特別補佐
紅茶を楽しんだ二人は、リーリッドから連絡を受けてリルリッド邸へと来ていた。二人を相変わらずな笑顔で出迎えたリーリッドは、ハルをジーッと見ている。
「久し振りだよねん! ハルハル」
「お、おう!? どうしたんだよ? ジーッと」
「気になるよねん?」
「そりゃまあ」
「じゃあ教えるよねん。ハルハル、家庭教師に興味ある?」
「家庭教師?」
「リルリッド家の専属家庭教師だよねん!」
「もったい振らずに教えてくれよ。誰なんだ?」
「僕の目の前だよねん」
リーリッドの発言に固まる。今、リーリッドの目の前にいるのはハルなのだから。
「俺!?」
「そうだよねん! 是非とも引き受けてほしいんだよねん」
「ちょっと待ってくれ! 家庭教師ってのは頭が良くないと駄目なんだぞ! 俺は馬鹿だぞ!」
「誰も天才なんて望んでないよねん。家庭教師って肩書きが重いなら……執事でもいいよねん」
「尚更重いぞ!」
「う~ん。専属専属ぅ~……!」
「リーリッド。俺に何をさせたいんだ?」
「ハルハルをリルリッドで雇いたいんだよねん」
「はあ!?」
「実はよねん、今年からラルロアが学校に通うことになったんだよねん。アンオールでは学校に通う通わないは自由なんだけど、同年代の子との集団生活は大切だよねん。でもラルロアは不安を感じていたんだよねん。『皆と会う時間がなくなっちゃう』って」
「それとこれが関係するのか?」
「ラルロアは、ハルハルと会える時間が減ることが不安なんだよねん。ラルロア、ハルハルに物凄く懐いているからだよねん」
「……えーと……俺にラルの遊び相手をしろと?」
「遊びだけじゃないよねん。勉強も見てほしいし、色んなことを教えてあげてほしいんだよねん」
「あ~、それで家庭教師ってわけか」
「そうなんだよねん」
「でもやっぱり家庭教師は荷が重い。〝リルリッド専属特別補佐〟ってのはどうだ?」
「おう! なんか凄そうだよねん!」
「だろう! ……この流れってあれ?」
「フフッ。リルリッドに雇われるのには異論ないのね、キミ」
ハルとリーリッドのやり取りを見ていたルキがクスッと笑った。笑われたハルは顔を赤らめる。それからリーリッドの方に向き直して右手を差し出した。
「俺なんかで良ければ」
「ありがとうだよねん!」
リーリッドは握手を済ますと、ハルに書類を書かせる。あっという間に済んだ契約にハルは拍子抜けする。
「簡単に済んじまったな」
「あはは。でもどうして引き受けてくれたよねん?」
「リルリッドに雇ってもらえれば安定だろう? これ以上の美味しい話があるか?」
「ま、なんだっていいんだけどよねん。早速今日は歓迎会をするよねん!」
「歓迎会!? そんな大袈裟なのしなくても」
「良いじゃないの? おかえりなさいも兼ねてね」
「そうだよねん! よーし、そうと決まれば!」
電話を掛けるリーリッドは楽しそうで嬉しそうだ。リーリッドが貴族であることを忘れてしまう。
「どうして引き受けたのかしら? 他にも理由があるんじゃないの?」
「十八になれば結婚出来るんだろう? 友達からの誘いだし、今の俺に断る理由はない」
「あうっ!?」
ハルの発した〝結婚〟に顔を赤くするルキ。言ったハル自身も照れてしまっている。
「どうしたよねん? 二人共、赤いよねん」
「「なんでもない!」」
ハルとルキが仲良くハモった。




