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覆る常識

 アンオール南方の街、バウ。アンオールで海を一番綺麗に見れると人気である。いつもは穏やかな海なのだが、この日は酷く荒れていた。


「どうだ? 調子は」


「やはり駄目です。これで決定的になりましたよ」


「遂に来たか。世界の常識が覆る時が」


「公表するのですね」


「世界中から集まった研究者が導き出した真実だ。正しい常識を伝えよう」


 白衣に身を包んだ二十名程の研究者は、幾つものベッドに横たわる人を見つめている。人には装置が付いており、赤や緑のランプが点灯している。


「赤に!」


「最後の一人が……安らかに」


「この者達を祀るんだ。丁重にな」


「「はっ!」」


「スラムに居た時よりも苦しみがなかったと祈るよ。ご苦労様」


 ベッドに手を合わせる研究者。『所長』と呼ばれて歩き出す。白衣を脱ぎ部下に渡すと、小さな部屋へと入っていった。


※ ※ ※


「ルキちゃんや」


「何でしょうか? おばさん」


「実は、ルキちゃんに縁談が来ていてね。ルキちゃんさえ良ければだけど」


「縁談!?」


 ヒノンから帰ってきて一ヶ月が経っていた。ルキがルーキッド家に来てから浮いた話はなく、それを心配していたところに縁談の話が来たらしい。寝耳に水の話に立ち尽くしてしまう。


「明日までに返事をしないといけなくて。少し考えてごらん。ルキちゃんの人生なんだから」


「……はい……」


 混乱する頭を落ち着かせるべく自室に行く。扉を閉めて、溜め息を吐いた。


「どうしたの? ルッキー」


「実は……」


 我が物顔でベッドに横たわっているミント。黙ってルキの話を聞いたミントは、声を上げて笑いこける。


「そいつはおめでてえじゃねえか! 要するに見合いだろ? 滅多に出来る経験じゃねえし、会うだけ会って振っちまえ」


「おめでたいって言っときながら、ワタシが振ること前提なの!?」


「顔見りゃあ分かる。見合いに乗り気じゃねえってくらいね」


「ミント」


「さっさと相手に告っちまえば? そんでもって紹介しちゃえ。オッサン、バッサンの心配事も減る」


「それが出来れば苦労しないわよ」


「不器用でツンデレってやつだねえ。ルッキーの魅力上昇!」


「からかわないで!?」


「どこの誰だろねえ? こんなに想ってくれている娘の気持ちに気付かないバカは」


「明日には返事をしないといけないのよ」


「フーン。アタシなら受けるね。会うだけあってサイナラってするね。会いもせずに断ったら、見合い話を持ってきたオッサンとバッサンに悪いからね」


「そう……よね」


「ルッキー。一番大事なのは、ルッキー自身が後悔しないこと。ダチからのアドバイス」


 ルキの目を見て言うや否やラジオをつける。ノリのいい音楽が掛かっており、ミントは寝転がって踊っている。しかし、途中で音楽は終わり、臨時ニュースに切り替わる。


【世界に向けて報告があります。どうか落ち着いて聴いてください】


「んだよ! 折角ノッてたのに」


【我々人類の死は死火だけというのが常識でした。ですが、研究の結果、新たに判明したのです】


「何が判明したのかしら?」


【研究の結果、人間は死火以外でも死ぬことが判明しました。死火に関しては未だ不明ですが、人間は死火以外でも死ぬことが判明した以上、身体を大切にしなければと思います】


 アンオールを始め、世界各国に発表された真実。人々は一斉にざわめき始めた。

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