ご褒美
すっかり陽は沈み夜空が広がる。ルキ、ミント、ミラの三人が作った料理がテーブルを彩っている。キノコは網焼きされており、ワサビが添えられている。
「こっちにもワサビはあるんだな」
「鼻に抜ける香りも、ツンとするのも同じだわ。ワタシも最初に食べて驚いたもの」
「これはグラタンか?」
「共通の料理があって驚いたけど、どれもこれも絶品で安心したねえ。リドのお茶とは大違い」
「ちょっと傷付くよねん」
「アタシに合わなかっただけだから大丈夫だって。マルとルッキーは気に入ってるんだしね」
食事をして会話が弾む。気心知れた同士だと尚更だ。ついつい時間を忘れてしまうもの。楽しい時間は、あっという間である。
※ ※ ※
食事を終えたハルは外に出ていた。昼間に割った薪を焼べている。
「湯加減はどうだ?」
「ちょうどいいよねん」
「気持ちいいよ!」
リーリッドとラルロアの返事を聞いてニンマリ。普段も焼べているのが役に立って嬉しかった。思わず拳を握る。
「キミも入ってきたら?」
食事の片付けを終えたルキがやって来る。しゃがんでいるハルに対し、前屈みになって話し掛けてきた為、シャツの隙間から下着がチラリと見えている。
「……見えてるぞ」
「あっ!?」
指摘され恥ずかしがりながらしゃがむルキ。目線をハルと同じにする。
「温度を保つには焼べないと駄目だ。だからといって適当に焼べると熱くなる。タイミングが大事なんだよ」
「いつ入るの?」
「俺は最後でいいよ」
「そんなに汗だくなのに?」
「構わない。こういう風呂って面倒だけど楽しいんだ。なにより湯加減が上手くいった時の感動は計り知れないぞ」
「そういうもの?」
「そういうもんだよ。二人が出たら女子で入ってくれ」
「覗く気かしら?」
「覗かないから。柵に手をかけてまで覗く元気はない。汗で流れてるよ」
「……そう」
ルキが戻っていく。リーリッドとラルロアが上がるのを聞いたハルは、女子の為に火力を調節していく。
(なんでこんなに楽しいんだろう。存分に出来なかった反動かな?)
「ナナちゃん、気を付けて」
「気を付けた方がいいのはルッキーだ!」
「ちょっ!? ミントったら……」
「思ったよりも大きいよねえ」
「なんで揉むの!?」
「いつもは一緒に入らないからねえ。こういう時くらいはね!」
「あっ! 本当にっ……ミント……だめっ」
「仲が良いんですね」
「ミララもどう?」
「私は御遠慮……ひゃっ!?」
「ミララもなかなかのモノを持ってるねえ!」
「ミント様……そこはっ……ひゃんっ!」
「リルリッドのメイドも女の子だねえ。ひっひっひ!」
(ミントの奴、何をやってるんだよ!?)
声を聞かないように、焼べることに集中するハル。火の熱さで熱いのか、女子の戯れを聞いて熱いのか分からなくなっていく。
「ルキもミラも騒ぎすぎなんよ。ミントに胸を揉まれただけで」
「ナナちゃんには……まだっ!?」
「解らないですっ!?」
「そうなん? じゃあミントはどうなんよ。えい!」
「えっ!? アタシのを……ヤバ!」
「どうなんよ? ミント」
「ナナっちの小さな手が……これは結構っ……ああっ!」
(ナナもかよ! 全部聞こえる俺の身にもなってくれ!)
暫くして、お湯に浸かったからか静かになった。ハルは座り込んでしまう。浴室の明かりと湯気が柵から漏れるのを見ていると、柵を外してミントが顔を出してきた。
「ご苦労だねえ」
「そんな格好で顔を出すな! 柵を外すな!」
「興奮しちゃったり?」
「誰がするかよ!?」
「フーン?」
ガタガタ浴室から物音がしたかと思えば、ミントに言いくるめられたルキが顔を出した。
「お前もかよ!?」
「ミントが五月蝿くて仕方なく……!?」
どういうわけか身を乗り出してきたルキ。その為、ルキの胸元も見えてしまう。
「押さないで!?」
「サービスしときなって!」
「もう!」
お湯に濡れたルキがハルを見下ろす。ルキを見上げているハルは顔を赤くして慌てている。
「早く引っ込め! 風邪を引いたらどうする!」
「キミに心配されても説得力ないわよ」
「そりゃそうだけどよ……」
「どうかした?」
「……なんでもないよ」
(綺麗じゃんか!)
濡れたルキと星空の並びに見惚れるハル。一日頑張ったハルへのご褒美なのかもしれない。




