命は大事に
「死火以外でも……死ぬ!?」
「フーン。ま、そいつがアタシらにとっては普通だね」
「いきなりの発表だわ。一体どういった方法で」
「スラムの人間を見掛けなくなった。マウス実験じゃ意味ねえし、もしかすっと……」
「被験者にしたってこと!?」
「恐らくね。もちろん同意の上だろうがねえ」
「そんなっ!」
「病気や怪我を治す為の実験をしていたのかもね。その過程で判明したってことだろねえ」
「発表したのは国連だわ。国際連盟研究機関」
「どこの発表だろうが知ったこっちゃねえ。この発表が招くのは、死だね。死火以外でも死ぬと判明した以上、自殺者が大量発生するね」
「自殺だなんて!?」
「自殺は間違ってるのは百も承知してる。でもそれだけ苦しんでいる人間がいるのも承知してる」
「自殺を肯定してるの!?」
「いいや? マルが自殺したってのを知った時、心の底からムカついた。勝手に死にやがってって思った。そんでもって悲しかった。けど同時に自分にムカついた」
「自分に?」
「自殺する程マルが苦しんでいたことに気付けなかったことにね。幼馴染が何やってんだって。アタシは自分を責めた……責めて責めて……気が付いたら手首を見ていたね」
「ミント」
「それでもアタシが留まれたのは、こんなアタシが死んだ時にも悲しむ人がいるって分かったからなんだ。アタシの様子がおかしいことに両親は気付いててねえ。馬鹿なこと考えてるんじゃないって泣かれちまった」
「そうだわ。誰にだって悲しんでくれる人はいるの。それを心してないと駄目だわ」
「そうだねえ。天涯孤独でホントにどうしようもなくなって八方塞がりってとこまで追い詰められたら仕方ねえ。だが人間、そうそう天涯孤独にはならないんだねえ。人間ってのは独りじゃ生きれねえ。ハルだって、支えてくれる人達がいるってのに気付いてれば死ななかったかもしれねえ。追い詰められると人間、周りが見えなくなっちまうからね」
「ワタシも危なかったわ」
「アタシらは留まれたんだ。留まれたってことは、恵まれてるってこった。もし自殺志願者を見掛けたら、説得するだけしてみるかねえ」
「そうね。国連は、最悪の事態を想定して発表したのかしら?」
「さあね。一刻も早く真実を伝えることしか考えてないのかもね」
「何であれ、この世界が変わるのは間違いないわ」
「変わるのは構わねえが、世紀末的な世界は勘弁だね」
ミントがラジオを消して寝そべる。そのまま直ぐに寝息を立て始めた。




