来客
ルーキッド邸の前に立つ少女。帽子を目深に被り、サングラスを掛けている。呼び鈴を鳴らして住人を待つ後ろ姿で品の良さが分かる。
「はい?」
「どうも初めまして。私、こちらのお宅に住むルキさんの友人なのですが、ルキさんはご在宅でしょうか?」
「ルキちゃんの? 名前を教えてくれないかい? 名前を名乗らない人とルキちゃんを会わすわけにはいかないね」
「そうですよね。申し遅れました……私、ミク・アーバインと申します」
「アーバイン? ああ! そういうことかい。名乗らせて悪かったね。呼んでくるから待っておくれ」
ミクが名乗るのを渋ったのには訳がある。自分の祖父であり、アンオール前大統領のレイフォンが問題を起こしたからである。王族が住む王城に不法侵入しただけではなく、魔術師に危害加えることを明確にし、王城に招かれていた人達を襲った。結果的に死者は出なかったものの、王族を恐怖に陥れ、王城を一部損壊したのだ。それを現役の大統領が起こしたとあって、アーバイン一族は批難を浴びることに。大統領の任を解かれた後も批難は止まず、孫娘であるミクにも矛が向けられた。
「ミクさん!」
「久し振りだね。元気にしてた?」
「ワタシは元気だわ。それよりも……」
ルキの目に映るミクの顔は疲れきっていた。よく見れば髪は傷んでおり、目の下には隈が出来ていた。頬は痩せこけ、血色も悪いのが分かる。
「私は大丈夫。見た目に反して元気だよ」
「……ミクさん」
ルキはそれが嘘だと見抜く。それよりも不安がやって来る。親友の美空と似ている分、その不安は深くなっていく。
「ミクさん、少し歩かないかしら」
※ ※ ※
ルキとミクがやって来たのはカフェ。二人共コーヒーを頼んで座っている。家からカフェまで歩いている間、お互いに無言になってしまった為、やむなく座ることにしたのだ。
「今日はハル君は?」
「一人旅に行っているの。どこかで元気にしているわ」
「そう。寂しい?」
「どうして?」
「顔に出てるよ。見ていれば分かる」
「さ、寂しくなんかないわよ!?」
「ふふっ!」
ルキの反応に笑うミク。今日、初めて見たミクの笑顔に安堵するルキ。そこにコーヒーが運ばれてきた。
「いい香りだわ」
「コーヒー、か。祖父が挽いて飲んでたよ」
「そ、そうだったの!?」
(地雷を踏んだかしら!?)
「……改めてごめんなさい。祖父がご迷惑を」
「ミクさんが謝る必要ないわ!? 孫娘というだけで責め立てる人達なんか気にしちゃ駄目だわ!」
「そう言ってもらえると助かるよ」
「愚痴でも何でもぶちまけちゃって構わないわ! ワタシもぶちまけちゃうから!」
「ありがとう、ルキちゃん」




