帰国
ヒノンに来てから一ヶ月、スズメの家にすっかり馴染んでいた三人だったが、とうとうスズメの退院の日を迎えた。晴天だが寒い空の下、スズメは元気に病院から出てきた。
「わざわざ出迎えに来てくれたっす!?」
「家の主を迎えにいくのは当然だよ。俺達、凄く助かってるんだ」
「それはよかったっす」
「立ち話もそこまでだわ。早く帰りましょう」
「そうだな」
「帰るっす!」
※ ※ ※
「やっぱ重いね! 身が引き締まる」
「わざわざ司令部に来て迄の頼み事がそれなの? 意外に物好きだ」
「チャンスがありゃあ触りたいと思ってたからねえ。念願叶ったり!」
ジャックの銃を特別に持たせてもらい感動を覚えるミント。目がキラキラと光っている。
「銃が好きなの?」
「銃その物には興味ねえけど、このフォルムをアンオールで見た時にビビッときたんだ」
「成る程」
「じゃあ帰るかねえ。今日はネエチャンの退院日。礼を言わねえとね」
「今日だったのか。司令部に直行なんてしないでくれると助かるんだが」
「そういうのを見越しての出迎えがいる。心配不要」
「それなら安心だ。気を付けて帰るんだ」
「折角だから送ってくれねえ?」
「見回りに行くつもりだったから構わんが」
「よっしゃー! アッシーゲット!」
※ ※ ※
「久し振りの我が家っす!」
家に着くなりベッドにダイブしたスズメ。フワフワな感触に心を奪われる。
「やれやれ。俺達より歳上とは思えない」
「病院のベッドより、いつも寝ているベッドの方が気持ちいいんだわ。気持ちは分かるわよ」
「そうだな」
そこへミントが帰ってきた。ジャックを連れてきた為、スズメが一番驚いている。
「その様子なら安心だ。退院おめでとう、スー」
「退院祝いでもくれるっす!?」
「残念だが手ぶらなの」
「残念っす。気が利かない先輩っす」
「オレは全能じゃないの」
「しょうがないっす。その代わり、隣に座ってっす」
スズメに言われてベッドに座るジャック。二人の邪魔をしないよう部屋を出る三人。三人が出たことを確認すると、ジャックを見つめて目を閉じる。
「……先輩……」
「手ぶらじゃ帰さないつもりか」
ジャックも目を閉じて唇を重ねた。そのまま倒れる二人。スズメの顔に軽く触れると、ジャックは起き上がった。
「ええー! 超雰囲気よかったっす! こちとら準備万端っす!」
「オレは仕事中なの。終わったら戻ってくる」
「本当っす!?」
「本当だ。だからその……待っててくれ」
「待ってるっす待ってるっす!」
ジャックが部屋を出ると、扉の前でニヤついているミント。肘で小突いてジャックをからかう。
「聞いていたの?」
「いーや? なんとなくいい感じだったから、暫く出てこないものかとね」
「大人をからかうんじゃないの。オレは見回りに行く」
「そっか。アタシらともお別れってこった」
「アンオールに帰るのか?」
「元々一ヶ月も居るつもりなかったしね。アンチャンとネエチャンに会えてよかった」
「こちらこそだ。今回の件では助かった、ありがとう」
帰り支度を済ませた三人は、改めてスズメとジャックにお礼と別れを告げて歩き出す。ヒノンとの別れが近付いているのを知らせるように、渡ってきた橋が見えてきた。
「行きは車だったけど、帰りは歩きなんだな」
「都合よくいかねえのが人生だね」
ハルの腕に飛び付くミント。『寒いから温めてくれね?』と見つめる。それを見たルキも『ワタシもお願いするわ!』と飛び付いた。
「歩きづらいんだがよ」
「いいじゃねえかマル! 両手に花ってやつだ!」
「遠慮なんて要らないわよ」
「しょうがないな」
溜め息を吐きながらも、どこか嬉しそうにしているハル。こうして三人はアンオールへと戻っていくのだった。




