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思考

 ハルと別れてから一ヶ月。ハルの言う通り、死火も魔術も消えた為、死火による死者が現れなくなったこと、魔術師を見なくなったことから安堵の声が聞こえていた。


「もしかしたら! もしかしたら!」


「呪いが解けたのかも!」


 アンオール首都のアロポリアからも喜びの声が聞こえてくるが、同時に悲しみの声も聞こえていた。魔術師だった人達からの失望の声。


「魔術が使えれば楽だったのに」


「呪いが消えて嬉しいけど、いざ使えなくなると不便だ」


 魔術師は化け物と蔑まれていたが、魔術を特技としている者がいたのも事実。呪いが希望であった人達がいたのも事実。


(やはり皆、魔術を使えないわよね)


 アロポリアを歩くルキ。ハルと出逢った頃よりも髪は伸びているが、本来ならば切っている長さ。それでも切らないのは、ハルの帰りを願っているからだ。


「帰ってきたら切るわ。それまでは伸ばさせて、美空」


 親友を死に追いやってしまった責任を感じて伸ばさずにいた髪。その髪を触りながら空を見上げる。


「繋がり、か」


 ハルが言っていたことを思い出す。自分がこの世界に転移した理由は、この世界と繋がりがあるからということ。あれから考えてはみたものの、答えには辿り着けずにいた。


「ワタシは……」


 一枚のカードを取り出すと、火を出現させる。どういうわけか魔術を使える現実に首を傾げる。死火も魔術も消えた筈なのに使えるのは何故なのだろうか。


「……魔術師ではなかった?」


 ルーキッド邸の前で立ち止まる。ミントは帰ったことにしている。玄関の扉を開けて入っていく。紅茶の香りで心が和らいでいく。


「おかえりなさい、ルキちゃん。いい散歩だったかい?」


「はい」


「それはよかった。ちょうど紅茶を淹れたから、一緒に飲もう」


 紅茶を飲めば辿り着くかもしれないと、そんな淡い思いを抱きながらテーブルに着いた。

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