表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
たった一つの輝くもの  作者: ともむらゆう
第3章 ジャパンステラ
53/139

五十三話 黄道十二宮

 イアを怒らせてしまったが、なんとか話をしたい。タゴサクの想いを伝えたい。

 とは考えているものの、話をするどころかイアと会うことすらできなくなってしまった。

 こじれにこじれた結果、タゴサクともソーニャとも会ってくれない。メッセージを送ってもシカトされる。

 SOSの世界は無駄に広いせいで、今どこにいるかも不明だ。

 タゴサクも探し回っているが見つかっていない。


「ここにもいないか」


 タゴサクが訪れたのは、【絶壁街ゼル】だ。

 イアの色は黒であり、黒を含むいくつかの色で訪れることができる町になる。鈍色のタゴサクでも可能だったが、橙色のソーニャは無理なので今は単独行動中だ。

 イアは【絶壁街ゼル】にいなかった。


 コモンステラやレアステラにはいないだろう。下の星で遊んでも意味がない。

 暗黒面に堕ちたイアが、コモンステラで初心者をPKしまくっている様子を思い浮かべたのは内緒だ。さすがにないと思う。

 失礼な想像はやめて、収穫がないまま【桃源郷シュト】に戻った。

 ソーニャと合流する。


「どうだった?」

「いなかったな。マジでどこに行ったんだか。SOSは続けてるんだよな?」

「そう言ってたわよ。嘘じゃないと思う」


 タゴサクはイアに会えないが、ソーニャは学校で会える。クラスは違っても休み時間に話しかければいいだけだ。

 妹に頼るのは情けないものの、手段を選んでもいられず、どうしているのか尋ねてもらった。


 イア、現実では木野蔵(きのくら)藍子(あいこ)だが、学校では双那(そうな)と普通に接してくれたらしい。

 三人の関係がこじれる前と変わった様子はない。「双那ちゃん、双那ちゃん」と呼んでくれた。空元気にも見えないし、明るかったと。

 話をしても、やはり普通だ。SOSの話題を振ってもちゃんと返してくれた。

 今でもSOSを続けているし、ソロでやっているとの話だ。

 ただ一点だけ、変わった部分はある。


「お兄ちゃんの話題さえ出さなければ普通なんだけどね。私が少しでもお兄ちゃんのことを話そうとしたら、満面の笑顔で『それ、誰?』よ」

「俺は『それ』扱いか。イアの中じゃ、記憶に残しておくのも嫌だと?」

「知らないけど、あの笑顔が怖いわ。私、人を怖いって思ったのは初めてかも」

「参ったな……」


 タゴサクは弱音を漏らした。

 一切会えないと何もできない。現実で学校まで押しかける手も考えたが、いくらなんでもやり過ぎだ。

 今のイアは、タゴサクを変質者として警察に通報しても不思議ではない。

 誰も幸せにならない結末だ。性犯罪者になるタゴサクが困るのは当然として、妹のソーニャや両親にも迷惑をかけるし、イアだって後悔するかもしれない。

 現実で会おうとするのは最終手段としておく。どうにかしてSOSの中で会い、話をしたい。


「しゃあない。今日の捜索はここまでにして、レベリングしよう」

「オッケー」


 ゲームで遊んでいる場合ではない気もするが、フィールドやダンジョンで戦っていれば偶然出会うかもしれない。わずかな可能性に期待している。

 また、タゴサクはある作戦を立てている。成功させるために強くならなければいけない。

 イアと会えなくなってから一週間がたっており、レベルは150まで上がった。ソーニャはレベル153と、いつの間にか逆転された。


 今日も強くなるために奮闘する。

 行くのは【空中都市アオゾラ】で、ハンググライダーを自分で操縦して特別なダンジョンに挑む。

 このダンジョンの情報は、ジャパンステラ内の星で聞けた。イアを探し回っていた時にたまたま入手したのだ。


 ソーニャと二人、空の旅をしつつダンジョンに向かう。

 星宮ダンジョン【ゾディアック】。これがダンジョン名だ。

 ダンジョンと銘打っているが、探索する必要はない。

 端的に言えばボスモンスターとの連戦になる。


 ゾディアックの名前通り、黄道十二宮をモチーフにした十二の神殿があり、それぞれにボスが待ち構えている。十二連戦になるわけだ。

 途中でやめることはできない。途中から挑むこともできない。

 必ず一番目のボスからスタートだし、挑めば最後までクリアするか死ぬかのどちらかだ。

 現実での事情があり、ログアウト不可にするとまずい。途中でもログアウトはできるが、した場合は死亡扱いとなりデスペナルティが発生する。

 ダンジョンをクリアすれば、強力な魔法を覚えられるアイテムが入手できると聞いている。ボスもレアアイテムをドロップするし、そちらも狙い目だ。


 ダンジョンに到着すれば、他にプレイヤーはいなかった。

 隠しダンジョン扱いなので、知っているプレイヤー自体が少ない。

 十二連戦に勝ち抜けるだけの実力がなければデスペナルティがあるのも痛く、リスクとリターンを考えて挑まないプレイヤーもいるだろう。


 タゴサクとイアは、今回が三度目の挑戦となる。

 一度目は、五番目のボスに負けた。

 二度目は、同じく五番目のボスにソーニャが殺され、タゴサク一人で勝った。六番目のボスに負けてしまったが。

 二人のレベルでは、十二連戦を勝ち抜くのは不可能に近い。


 では、なぜ挑むかというと、五番目のボスがドロップするレアアイテムが欲しいからだ。

 黄道十二宮の五番目はしし座である。ボス名は【ライオンエンマ】だ。

 タゴサクが覚えている奥義、【獅子ガ纏イシ死屍炎魔(ライオンエンマ)】と同名のボスとなれば、関係がありますと言っているようなものだ。

 タゴサクにとって有効なレアアイテムをドロップすると期待している。

 正確には、鈍色にとって有効と言うべきか。【獅子ガ纏イシ死屍炎魔】は、鈍色のジョブで覚えた魔法とスキルを組み合わせた奥義だ。


 思えば、レアステラで初めてジョブに就いた時、色は十二色あった。

 赤色、青色、白色、黒色、黄色、橙色、桃色、緑色、紫色、茶色、鳶色、鈍色。

 以上十二色である。

 十二色に十二宮とくれば、対応していると考えるのが自然だ。

 タゴサクの鈍色はしし座のボスで、他の色は他のボスに対応するのだろう。


「すんごいどうでもいいんだけどさ」

「なんだ?」

「星宮ダンジョンよりも、黄宮ダンジョンの方がよくない? 黄道十二宮を略して黄宮ね」

「黄色が特別に聞こえるから避けたかったんじゃないのか? 適当な推測だが。つうか、マジでどうでもよかったな」


 これからボスとの連戦に挑もうという時に、ソーニャはくだらないことを言い出していた。

 この手のくだらない雑談をしていると、イアも一緒で三人だった時を思い出す。

 三人でいる時は、漫才のような掛け合いはしょっちゅうだった。

 ソーニャが鋭い発言をすれば、イアはさすがだと褒め称える。タゴサクの場合はなぜか貶される。

 そしてタゴサクが突っ込みを入れ、三人で笑うと。


 ほとんどお約束になっていた展開だ。ほんの一週間前までは身近にあった。

 大切なものは、失って初めて気付く。

 誰が言い出したのか、真理をついていると思った。


「どうでもよくない話もする? お兄ちゃんはしし座として、私の橙色はどれ?」

「素直に考えればふたご座。でも、絶対とは言い切れない」

「なんでふたご座なの?」

「十二色に十二宮が対応してるって分かったし、現実で調べてみたんだよ。黄道十二宮には、それぞれ色があるらしい。橙色はふたご座だった。ちなみに、イアの黒はやぎ座な」

「なら、ふたご座で確定じゃないの?」

「それがさ、灰色、つまり鈍色はおとめ座なんだよ。そもそも、SOSの十二色と黄道十二宮の色は全部一致してるわけじゃない。結局、よく分からんと」

「サクさんはしょうがないですね。しっかりしてください」


 ソーニャはイアの口真似をした。いかにもイアが言いそうなセリフだ。

 同じセリフを本人から聞けるように頑張ろう。

 星宮ダンジョン【ゾディアック】にて、ボス十二連戦に挑戦する。


 二度やっているので、途中までは慣れたものだ。ボスの強さや使うスキルも大体把握している。

 三番目のふたご座までを軽く片付けた。

 ボスとの戦闘が終わり、HPを回復しつつ小休止する。


「ダメね。ふたご座のボスは、何もドロップしなかったわ」


 ボスにとどめを刺したソーニャは、アイテムがドロップしておらず、残念そうな声を出した。


「こっちもなんにもなしだ。ドロップは単純に確率で決まるのか、何かしらの条件があるのか、その辺もよく分からないよな」


 タゴサクもボスにとどめを刺し、アイテムはドロップしていなかった。

 なぜ二人ともとどめを刺せたかというと、ふたご座のボスは二体いるからだ。双子のように瓜二つの美少女型モンスターである。

 名前は【ブツリガキカナイ】と【マホウガキカナイ】だ。

 空中ダンジョンのボス【ドッパン】に続き、バカな名前のボスを見た。


 特徴は、読んで字のごとくとしか言えない。これ以上ないほど分かりやすいとも言える。

 物理攻撃が一切通じないボスと、魔法攻撃が一切通じないボスになる。

 瓜二つの外見に加え、正反対の性質を持っているせいで厄介だ。どちらがどちらかを見極めるのが難しく、【ブツリガキカナイ】に物理攻撃をかましたり【マホウガキカナイ】に魔法攻撃をかましたりすることもよくある。

 物魔双方の性質を持つ奥義などを使えば戦いやすい。


 タゴサクとソーニャは、偶然だが相性のいい相手だった。

 タゴサクはスキル中心、ソーニャは魔法中心だからだ。物理特化や魔法特化のプレイヤーでは苦戦するだろう。

 余談だが、スキルだからといって全てが物理攻撃ではない。魔法も同様で、物理攻撃判定になる物もある。

 普段は意識しないが、意識しなければならない敵もいるのだと参考になった。

 話を戻して、【ブツリガキカナイ】と【マホウガキカナイ】を倒してもドロップなしなので、少し考えてみる。


「橙色で【ブツリガキカナイ】とか【マホウガキカナイ】とかって奥義はあるか? スキルや魔法でもいいが」

「私は知らないわよ。覚えてないだけの可能性も高いけどね。SOSは変な名前が多いし、【ゼンブガキカナイ】や【ナンニモキカナイ】って名前の完全防御奥義があるかもね」

「うーん……」

「何を考えてるの?」

「いやさ、ボスのドロップは確率なのか条件があるのかって言ったろ? 俺は条件だと思ってるんだ。じゃなきゃ、ドロップ狙いが大変だし」


 十二連戦になるのだ。一番目のおひつじ座や、二番目のおうし座ならいいが、十二番目のうお座など倒すのが大変になる。

 途中からは挑めない仕様で、一番目から順に倒していかなければならない。

 苦労の末にうお座までたどり着き、ボスを倒しても、ドロップしなければ最初からやり直しだ。


 しかも、タゴサクたちは三度の挑戦で、合計十戦以上している。なのに、一度もアイテムをドロップしていない。

 これだけの低確率では、うお座のドロップを狙うのがどれだけ苦行になるか、想像しただけでうんざりする。

 よって、条件を満たした上で倒せばドロップすると考えている。

 MMORPGなど、苦行じみた低確率は腐るほどあるし、あくまでも予想だ。


「条件と考えれば、やっぱり鍵になるのは【獅子ガ纏イシ死屍炎魔】だろ。奥義を使ってとどめを刺せばいい。効果時間が短いし発動タイミングが難しいが、簡単にドロップすると興ざめだから、この程度の難易度なら納得できる」

「ありそうに思うけど……ああ、そっか。お兄ちゃんの理屈でいくと、【ブツリガキカナイ】や【マホウガキカナイ】って奥義じゃ倒せないわよね。名前からして防御系になるし」

「そういうこと。【ゼンブガキカナイ】や【ナンニモキカナイ】でも同じだ」

「防御系奥義を発動中なら、別の方法で倒してもいいとか?」

「かもな。まあ、しし座のボスと戦う時は、【獅子ガ纏イシ死屍炎魔】でのとどめを狙ってみる。前回は失敗したが、今度こそ。しし座は俺に譲ってくれな」


 しし座のボスを譲ってくれるよう、ソーニャに頼んだ。

 親しい間柄だからこそ頼める。


「いいけど、代わりに次のかに座は私ね」

「お前、おひつじ座とおうし座も持ってったじゃないか。ふたご座も片方倒したのに、かに座までかよ」

「しょうがないわね。じゃあ、かに座は恨みっこなしの勝負でどう?」

「受けて立つ」


 話もまとまり、四番目のかに座のボスと戦う。

 なお、とどめを刺したのはソーニャだった。

 ソーニャは魔法を使うために後方にいることが多く、するとボスの様子も見やすいと言っていた。とどめを刺すタイミングがつかみやすいと。


「卑怯くせえ」

「約束だから、しし座はお兄ちゃんに譲るわよ。奥義を使うタイミングも指示を出してあげる。その方がやりやすいでしょ?」

「……頼む」


 ソーニャに頼りっぱなしでは、兄の沽券にかかわるが、それよりも奥義でボスを倒す方が重要だと考えた。

 簡単な作戦を立ててから、しし座のボス【ライオンエンマ】に挑む。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ