ラルロアの気持ち
アンオール・タワーの展望台で対峙する人間と獣。巨大な犬のような姿の獣を見る人間の目はギラギラしている。刃物を握り締める五人の集団が一斉に飛び掛かる。
「やっちまえ!」
襲い掛かる集団に対し、獣は尻尾を振り回して応戦。空振りしても突風を起こす程である。集団の一人がスタンガンを取り出して獣の巨体に押し当てた。
「ガアアア!!!?」
電撃に耐えられず伏せる獣。その好機を見逃すわけもなく集団が襲い掛かる。が、突如飛んできた折り紙に阻まれる。
「やめろ!」
「ガキだと? 展望台は、ナナ・シャナーズの意向で貸切と言った筈だ」
「コッソリ入っただけだ」
「今は貸切だ。部外者は出ろ」
「僕は部外者じゃない! ナナは、ボクの許嫁だ!」
「許嫁だと? ほう、それが本当だとしたらお前も貴族か」
「だったら何だ!」
「哀れだと思ってな。許嫁が人間じゃないなんてよ」
「人間じゃない?」
「そこで痺れてる化け物……あれが許嫁なんだろ?」
ゆっくりと視線を獣に移すラルロア。ゆっくりと獣に近付くと、そっと優しく撫でる。自分よりも大きな獣に物怖じせず、ただただ獣の目を見つめる。
「そうだったんだ……初めて知ったよ」
「ナナ・シャナーズは魔術師! 獣化の魔術師だ! シャナーズ一家の面汚し! 綺麗サッパリ消してやろってわけだ!」
「初めて知ったよ……お前達みたいな酷いのがいるってこと!」
集団に背を向けていたラルロアが怒りを露にして振り向く。持っている折り紙を集団に投げていく。
「こんな紙で俺達が怯むと思ってるのか!」
「がはっ!!」
拳を腹に一発食らいよろけるラルロア。六歳の子供が、大の大人に殴られれば大ダメージである。視界がボヤけても尚、獣化のナナから離れようとしない。
「人間じゃないんだぜ? ナナ・シャナーズは化け物だ。生きてちゃいけない存在だ。バラバラにしてカネになってもらう!」
「さ……せない。ナナは……ボクが……守る!」
「冗談キツいぜ? ガキ。化け物を守って何になる? これっぽっちも得にならん」
「ナナは化け物じゃない! ナナは人間だ!! 得るものならいーっぱいある!」
「何?」
「ナナの笑顔が見れる! ナナの声が聞ける! ナナと笑ったり泣いたりして気持ちを共有出来る!」
「くだらない!」
「くだらなくない! ボクの心を温かくしてくれる! 辛い時や悲しい時にはボクを頼りにしてくれる! ナナが傍にいるだけで安心出来る! ボクには充分過ぎる程、いーっぱい得るものはある!」
「そんなに一緒にいたいのならさ、仲良くバラバラになっちまえ!」
襲い掛かる刃物に目を瞑る。気を失いかけながら、『ナナを守る』と呟く。大きな獣の身体に背中に寄り掛かる。意識が遠退く中、『ナナ、大好きだよ』と呟いた。




