言い伝え
心臓がドクンッと鳴る度に魘される。目を閉じれば浮かび上がり、目を開ければ恐怖する。手汗や額の汗が噴き出す度に拭うが、幾ら拭ってもキリがない。
「……はっ!?」
魘されて起き上がったハル。知らない部屋の知らないベッド。雨風を凌げればいいという石造りの家の内装を見て理解した。
「起きたねら」
「シーラ……俺、気を失ってたのか?」
「瓦礫を愛しく見ていたと思ったら、急にバタンキューだもんら! 驚いたら!」
「ごめんな。この家はお前の?」
「そうら。今は独りだけどら」
「ごめん!?」
「しょうがないら。死火で死んじゃったのら」
「死火、か」
「人は死火以外でも死んじゃうから、充分に気を付けるら!」
「おう」
「元気そうでなによりら。お腹は空いてるら?」
「そういえば何も食べてないな」
「わっちが料理を振る舞うら!」
※ ※ ※
魚の干物と野菜が並ぶ。主食はパンである。予め作っていたかのように出てきたので驚くハル。ドロドロの液体を持って座ったシーラは液体をグラスに注いでいる。
「それは何?」
「ジュースら。色々と余り物をぶちこんで溶かしたら!」
「味見は!?」
「しないら。飲んでからのお楽しみにら!」
笑顔でジュースを渡してくるシーラ。その笑顔が怖いと思いつつ、恐る恐る口を付ける。
「……!?」
「どうら?」
「……美味しい!!」
「そうらそうら! わっちは料理上手ら!」
「見た目で判断しちゃ駄目だな」
「ハルだったけら? これからどうするら?」
「特に決めてない。瓦礫を見て収穫がなければ、別の国に行くつもりだったけど、もうちょっとで何かを掴めそうでな」
「他の街にも行くなら連れていくら! どうら!」
「折角だし行こうかな」
「分かったら!」
シーラが運転する車で移動するハル。十分程で着いた街はラクダの貸し業が盛んで、その街から移動した街は砂漠車の生産が盛んであった。
「街にも個性があるんだな。上手いこと成り立ってる」
「わっちが住んでいる街と二つの街は元々ひとつの街だったらしいら」
「何かあったのか?」
「言い伝えによると、災厄の龍が襲ったらしいら」
「災厄の龍?」
「龍だなんて、にわかには信じられないら」
「瓦礫と関係してるかもな」
「わっちにはなんとも。只、歴史は繰り返すものら」
(歴史は繰り返す、か。災厄まで繰り返したくはないよな)
ハルは右腕を見つめる。悪夢とシーラの話が重なる。只の偶然か否か。ゴクリと唾を飲み込むのだった。




