復活のハル
ベッドに横たわる少年。気持ちよく寝ているところに差し込んでくる光。目覚めには最適な日光だ。
「うーん……」
「起きなさい。ハル、朝ごはん」
「……ふわぁ……朝? ごはん?」
「わざわざ起こしてあげたんだから。まったく。十七歳にもなって朝寝坊なんてだらしない」
「十七歳? 何を言ってるんだ?」
「母さんがボケたとでも言いたげねぇ? 十六も十七も変わらないから安心しな」
「……俺がボケてるのか!?」
グイッと頬をつねてみる。痛い。どうやら夢ではないと理解したハル。それよりも驚いたことがあった。
「……身体がある! ……生きてる!?」
洗面所に駆け込み鏡を見る。そこに映るのは紛れもなくハルの姿であった。暫く鏡を見つめていると、後ろからポンッと叩かれた。
「自分の顔を見ながらニヤニヤしない。あんた、そこまで自意識過剰だった? 取り敢えず食べちゃいなさい」
「分かった」
促されテーブルに着く。母親と祖母と食事を共にする。この世界に来てからの日常である。黙々と朝食を食べていると、母親がポツリと訊いてくる。
「半年間の一人旅はどうだったわけ?」
「どうもこうもないよ。ゆっくり羽を伸ばしていたさ」
(半年も経っているのか)
「ふぅん。で、羽を伸ばし過ぎた結果、家の前で伸びていたわけね」
「はは……ははは」
(駄目だ、まったく記憶にないぞ!?)
「ま、その様子だと心配は要らないね。早速だけど、薪割りしてもらおうか」
「帰って早々かよ!」
「充分に羽を伸ばしてきたんでしょ? だったら手伝いなさいよ」
「しゃーないな」
※ ※ ※
朝食を終えたハルは、斧を握り締めて薪割りに勤しんでいた。小気味良く斧を振り下ろしていく。
「まだ必要か?」
「少し多めにお願い。ダンさん、腰を痛めちゃってさ」
「へいへい。しかしまあ、俺が帰ってこなかったらどうするつもりだったんだ?」
「母さんがやったでしょうね。これでも薪割りするし」
「タイミング最悪だったなあ」
「グッドタイミングだったよ。帰ってきてくれて安心してるんだから」
「へえ。それは意外」
「そういえばあんた、ルキちゃんに連絡はしていたの?」
「なんで?」
「何度も訪ねて来たからね。『帰ってきたら教えてください』って。とても心配していたよ」
「そうだったのか……」
半年間も会えていない今、きっと心も変わっているだろうと考える。ルキに会いに行けば迷惑になるだろうと思った。
「……最後に来たのは?」
「昨日だよ」
「はあ!?」
母親からの思わぬ言葉に耳を疑った。あまりの驚きに薪割りの手を止めてしまう程だ。
「薪割りを終えたら会ってきなさい。あんないい娘、そうそう逢えるもんじゃないよ」
「ああ。そんなことは百も承知だ!」
止めていた手を再び動かしていく。逸る気持ちを抑えながら、確実に薪割りをするのだった。




