眠るスズメ
「何の用?」
「オレを困らせるな。ライフルの場所を教えるんだ」
「私を振ったくせに」
「早くするの。オレじゃなければ厳しくなるの」
ジャックの口調が柔らかくなる。それを聞いたアリサはジャックを睨む。
「甘い!」
「甘くて結構だ」
「優しくしないで!」
「普通にしている」
アリサの目には涙が浮かぶ。こんな自分といつものように接するジャックを睨む。
「それが辛いんじゃないの!」
「もう一度訊く、ライフルの場所はどこなの?」
「……もう一人の共犯が持っている筈……行方は知らない」
「もう一人!?」
「そう。私が気絶をさせるのに使ったのはスタンガンだけど、一人だけ例外がいるの。さっき捕まった男が使ったのもスタンガンだったでしょう? 男は一人、私は三人。さーて誰でしょう?」
「「……門番!」」
少しの沈黙の後、その場にいた軍人達が一斉に声を出した。
※ ※ ※
軍服を纏った者が一歩、また一歩進む。スズメが運び込まれた病院の一室、スズメが眠る部屋に入る。スズメの寝顔を見てニヤつく。
「とうとう触れる。その白い肌……透き通った水色の髪……艶やかな唇……柔らかそうな胸……いつも軍服に隠れている太股……ふくらはぎぃぃぃ」
担いでいたライフルを床に置き、そっと顔に触れる。想像通りの柔らかさに恍惚して火照った身体を冷やす為、軍服を脱ぎだした。
※ ※ ※
「ちっ! やはり切っている!」
「発信器で追えない以上、手当たり次第捜すしかない。ジャック、心当たりは?」
「司令部に来た時に顔を合わす程度だ。……アリサ、門番も脅したのか?」
「利害が一致しただけ。私はスズメ・バードを痛め付けたい、門番はスズメ・バードを独占したいってね」
「スーだと!?」
「随分と焦りが増したようね」
「当たり前だ! 軍の仲間だ!」
「本当にそれだけ?」
「……オレの用は済んだ。彼女は任せた」
司令部を駆け足で出ると、急いで車に乗り込む。エンジンを掛けて発進し、バックミラーで後方を確認した途端、ジャックは目を丸くした。
「急ぎすぎ焦りすぎ。冷静さを失ったら終わりだね、アンチャン。はい深呼吸!」
「君達!?」
「エンジンを切った迄はよかったけど、ドアの鍵を掛けずに司令部に入っただろう。お陰で俺達、こうして車を見張る羽目になったんだよ」
「何か情報があったの?」
「簡潔に話す」
司令部から病院迄は車で五分。スズメを搬送した時と同じく、五分が長く感じるジャックであった。




