ナナの危機
アンオール首都・アロポリアにある屋敷。近所でも有名な屋敷に激震が走っていた。そこに住むのは、小説一家のシャナーズ。祖父と父の背中を追うように娘も小説家の道へ。偉大な二人程ではないものの、確実にファンを増やしている。そんな娘が膝から崩れている。毛先を遊ばせた黒髪が垂れて見える。それもその筈。妹が何者かに誘拐されたのだから。
『ナナ・シャナーズを誘拐した。解放条件は一つ。シャリア・シャナーズを渡すこと』
「こんなことがあってたまるかっ! 何故ナナが!」
「兎に角、騎士団と狙撃団に連絡を!?」
「待て。連絡したことが誘拐犯にバレれば、ナナの身に何が起こるか分からん」
祖父のロンが連絡を制止する。孫娘を助けたいからこその判断である。同じ孫娘であるシャリアを渡すことも反対した。
「気持ちは察するせえ。けど、ここはワタクシが行かないといけないせえ」
「何を言っているのです! 貴女を向かわせられるわけがありません!」
「母様!?」
「その通りだ、シャリア。ナナを助ける為にお前を差し出すなど間違っている」
「父様まで! 本当にナナを助けたいせえ!? 騎士団も狙撃団にも協力を仰げない以上、シャナーズ家の人脈を頼るしかないせえ! どうしてそうしないせえ? ナナが実の娘ではないからせえ!?」
「シャリア!!」
パチンッとシャリアの頬を叩く母親。涙を流しながら肩を抱き寄せ叫ぶ。
「貴女もナナも私達の大切な娘! 大事な家族! 間違ってもそんなことは言わないで!!」
「母様」
「場所はアンオール・タワーだ。何があるか分からない。素直にナナを返すとも限らん。シャリア、それでも行くというのか」
「祖父様……はい。ワタクシが行きますせえ。皆は待っていてほしいせえ」
「シャリア!?」
「妹を助けるよりも自分の安全を優先することなんて出来ないせえ。ナナに何かあったら、その方がワタクシは苦しいせえ」
しがみつく母親を離すと、足早に屋敷を出るシャリア。車を出させて向かった先は、許婿が住むリルリッド邸だった。自室でのんびり寛ぐリーリッドが面食らっている中、矢継ぎ早に事情を話す。シャリアの話を聞いたリーリッドは、『一緒に行くよねん!』と立ち上がる。
「すまんせえ。本当は巻き込みたくないせえ」
「許嫁のピンチだよねん。頼ってもらえて嬉しいよねん」
部屋の扉を開けようとしたが、既に扉は開いていた。廊下に落とされていたのはシャリアが書いた本。その本の持ち主は、リーリッドの弟であり、ナナの許婿であるラルロアだ。
「僕達の話を聞いていたかもよねん!」
「直ぐに追い掛けるせえ!」
急いでラルロアを追い掛ける二人。家を出ても見当たらなかった為、車に乗ってアンオール・タワーに向かった。




