砂漠の街
砂漠の国ディストラル。アンオールから行く方法は船のみ。アンオールとディストラルを往き来するのは一日三本。ディストラルから来る人はいるが、アンオールから行く人は珍しい。国全土が砂漠の為、歩くだけでも一苦労である。
「砂浜程度だと侮っていたが間違いだったな……深い」
一歩踏み出す毎に足首まで埋まる。靴の中に砂が入って重くなる。船着き場から歩いて間もないのだが、既にハルの心は折れていた。
「暑くないのが救いだな。本当に一面砂漠だもんな」
気分を変えようと辺りを見渡しても砂漠のみ。木の一本も生えていない。見通しがいいを通り越して殺風景。気がドンドン削がれていく。
「真っ直ぐ歩いてれば着くって言ってたけどよ……街なんか見えないし、人ともすれ違わないし」
暑くないとはいえ、陽が落ちれば冷え込むと思っているので早く着きたいのだが、ラクダとすらすれ違わない。持参した飲み物を口にして気分を誤魔化す。
「……飽きたぞ」
その場に座り込むハル。お尻も砂に埋まってしまい動けなくなる。困り果てたハルの視界に一台の車が映り、砂漠を簡単に駆けながら近付いてきた。
「旅行者?」
「誰」
「それはこっちの台詞。こんな砂漠で野宿するら?」
「しないよ! 歩き飽きたんだ」
「こんな国に来たのが悪いら」
「用がなきゃ来ないよ」
「何の用ら?」
「瓦礫を見にだ」
「ああ。物好きな人ら。連れてってやるら」
「本当か!?」
「どうせ帰るところら。ついでら」
※ ※ ※
雨風凌げればいいという感じの家と店が建ち並ぶ。道は舗装されており、普通に歩くことが出来る。それだけでハルにとってはオアシスだ。
「暑くもなく寒くもないら。ディストラルに来る人間の殆どが同じ目的ら」
「暑さと寒さを凌ぐ為だな」
「ディストラルを移動するのに歩きは禁物。馬鹿がすることら」
「船着き場の人に言われて歩いてたんだけど!?」
「その服装、砂漠を舐めていると思われたんら」
「ラフなのが好きなんだよ」
「船着き場の人は嫌いだったら」
「……で、瓦礫は?」
「これら」
街の外れに積まれている瓦礫。何の変哲もない瓦礫に見えるが、ハルは慎重に触る。
「この街の過去だろう?」
「判らないら。昔は自然に囲まれた豊かな街だったらしいら。言い伝えだけどら」
「……」
「滅ぼされた街の遺産とも言われてるら」
「……遺産、か」
ハルの脳裏に浮かぶ夜の街。この瓦礫に似た建物が夢に出てきたのを覚えていた。
「わっちの名前はシーラら」
「いきなり名乗りかよ!?」
「さっきから話し掛けているら! ちっとも反応しないら!」
「そうだったのか。俺はハル。よろしくな、シーラ」
紫の髪のシーラに自己紹介を済ませると、再び瓦礫に向かい合う。
(俺と何か関係があるのなら、それを知りたい)




