歓迎会
リルリッド邸の一室。そこに集まっているのは、リーリッドによって招待された者達。リルリッドに専属特別補佐として雇われたハルの歓迎会が開かれていた。
「かー! ちょうど腹が減ってたんだ。持つべきものは幼馴染ってこったねえ」
次々に運び込まれる料理に手を伸ばす黒髪の少女。隣では、『誰の歓迎会だと思ってるんだ』とハルが溢している。
「うっさいねえ。細けえことはなしだっての。折角の祝いに水を差すのかよ? マル」
そう。黒髪の少女とはミントである。あんな別れ方をしたため会いづらかったのだが、無事を報告するのも兼ねて連れてきたのだ。
「いい食べっぷりだ。ハル君の幼馴染は元気でいい」
「邪魔してまーす……って誰?」
「リーリッドとラルロアの父だ。二人と仲良くしてくれてありがとう。いつも助かっている」
「リドとラドの親父さんね。了解」
「お前!? 口の聞き方!」
「構わんよ、ハル君。堅苦しいのは私も苦手だ」
「そうよ。こういう時こそ楽しまないと」
「お袋さんかい?」
「はい。リーリッドとラルロアの母です」
「了解。てか二人共若いね」
「これでも四十歳でね。若い頃のようにはいかなくてな」
「化粧乗りが悪くて困ってるの。今日はスッピンでごめんなさいね」
「四十!? とても見えねえ。スッピンで充分キレイだから安心しなよ」
「この馬鹿! 年齢訊くかよ!?」
「年齢なんか飾りだろ? 現に若く見えるんだしね。それよかマル。リドって、二人が二十三の時の子だねえ」
「だからなんだよ?」
「早くルッキーに」
「それ以上言うなよ!? こんな目の前で!?」
「アハハハハ! 照れてやんの照れてやんの! まったく、この幸せ者が!」
「ヒヤヒヤさせんじゃないぞ」
「久し振りに会えたんだ。久し振りにからかいたくなってね。けどまあ、元気そうで何よりだねえ」
「今ので寿命が縮んだかと……」
「マル、絶対にルッキーを幸せにしな。無駄な涙を流させるんじゃねえ。アタシの大事なダチを不幸にだけはするんじゃねえよ?」
「……お前に言われなくてもするさ」
ハルに真剣に話したかと思えば、再び料理に手を伸ばしていく。どんな場であっても己を貫くミントを羨ましく思う。
「ハル、ちょっといい?」
「どうした? ラル」
ハルのシャツを引っ張るラルロア。なんだかソワソワしていて落ち着きがない。
「トイレか?」
「違う。あのね、今日学校でね、ナナが男の子から話し掛けられてたんだ。ボク、それが不安で」
「一丁前にヤキモチでも妬いてるのか? 学校で話すなんざ茶飯事だろう」
「そうなのは理解してるけど」
「ナナに訊いてみたらどうだ?」
「それが出来たら苦労しないよ!」
「うーん。うし! 俺が訊いてきてやる」
「僕が気にしてるのは内緒だよ!」
「おう。男と男の約束だ」
不安そうな表情を浮かべるラルロアに見送られつつ、少し離れたところに座っているナナに話し掛ける。わざわざ近付いて話し掛けてきたことにナナは驚いている。
「どうしたんよ?」
「ラルロアと同じ学校と聞いてな。学校は楽しいか?」
「まだ分からんよ。一日中騒がしくて休まらない」
「子供は元気が有り余ってるからな。お前やラルロアが静かなくらいだ」
「それを聞きたかったんよ?」
「実はもう一つ。もう誰かに口説かれたのか?」
「なっ、いきなり何よ!?」
「その反応はビンゴか」
「……急に言われたんよ。あんなに熱心に言われて困った」
「で、返事はなんて言ったんだ?」
「もう先客がいるって断ったんよ」
顔を真っ赤にするナナを見て、ハルは満面の笑みを浮かべた。ラルロアに向かって合図を送る。ラルロアは笑顔で返事をした。
「あまり妹で遊ぶでないせえ。ナナは一筋せえ」
「すまんすまん。ちょいとな」
「それよりもハル。ワタクシの新作を祝いに贈るせえ。ありがたく受け取るせえ」
「えっ!?」
シャリアからの小説を受け取ったハルの目が点になる。その目をラルロアに向けるが、ラルロアは悲しそうな表情でハルを見た。




