癒し
落ち着きを取り戻していたリーリッドは、顎に手を当てて何やら考えていた。気になったハルが問い掛けると、リーリッドが笑顔を向けてくる。その笑顔を見たハルの顔は強張った。
「ハルハル~」
「何だよ?」
「ハルハルは、毎日薪割りをしていると言っていたよねん?」
「だったら何だよ!?」
(この流れはまさか!?)
「お風呂の薪割りをお願いしたいんだよねん」
「何で俺?」
(やっぱりかー!)
「僕は薪割りをしたことがないよねん。ミラは料理で手が離せないし、ルキルキとミンミンだと危ないよねん」
「ミントなら喜んでやるんじゃないか?」
「……だから危ないんだよねん!」
「ああ……そういう意味か」
ハルがミントの薪割りを想像する。想像しただけで血の気が引き、寒気を感じる。
「頼みはハルハルだけなんだよねん! お願いだよねん!」
手を合わせて頼み込んでくるリーリッドに観念したハル。薪割りを承諾して斧を手にする。普段使っている斧よりも軽いことに驚いた。
「ここにあるのをお願いだよねん」
「任された。割ってる間は近寄るなよ? 斧を振り下ろすから危ないし、薪が飛んでいくかもしれない」
「分かったよねん」
リーリッドも自分の作業へと戻っていく。ラルロアとナナが遠巻きから見つめる中、ハルは薪割りを始めた。
「よっ!」
リズミカルに薪割りをするハルに目を輝かせるラルロア。手に汗を握りながら興奮している。
「凄いよー!」
「なかなかやるんよ」
「……ふぅー。おう? 興味持ったかラル。ちょっと持ってみるか?」
「うん!」
斧を慎重にラルロアに渡す。少し斧を持ち上げただけでフラつくラルロア。腰は引けて足は震えている。
「俺が使っているやつよりも軽いんだけどなあ。まだラルには早いみたいだな」
「う~ん」
「そんなに悄気んなよ。その内持てるようになるよ。今は、今出来ることをやればいい。勉強して知恵を付けて、本を読んで夢を持って、沢山運動して体力付けて。今は将来への準備期間だ」
ラルロアを励ますように頭を撫でる。撫でられたラルロアは笑顔になって離れていく。なにやらナナに耳打ちしているようだが、ハルには当然聞こえない。
「若いっていいなあ……って、俺も若いか」
無我夢中に薪割りをしていると、リーリッドが再びやって来た。もう充分だと思いハルに声を掛けるのだが、どうやら聞こえていないようだ。斧を振り下ろした瞬間を見計らい肩を叩いて終わりを告げる。
「お疲れだよねん」
「どうもいたしましてだ」
リーリッドからタオルを手渡され汗を拭う。異世界に転生してからの日課となっていた為、改めて感謝され嬉しくなる。
「中で座って休んでよねん」
「そうさせてもらうよ」
※ ※ ※
別荘の中へ入ったハルの視界に飛び込んできたのは、仲良くキッチンで料理しているルキ、ミント、ミラ。二人はミラの指示を受けて動いている。
「ミント様、こちらに!」
「コイツを入れちまっていいんだね?」
「はい。ルキ様はあちらを!」
「分かったわ!」
ルキやミントが普段料理を作ってないことを手付きで見抜くハル。その光景が面白く眺めている。
「マルがこっちを見てるねえ。誰を見ているのかね?」
「誰でもいいんじゃないかしら」
「誰でも? ルッキーも見られていいってこったね」
「そ、それは!?」
「包丁を持つ手が震えてるねえ?」
「震えてなんかないわよ!?」
薪割りで疲れているハルを癒す光景。暫くの間、癒しの光景を見つめているのだった。




