危機一髪
ミントと別れて彷徨いていたハルの視界に、ひとりの女の子が映る。ぬいぐるみを持ちながら母親と歩いている。そこで偶然、ママ友と会った母親は話始める。退屈になった女の子は、ぬいぐるみを弄りながら座っていたのだが、それも直ぐに飽きてしまい歩き出してしまう。ふと、反対側の道を見た女の子。小さい花が咲いているのに気付くと、一目散に飛び出してしまった。車が勢いよく走る車道に飛び出したことに気付くと、二車線の中央線で立ち止まる。
「ママあああ! 助けてえええ!」
《ヤバい、ここは!?》
ハルの脳裏に浮かぶ記憶。この場所で轢かれて死んでしまった女の子。車椅子に乗っていて走れなかった悔しさ。
《この道路は信号が長くて有名だ。車の交通量も多い。おまけにガンガン飛ばすもんだから止まれない》
「ママあああ!!」
「そこにいなさい! 動いちゃ駄目!」
必死に女の子に呼び掛ける母親だが、恐怖で留まれない女の子は動き出してしまう。泣いてしまって前を見ていない。
《動いちゃったか!? でもこの車間なら渡りきれる!》
「駄目!! 止まりなさい!!」
《しまった!?》
母親の声で女の子が止まった場所は車線上。。そこに一台の車が迫る。かなりの速度を出しており、女の子にも気付いていない。
「やあああ!!」
《子供から目を離すんじゃないぞ! ましてや道路の近くでなんて!》
漸く女の子に気付いた車がブレーキを掛けるが、車は急に止まれない。このままでは轢かれてしまう。
「戻りなさい!!」
《パニック状態の子供をパニックにさせるようなことを! ああもう!!》
ハルは女の子の向きを確認する。目を瞑って泣き叫ぶ女の子を助ける方法を考える。一か八か、一言に望みを賭ける。
《そのまま走れ!!》
届いてくれと願い叫ぶ。すると、女の子は一心不乱に走り出した。車は後ろを過ぎ去っていく。走るタイミングが一歩でも遅れていたら大惨事になっていた。
《……あ、危なかった……》
女の子の元に駆け付けた母親は、女の子を叱りつける。女の子は酷く反省しているようだが、ハルは釈然としなかった。
《道路に飛び出した子供は確かに悪いけど、まだ小さい子供から目を離していたのも悪いんだぞ!》
一言言ってやりたかったものの、どうせ気付かれまいと飲み込む。何はともあれ女の子を助けられたことが嬉しかった。
「ちょっといいですか?」
「はい」
「一部始終を見ていましたが、お子さんから目を離していたお母様にも非はあります」
「申し訳ありません!」
「謝る相手が違いますよ」
母親は女の子を抱き締める。『ごめんね!』と優しく抱き締める。『ごめんなさい!』と女の子は泣き出した。
《……言いたいことを代わりに言ってくれる人がいてよかった。分かってくれればいいんだ》
ホッとしたハルは移動する。今も元に戻る手ががりは見つからない。




