渚の二人
少し暑くなってきたアンオール。暑い時に行きたい所で真っ先に浮かぶのは海だろう。潮の匂いが海感を増幅させ、白い砂浜の熱さが身体の熱を上げていく。貝殻を拾って耳に当てる人や、日焼けをする人もいる。
「急に暑くなったな」
「絶好の海日和だわ」
麦わら帽子を被り腕を組んでいるルキと、腰に手を当てて項垂れるハル。海に着いたばかりだというのに、既に二人の額には汗が垂れている。
「わざわざ暑い中、人の熱で籠る列車に乗って迄来たいか? 俺には分からないぞ」
「海が嫌いなの?」
「季節の行楽地に、いい思い出がないんだよ。海に行っても芋洗い、プールに行っても芋洗い。キャンプに行けば食中毒、ハイキングに行けば大雨。やっぱり、ちっとも思い出したくないな」
「皆、考えることが同じだけだわ」
「車椅子に乗ってからは行ってないけど、乗ってなくても行ってないだろう」
「ワタシが機会を与えたのね」
「やれやれ。んじゃ、俺は海を眺めてるから、お前は元気に泳いでこい」
ルキの麦わら帽子を取って被ると、砂浜にちょこんと座る。ハルが座ったことに頬を膨らませたルキは、ハルの腕を引っ張る。
「折角なんだし入りなさいよ」
「俺のことはいいから」
「よくないわよ! 何の為に連れてきたのか分からないわ!」
「仕方ないなあ」
ルキの押しに負けて立ち上がる。グイグイ腕を引っ張るルキに困惑する。
(何でこんなに必死に? そもそも俺を連れてきたのは何故だ?)
そんな疑問を浮かべた瞬間、この間の夢を思い出す。麦わら帽子を被った銀髪の少女とルキが重なって見える。引っ張られてる腕に目をやる。夢の中では黒い火が出た腕……少女を燃やした腕。
「くっ!?」
「ハル?」
「……なんでもない……行くぞ」
「ちょっ、ちょっと!?」
ルキの腕を引っ張り駆けていく。引っ張られてるルキは驚くが嬉しそうだ。
(あんなのは夢だ! 俺には……俺達には関係ない!)
服を脱いで、予め着ていた水着を披露するルキ。ハルがその姿にドキッとしていることなど知るよしもなく、無邪気に水をかける。負けじと水をかけ返すハル。海が与えた二人きりの時間を堪能するのだった。




