ミッションは、LINE通話で補った。伊藤、川島、咲良、橘たちと話した。通話だと表情が見えないぶん、声のトーンや間を読む必要がある。最初は難しかった。でも、読書で学んだ「聴くこと」を意識すると、少しずつ相手が話しやすくなる感覚があった。


期間中、ステータスコミットはほとんど来なかった。



最終日の夜。


全条件を確認した。かなり危なかった。完璧に毎日こなせたわけじゃない。むしろ、ほとんどの項目が崖っぷちだった。


━━━━━━━━━━━━━━━━━

【MISSION WARNING】


・数学 2回未達成

・英語 2回未達成

・国語 3回未達成

・理科 3回未達成

・社会 3回未達成

・読書・要点まとめ 3回未達成

・ジムトレーニング 2回未達成

・睡眠 3回未達成

・スキンケア・ヘアケア 1回未達成


※通算4回の未達成で

 該当ステータスが低下します。

━━━━━━━━━━━━━━━━━


クリスマスの8時間勤務でかなり崩れた。他のバイト日でも時間は削られた。


それでも、4回目には触れていない。


全部を完璧にこなしたわけじゃない。崩れそうな全体を、最後まで管理しきった。


それが今回の勝ち方だった。


そのとき、パネルが光った。


━━━━━━━━━━━━━━━━━

【MISSION COMPLETE】


難易度:極


冬休み終了まで、全条件を達成せよ。


全条件達成ボーナス発動


知識   56 → 60

学力   63 → 65

容姿   63 → 66

体格   62 → 65

会話力  60 → 62

運動神経 61 → 64

筋力   60 → 65


全項目平均:63.9


※身体への反映完了まで最大24時間かかります。

━━━━━━━━━━━━━━━━━


続けて、別の通知が出た。


━━━━━━━━━━━━━━━━━

【NOTICE】


身長および顔立ちの一部は、遺伝子的限界値に到達しました。


ただし、容姿・体格は単一要素ではなく、肌状態・髪質・体脂肪率・筋肉量・姿勢などを含む総合評価です。


後天的改善余地は、なお残っています。

━━━━━━━━━━━━━━━━━


━━━━━━━━━━━━━━━━━

【NOTICE】


初期サポートによる成長補助は、現在も適用されています。


ただし、成長補助の終了まで残り1カ月を切っています。


終了後は、成長効率が通常状態へ移行します。

━━━━━━━━━━━━━━━━━


ミッションでの成長幅が大きい。


これが控えていたから、途中で数値がほとんど動かなかったのかもしれない。そう考えると、少し納得できた。


だが、遺伝子的限界値。


その言葉が、頭に残った。



翌朝。3学期の初日。


身長を測ると、179cmだった。


1学期までの俺は、夜更かしばかりしていた。食事も偏っていた。運動もしていなかった。伸びるものも伸びなかったんだろう。


でも、背が高い才能があった、という感じとは少し違う。夜更かしをして何の努力もしなくても180cmを超えるやつはいる。一方で俺は、生まれてから限界まで背を高くする努力をしても179cm。


背を伸ばす才能はないほうなんだろう。


それでも、限界値という言葉は少し重かった。もう身長や顔立ちの一部は、大きく変わらない。


ただ、通知は同時に言っている。


容姿と体格には、まだ後天的な改善余地がある。


肌。髪。筋肉。姿勢。体脂肪。全体のまとまり。


きっとそこはまだ変えられる。


初期サポート終了まで、残り1カ月を切っている。ここから先が、今まで以上に重要だった。


洗面台で鏡を見る。


顔そのものが大きく変わった感じはない。目の形も、鼻筋も、輪郭も、土台は前のままだ。


でも、肌は明らかに違った。ニキビ跡の凹凸感はほとんど見えない。毛穴も前より目立たない。肌の色が均一で、光をやわらかく返している。


髪にも艶があった。毎晩トリートメントを続けた結果だ。指通りも前よりいい。


体の変化はさらにわかりやすかった。肩の丸み、胸の厚み、腕の輪郭。ジムで鍛えた分がそのまま出ている。


体重は70kg。夏の終わりより5kg増えているが、太った感じはない。筋肉で体が厚くなっていた。


制服を着ると、肩と胸、太もものあたりが少し窮屈だった。ただ、そのぶん体つきははっきりして見えた。


それは悪くなかった。



リビングに降りると、里奈がソファにいた。ちょうどいいと思った。里奈なら正直な感想が聞ける。


「……どう? 第2進化した?」


俺は聞いた。


里奈が顔を上げた。俺を上から下まで一度見る。


「うわ……」


里奈が言った。少し間があった。


「なんか肌も髪も艶が出てる。しかも筋肉めっちゃついてない? 兄貴、マジで何を目指してるの?」


何を目指しているのか、と言われると困るな、と思った。


今は黒川を圧倒するステータスを目指している。だが、もしそれが完遂できたとしても、そこで終わるわけではない。


人より容姿が良くなりたい。賢くなりたい。強くなりたい。変わりたい。でも、その先に何があるかは、まだはっきり言葉になっていない。


何も返せないのも悔しいので、とりあえず適当に言った。


「……最終進化」


里奈が顔をしかめた。


「はあ? 最終進化とか何言ってんの。意味わかんないんだけど」


「いや、お前が最初に言い出したんだろ」


「は? 言いがかりだし」


こいつ、絶対覚えてるだろ。俺が呆れていると、里奈がスマホに視線を落とした。口元が少し動いていた。俺の反応に笑いをこらえているのか、それとも気のせいか。


もう里奈のことは気にしないことにして、制服を整えて鞄を持った。


今日は久しぶりの学校だ。


登校するのが、楽しみだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ