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アロポリア探索

 汽車に乗るために駅に向かったミント。切符を買おうと構内を彷徨くが、券売機を見つけられずにいた。よく見れば改札もない。ホームが目先に見えている。


「ちょっと。切符を買いたいんだけど」


「どこまで行くのかね?」


「アロポリア迄だけど」


「流石に若いだけある。アロポリアは賑やかだからね」


 そう言いながら駅員は切符を渡してきた。単に渡された為、ミントはキョトンとしてしまう。


「幾ら?」


「支払いは汽車でだ。ん? もしかして初めてなのかね?」


「ははは。こう見えても箱入りで」


「そうかそうか! なに、心配は要らないよ。ちゃんと行けるから」


 ポンポンと肩を叩かれる。初めてのお使いに緊張している子供を安心させるように。ホームに汽車が到着し、駅員に見送られながら乗り込んだ。


「ふわあああ~!!」


 席に着くや大欠伸。窓を軽く開けて風を感じる。三十分も座り続けるのは避けたかったものの、汽車には吊革がなかった。致し方なく座っていると、隣に男性がやって来た。スーツに帽子という出で立ちで、品の良さが漂っている。


「隣、宜しいかな?」


「ええ」


 窓際で頬杖を付きながら返事をするミント。そんなミントを見た男性は笑みを溢す。帽子を脱いで膝上に置くと、鞄から新聞を取り出した。


(車内で新聞は鉄板みたいだな)


「お嬢さん、どこまで行くのかな?」


「アロポリア」


「アロポリアか。アロポリア・ドームにアンオール・タワー、国立図書館も有名だ。有名と言えば王城も外せない」


「王城?」


「アンオールの王様が住む城だよ。白い外壁が綺麗なんだ」


「行ったことあんの?」


「ないない。王城に入れるのは、王様に招待された者だけだよ。普通は入れない」


「フーン」


 その後も男性と談笑を続ける。会話をしていると、あっという間にアロポリアに着いた。男性に頭を下げて降りていく。切符代は車掌に支払った。


「ここがアロポリア」


 駅を出て歩いていく。人の多さに驚いたが、衝撃を受ける程ではなかったらしく、怯むことなく進む。


「都心っぽいね、こりゃあ」


 食べ物屋から服屋迄、多種多様なお店が並んでいる。美味しそうな匂いに釣られ、パン屋に吸い込まれていく。クリームパンを買ったミントは、食べながら道を歩いていく。


「表通りは賑やかだけど、裏道はどうなんだ?」


 裏通りに入っていく。表の賑やかさとは裏腹に、裏通りは静かなものである。煙草が捨てられ、生ゴミが散乱しており異臭が襲う。


(くっせー!)


 逃げるように進んでいくと、生ゴミとは違う異臭が漂う場所に着いた。異常に痩せた者、腕が欠落している者。オンボロの家の前で座り込む者も居る。


(変わりすぎだろう!? スラムってやつか。どこの世界も完璧じゃねえな)


 車が走って来る。数人の人間が降りてくると、そこの人達を乗せて去っていった。家は蛻の殻になる。

 そこに長居する理由がない為、表通りに戻っていく。同じ街の落差に溜め息を吐いた。


「さーて、これからどうすっかね。カフェにでも入ってみるか。情報が得れるかもしれねえ」


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