選択
ミクと別れたルキは、森の中へと来ていた。かつてネネを見送った場所。そこに立ったルキは火、水、風、雷、光、闇のカードを重ねて天に掲げる。
「このカードで魔術を使えるようになったのは、この世界に来てから。ハルの言う〝繋がり〟が、美空の形見のカードと世界に〝繋がり〟があるのなら」
重ねたカードが輝いて、ルキの手元を離れていく。そしてカードは姿を変えていく。人の姿へと。
「美空のカードがワタシを異世界に導いてくれたのなら」
ルキの目の前に現れた一人の少女。ミクと似ているが別人であるのは直ぐに分かった。あの日の格好で現れたのだから。
「……美空……なの……?」
「漸く気付いてくれた」
「生きて……いるの?」
「ううん。残念だけど、私はいわば霊」
「どうして美空がカードに?」
「簡単に言えば転生。自分の遺品に転生したの。まあ、そのことに気付いたのは、ルキちゃんが異世界に来てからだけど」
「え? ということは、ずっとワタシを見ていたの?」
「見てたよ。私を使って勇ましく戦ってるルキちゃんも、魔術師を忌み嫌う人々に落ち込んだルキちゃんも、偶然助けた男の子に惹かれていったルキちゃんも、友達と仲良くしているルキちゃんも。全部見てたよ」
「そっ、それって!?」
顔を赤らめるルキ。そんなルキを見て笑う美空。二度と会えないと思っていた親友との再会に心が温かくなる。
「この世界に来たのは、こっちの私に会わせる為だったのかも。これも繋がりだよ」
「……美空」
「これでルキちゃんの魔術の正体も、この異世界に来た理由も判明したんだよ。後はハル君のことだけ」
「なにか知ってるの!?」
「私の最大の力……死んだ人間を生き返らせる、だよ」
「生き返らせる!?」
「そう。それが私の、ルキちゃんの魔術の真価。さあ、私を使って」
「……何か隠しているわね?」
「やっぱり分かっちゃう? えっと……カードが消えるから私も消える。それと……この世界にルキちゃんを導いたカードが消えるから、ルキちゃんは元の世界に戻ると思う」
「戻る!?」
ハルを生き返らせる希望が見えたと同時に、自分に立ち塞がった絶望。元の世界に良い思いがないルキにとって、戻るというのは気が進むことではない。それにハルを生き返らせたとしても離れ離れになるというのも引っ掛かっていた。
「決めるのはルキちゃんだよ」
「……ワタシは……それでも……」
ルキは美空に思いを口にした。美空は小さく頷きながら、ルキの選択を叶えるのだった。




