高まる気持ち
ハルを家の中に招き入れる。リビングのテーブルに向かい合って座る二人。
「半年振りだな」
「うん」
「髪伸ばしてるのか?」
「気付いたんだ。まあ、もう切るけど」
「なんで?」
「キミが帰ってくるまでのつもりだったから。願掛けで伸ばしてたの」
「もったいないぞ!?」
「そんなに似合ってるとも思ってないし」
「俺は好きだけど? 似合ってると思うぞ」
「真顔で言わないでよ!? ……照れるじゃない」
「本当のことを言ったまでだ」
照れて顔を伏せるハル。そのハルの様子におかしくなったルキは、プッ! と吹き出してしまった。
「自滅してるじゃない」
「自滅させるお前が悪いんだぞ。ちっとは自覚してくれよ、自分の魅力に」
そう言ってハルは顔を赤らめてる。言えば恥ずかしくなるのが分かっていながらも言ってしまう。思ったことを、素直な気持ちを言ってしまう。
「自分じゃ分からないわよ」
嬉しいけど照れくさくてムズ痒い。それが顔に出てしまう前に立ち上がりキッチンに向かう。
「そういえば……いや、やっぱいい」
「勝手に言い出して終わらせないでよ。気になるじゃない」
「……俺の力で帰れるぞ」
声のトーンを落としてルキに伝える。ルキは紅茶を淹れている手を止めてしまう。
「いきなりどうしたのかしら?」
「どうしたい?」
「……帰る理由がないわ。ワタシが生きたい世界はこっちだわ」
キッパリと言い切って紅茶を運んできたルキの瞳は輝いていた。赤と青の瞳には一点の迷いもない。ルキの顔を見たハルは安堵する。
「やっぱりか。実はな……お前の両親を見掛けたんだ」
「そういうこと。ワタシの両親だとよく分かったわね」
「〝神羽流〟なんて苗字は珍しいし、お前に似てたしな」
「ワタシが両親に似ているのよ。で、どうだったのかしら?」
「……お父さんは繁華街に入り浸り……お母さんは家に男を招き入れ……うぅぅぅぅ」
「どうもありがとう。予想通りだわ」
「ごめん」
「キミが謝ることないわよ。事実だったんでしょう?」
「うん」
「暗い話は終わり! 再会を祝して乾杯するわよ!」
カップを軽く打ち鳴らす。二人きりの家で紅茶の香りを楽しむ。紅茶を飲んでリラックスしたのか、漸くハルが笑顔になった。リラックスした状態でルキを見る。
「うーん」
「ワタシの顔に何か付いてるのかしら?」
「……可愛いなあ、と」
「もう! 恥ずかしいじゃない!」
「なんだか身体が熱くなってきたぞ」
「紅茶を飲んでるからじゃない?」
「それだけじゃないと思う。半年振りに会えて、今は二人きりってのもあると思う」
「……したいの?」
ハルの様子から察したルキ。紅茶を飲むのを止めてハルを見つめる。ルキが発した言葉の意味を読み取ったハルは頷く。
「……かもしれない」
「キミも男ね。だけど駄目だわ。今は、ね」
「今は?」
「アンオールの成人は十八歳。成人になれば、飲酒も喫煙も結婚も出来るわ。だから一年我慢して」
「我慢してってことは!?」
「ワタシだって気持ちはあるわよ!」
ルキは顔を真っ赤にしながら紅茶を飲み干す。ハルは、照れるルキを見ながら紅茶を味わうのだった。




