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たった一つの輝くもの  作者: ともむらゆう
第3章 ジャパンステラ
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四十話 求めるはラッキースケベ

 タゴサクたち三人のレベルだが、一番高いのはイアでレベル110だ。

 次いでタゴサクのレベル102、ソーニャのレベル100となっている。

 SOSを始めてから一か月半近くが経過した今、三人のレベルはほぼほぼ均等になった。


 プレイスタイルも固まっている。

 タゴサクは、デメリットありの特殊なスキルや魔法を多用するタイプだ。格好つけた言い方をするなら、トリックスターが近い。

 ソーニャは魔法職寄りの道を進み始めており、イアは物理攻撃主体だ。


 各々の独自性が発揮されているし、SOSというゲームのキャッチコピーにもふさわしい。

 人は、誰もがたった一つの星である。

 他人を蹴落とし、自分が一番になる点ばかりを気にしがちだが、これがキャッチコピーだ。お忘れなきよう。


 さて、三人のプレイスタイルが決まるのは喜ばしい反面、問題も生じている。

 問題のせいでモンスターに負け、そろって死に戻りしてしまった。宿屋で反省会を行う。


「前々から思ってたんだけどさ、お兄ちゃんが邪魔」

「ひでえ! 俺だって頑張ってるのに!」

「事実だしね。頑張ればいいってものじゃないのよ。頑張った上で、結果が求められるの。頑張ったから偉いって理屈が通用するのは、せいぜい小学生までよ」

「言い過ぎだよ、ソーニャちゃん。サクさんも、好きで足を引っ張ってるわけじゃないんだし」


 ソーニャには邪魔と言われ、イアはフォローしているようでフォローになっていない。

 だが、タゴサクが足を引っ張っているのは事実である。

 スキルや魔法の特性上、うまくはまれば強力だ。

 裏を返せば、はまらなければ弱い。扱いが難しくピーキーなのだ。

 モンスターを安定して倒し、レベリングしようとなると、かなり効率が悪い。


 ソロであれば、安定とは言えないがなんとかなる。実際に、レアステラで別行動していた時は、うまくできていた。

 パーティーを組むと、タゴサクのトリッキーな技の数々は、味方にとっては連携しにくいだけでしかない。

 レベルが低いのもあるだろう。100そこそこというレベルは、ジャパンステラにくるプレイヤーとしては低い。

 当然、モンスターも強敵になる。一つのミスが命取りだ。


「足を引っ張ってるよな……ごめん」

「あ、えっと、私も言い過ぎたから。今のは性格悪かったわ。ごめんなさい」

「わたしも調子に乗り過ぎました。すみません」

「イアはまだしも、ソーニャはやけに素直だな。らしくない」

「私が悪かったからね。ゲームで遊んでるんだから楽しまなきゃ。お兄ちゃんをパーティーから追放して、新しい人を入れるって手も考えたけど」

「実は反省してないだろ!」

「ソーニャちゃんは本気なの? サクさんを追放したい?」

「女の子を入れて、女性パーティーにしようかなって。半分冗談だけど」


 半分は本気ということだ。冷たい妹である。

 女性だけの華やかなパーティーは最高だが、タゴサクが追放されるのは嫌だ。

 追放されないためにも、足を引っ張らない方法を考える。


「レアステラなら、多少の問題があってもごり押しできたよな。レベルを上げればなんとかならないか?」

「そんなの、RPGなら当たり前でしょ。レベルを上げて強くなれば、勝てるに決まってるわよ。お兄ちゃんはそれで楽しいの? 私は、勝って当然の相手に勝つなんてつまらないと思うけど」

「分かるって。相手は互角か格上だが、それに勝つと爽快感があるよな」


 勝つこと自体は楽しいし気分がいい。誰だって、負けるよりも勝つ方が嬉しいに決まっている。

 勝ちさえすればなんでもいいかと問われると、それも違う。

 レベル100を超えた今、【リトルゴブリン】相手に無双しても楽しくない。

 自分が強くなったことを実感するために、一度くらいは無双してみてもいいが、何度も繰り返したいとは思わない。


「色を変えるか? スキルを見直すか?」

「一つ、対策があります。抜本的な解決にはなりませんけど」


 イアの考える対策とやらを教えてもらう。


「ダンジョンを攻略してみませんか?」

「なんでダンジョン?」

「色んな役割があるからです。フィールドでモンスターと戦う時に求められる能力は、結局のところ戦闘能力ですよね。強ければいいんです。強いスキルとか魔法とかをバンバン撃って、モンスターを倒すことが大正義です。ダンジョンなら、罠を看破したり隠し通路や宝箱を発見したりできるかと思いまして」


 他のMMORPGであれば、プレイヤーごとに役割を持っている。

 ヒーラーは戦えないが、味方の回復という必要不可欠な役割を果たす。盗賊のような斥候職は、罠を見破ったり解除したりと活躍する。

 生産職と呼ばれる役割も存在し、装備を鍛えたり便利なアイテムを作ったり、仲間の強化に一役買ってくれる。


 SOSは一番を目指すゲームだ。

 ヒーラーが一番になれるか? 生産職が一番になれるか?

 なれない。

 ヒーラーや生産職だが戦闘能力も最強という状況は、バグのような抜け道でも使わない限りあり得ない。もしくはチートか。

 バグがあれば即座にアップデートされるし、チートを使えばアカウント削除だ。

 一番にはなれない。純粋な戦闘職には、どう足掻いても勝てない現実がある。


 SOSでは全員が戦闘能力を高めようとする。プレイスタイルは異なっても、戦闘能力に秀でようとする方向では一致する。

 一番を目指したいという理由もあるし、システム的にも戦闘職になるしかない。回復魔法を他プレイヤーに使えないように、他人を強くする補助の役割は果たせないのだから。

 多様性の面では、他のMMORPGに劣ると言えよう。


「俺は、斥候職でも目指せってか?」

「目指す必要はないですけど、できるようになっておいて損はないと思います。ダンジョンでは、システムのスキルに頼らないプレイヤースキルが求められます。罠を発見するスキルとか解除するスキルとかはないんですよ」

「本格的なダンジョン攻略はいつかやりたいと思ってたし、悪くないな」

「私たちってやってないものね。コモンステラは【ケダモノの塔】の入口でPKされたし、レアステラのダンジョンも行ってない。お兄ちゃんは一人で行ったんだっけ?」

「行ったぞ。罠に引っかかって溺死しかけた。機転を利かせて罠から脱出すればPKだ」


 自分の発言のおかげで、タゴサクは思い出した。

 水だ。イアの濡れ透けイベントだ。

 これは使える。

 タゴサクは、まともにダンジョンに挑んだ経験のない素人だ。罠を発見できなくても仕方ない。

 ソーニャもイアも、素人のタゴサクに対し、完璧な仕事をしろとは要求しないだろう。ミスをしても許される。


 つまり、ついうっかり罠に引っかかってしまう展開があり得る。

 濡れ透けイベントが起きうるのだ。

 濡れ透けイベントにこだわらず、ラッキースケベならなんでもいい。ヴァイスのスキルでソーニャは白濁にまみれていたが、あのような感じで何かが起きてくれると期待しよう。


「俺、ちょっと用事を思い出した。今日はログアウトする」

「お兄ちゃんは碌でもないことを考えてそうだけど、ダンジョンには行くのよね? 今日はもう遅いから、明日以降に」


 相談の結果、ジャパンステラではダンジョン攻略をすることになった。

 タゴサクの狙いはラッキースケベだが。

 ログアウトして調べるのは、ダンジョンについてだ。少しでも情報が欲しい。


 ジャパンステラは、四十七の星々が集まっているだけあり、ダンジョンも多い。

 ダンジョンだらけの星も存在する。ダンジョンの種類も豊富で、レアアイテムの入手やレベリング目的ではなくとも楽しめるという話だ。


 一番気になっている罠の情報も、少しだが載っている。

 水が関係する罠はあるが、服は透けない。無意味に性的な表現は大人の事情でタブーだ。以前のタゴサクも透けていなかった。

 白濁にまみれる罠、触手のような物に絡め取られる罠など、ラッキースケベが期待できそうなやつもあるし、これらが狙い目だ。


「服を溶かす罠とか定番だが、絶対にないな」


 耐久度の概念がなく壊れないシャツを着ているが、罠で溶かされてしまえば意味がなくなる。

 一つ、面白そうな罠もあった。ラッキースケベという点ではたいしたことはないが、少しは期待できる。


 体が操られ、勝手に動いてしまう罠だ。近くにいるプレイヤーを見境なく襲うようになる。

 勝手に動き胸を触ってしまっても、タゴサクの責任ではない。罠が悪い。

 ソーニャやイアが引っかかれば、動きを封じるために抱きつくのもありだ。

 VRゲームなので、いわゆる混乱のような効果はない。プレイヤーの頭をトリップさせてはまずいためだ。

 思考はクリアなままで体が勝手に動く。意識があれば胸の感触だって楽しめる。


 スケベな調べ物ばかりではなく、真面目に情報収集もしておく。ダンジョンの内容や罠の見つけ方などだ。

 ダンジョンに挑むとは決めたが、具体的にどこにするかは決めていない。

 レベル100程度のプレイヤーでも攻略できそうで、楽しそうなダンジョンとなると。


「空中ダンジョンね。ここが面白そうかな」


 文字通り、空に浮かんでいる遺跡だ。景色がいいと書かれている。

 壁や柵がない場所では落下の危険性があり、落ちれば即死だ。

 注意すべきは落下死だけになる。ジャパンステラのダンジョンにしては、モンスターのレベルは低く、罠も特別凶悪ではない。ボスの実力もほどほどだ。

 ダンジョンに不慣れな三人が挑むのにちょうどいい。

 二人の希望も聞かないと決められないが、空中ダンジョンを提案してみよう。


 ダンジョンに関する調べ物が終われば、他のことも調べる。

 なんといっても気になるのは、ジャパンステラから上へ行く方法だ。

 コモンステラは百万スターを貯めることで、レアステラはチケットを入手することだった。

 では、ジャパンステラは。

 さほど重要な情報でもないようで、ちゃんと書かれていた。


 王様に認められることだ。

 四十七の星には、それぞれ王様が存在する。その星を統治しているNPCだ。

 王様に認められれば、ジャパンステラを脱出し、上の星へ行ける。

 一人ではダメで、三人に認められなければならない。また、王様たちの頂点に立つ皇帝陛下もおり、皇帝に認められれば一発だ。


 王様三人、もしくは皇帝陛下一人。どちらかの条件を満たせばいい。

 具体的にどうすれば認めてもらえるかは書いてなかった。こちらは秘匿されているらしい。

 レアステラの時を思えば、複数の方法があるかもしれない。

 ダンジョンを攻略しつつ、ジャパンステラの脱出も目指す。

 当面の目標はこんなところだ。

 軽く勉強をしてから寝る。願わくは、ラッキースケベが起きている夢でも見られますように。

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