表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/100

決心

「ふぅ……」


 極楽な表情で入浴しているハル。自分が最後なのでゆっくりと入れる。一日の疲れを取るように腕や足をマッサージしたりと満喫している。


「今日は疲れたなあ」


 目を閉じて一日を振り返る。熊との戦い、薪割り、女子達の料理、風呂を焼べた。


「熊といえば」


 手を翳しただけで追い払うことが出来た。頭に浮かんだイメージのままにやっただけなので、ハル自身もよく解っていないのが正直なところである。


「あの夢と関係してるのか?」


 思い出すのも嫌な悪夢。立ち眩みのこともあり、自分の身に異変が起きているのを受け止めるしかない。ハルは何度も顔を洗って誤魔化す。


「異世界に転生してる時点で普通じゃないんだ。今更何を恐れる」


 右腕を見つめる。夢の中で銀髪の少女が腕を掴んできて、そんな少女を跡形もなく燃やした腕。どうしても少女とルキを重ねてしまう。海でルキに腕を掴まれた時は激しく焦ってしまった。悪夢を振り切る為にルキの腕を掴んだ時、とても嬉しくて堪らなかった。


「……俺の魔術が……夢に出てきたようなやつなら」


 これまでの悪夢が何かの兆候だとするならば……。深呼吸して自問自答する。意を決したように頬を叩いた。


※ ※ ※


 別荘に滞在したのは一週間。ハルは、ラルロアに色んな折り紙を教えたり、リーリッドの小さな悩みを聞いてあげたり、ミントの運動に付き合わされたり。色々と振り回されたものの、ハルは苦に思うことはなかった。むしろ、存分に振り回されてやろうと意気込んでいたくらいだ。でもそんなハルの姿は、まるで悔いの残らないようにとガムシャラにも見え、ルキはどこかで不安に感じていた。


「……今、何て?」


「一人旅に出たよって言ったんだよ? ハルから何も聞かされてなかったの?」


「何も聞いてないわ」


「だからか? この手紙をルキちゃんに渡すよう言われてるんだよ」


「手紙?」


 ハルの母親から渡された手紙を読む。ハルが書いた文字を追うほどに手が震え、キュッと胸が締め付けられる。込み上げてくるものを堪えながら、ハルの母親に質問する。


「どこに行ったのか分かりますか?」


「詳しくは聞いてないよ。けどどこか抜けてる息子だから、部屋にヒントがあったりして」


 聞くや否や駆け出すルキ。読んだ手紙を頭の中で復唱しながらヒントを必死に探す。


『ルキへ。突然のことで驚かせて悪い。俺、一人で旅に出ようと思ったんだ。黙って行くことを許せだなんて言わないけど、どうか受け入れてほしい。お前はお前で元気で暮らせよ。皆がいるから大丈夫だろう。ミントのことも頼む。危ない奴だけど幼馴染だからな。俺のことは心配しなくていいぞ。これ迄ありがとう! 元気でな!』


(なにが『俺のことは心配しなくてもいいぞ』よ! なにが『皆がいるから大丈夫だろう』よ! なにが『元気でな』……よ!)


 ハルの机を漁ると出てきた一冊の本。栞が挟んであり、そこのページを開く。


「砂漠の国ディストラル。ここに行ったの!?」


 砂漠の国と言うだけあって、国中が砂漠地帯である。砂漠と聞くと暑いイメージを浮かべるが、ディストラルは年中過ごしやすい気候だ。しかし、これといって名所があるわけではなく、国中が砂漠で過ごしやすい気候というのが売りの国。ハルがディストラルを選んだ理由は解らないが、ルキの心は決まっていた。


「ワタシはもう、キミがいないと駄目なんだから! 絶対に見つけるわ! ハル」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ