救出
突然のルキの登場に驚く門番。抱き締めているスズメを盾にして空中に留まる。
「彼女がどうなってもいいのかぁ?」
「スズメさんを返しなさい!」
「返すものかぁぁ! やっと触れたんだぁぁ!」
「スズメさんをどうするつもり!?」
「決まってるじゃないかぁぁぁ! 気の済むまで楽しむのさぁぁ!」
「スズメさんは玩具じゃないわ!」
「そんなことは知ってる。だってだって……うひぃぃ! 彼女は俺への贈り物なんだからぁぁ!!」
スズメの姿をルキに向け、スズメの腹部を撫でる門番。白い肌に巻かれた包帯に触れて、悲しみを浮かべている。
「勝手な!」
「勝手! 俺が貰ったものを俺がどうしようが勝手だぁぁ!」
「狂ってるわ!」
「彼女を痛め付けたいというのは聞いていたが、俺の気が済んでからって話だったんだ。順序が逆になったのは残念だよ」
「そういう問題じゃないわ!」
カードを取り出したルキは、『ブレイズ!』と唱えて光を放つ。目の前で放たれた強烈な光に堪らず目を閉じた門番。ルキがその隙にスズメを門番から引き離すと、車で追ってきていたジャックに引き渡した。
「無事なようだわ」
「そのようだ。さて、彼をどうするか」
「空を飛ばれたら厄介だわ。ワタシがなんとかしてみます」
空へと戻ったルキ。視界が戻った門番に睨まれても怯まない。カードを翳して立ち向かっていく。
「ウィンド!」
風を起こし門番の動きを封じる。流れるように『パラリシス!』と唱えると、門番の身体に痺れが走った。
「うぅぅ!? 何だ何だ何だ!? 君は魔術師ぃぃ?」
「貴方の身体は動かないわよ。電撃で麻痺している筈だわ」
「……へえぇぇ……君、凄いねぇぇ? よく見れば可愛いし。俺への贈り物は君だったんだぁぁ!」
「冗談じゃないわ! さぁ、大人しくしなさい!」
「大人しくするのは君だぁぁ!!」
動き出そうとしたルキだが、何故だか身体を動かせない。それなのに徐々に門番に近付いていく。
「動けない!?」
「俺の魔術は、飛ぶことじゃないんだぁぁ。任意の相手を飛ばせることなんだぁぁ!」
「そんな!?」
「相手は自分の意思では飛べないが、俺が魔術を使えば誰だって飛べる。俺が君に魔術を使った結果、君は自分の意思で飛べなくなったんだぁぁ!」
近付いたルキを抱き締める門番。ルキの髪、頬を撫でていく。その目はウットリし始め、ルキを後ろ向きにした瞬間、その手で胸を揉む。
「やっ、やめて!」
「やめないぃぃ。気持ちがいいからぁぁ」
ルキの脳裏に浮かぶ苦い記憶。男子の標的となった辛い日々の記憶。今の状況と記憶が重なり涙が流れた。
「嫌あああ!!」
「胸を揉まれてこの反応……君、初なんだぁぁ」
耳に掛かる吐息、聞こえる声。次第に意識が遠くなっていく。泣く気力すらなくなってしまった。
「……」
「邪魔が入らない所に行こう。そこでゆっくりと……」
門番が移動しようとしたその時、一発の銃弾が肩を貫いた。痛みにルキを手放す。撃たれた方向を見ると、ジャックがライフルを構えていた。
「ルキ!!」
空から落ちてきたルキを見事にキャッチしたハル。お姫様だっこの状態で受け止められたルキは顔を赤らめる。反射的に降りようと身体を動かしたことで、門番の魔術が解けているのを知ったルキは、そのままハルに抱き付いた。
「どうなるかと思ったわ!! ……怖かった!!」
「無事で何よりだよ。ホッとした」
ルキを撫でるハルを横目に、落下してきた門番を傘の持ち手で受け止めたミント。門番の肩を傘の先で突きながら笑いを浮かべている。
「アンタには感謝するね。お陰でダチ同士の距離が縮まったみたいだから」
「痛いぃぃ!!」
「痛い? しゃあねえ、アタシの世界に伝わる呪文を掛けてやろうじゃねえか。痛いの痛いの飛んでけー!」
「あああああ!!」
門番の傷口を勢いよく踏んづけたミント。門番の悲痛な叫びを聞いたミントは嬉しそうであった。




