最強の傘使い
ジャガイモとリンゴを平らげ、ジュースを飲み干したミントは困っていた。右も左も分からない街、しかも異世界である。ましてや目的がない。うーんと腕を組んで空を見る。
(せめて地図でもありゃあ……あと新聞)
考えていても仕方ないと思い歩き出す。地図と新聞が売っているお店を探していく。しかし、並んでいるお店は食べ物屋ばかり。閉じている傘の持ち手で肩を刺激しながらフラつくばかりだ。ふと、脇道に入っていくと、五人の男達が寄って集っていた。
「魔術師の末路、知ってるだろ?」
「嫌っ!」
男達に囲まれている女性は震えていた。今にも崩れ落ちそうな程、足をガクガクさせている。
「先ずは……腕」
「腕をどうするんだ?」
男達に声を掛けると、男達はミントに驚いて構える。五人の内、三人は銃を持っていた。三人に銃を向けられるミントだが、傘の持ち手で肩をグリグリするばかり。気だるそうに欠伸をする始末だ。
「脅しじゃない。躊躇なく撃つ」
「あーそー。アンタ、行きな」
「でも!?」
「邪魔だ。アタシの気が変わる前に立ち去りな」
「どうもありがとう!」
女性が立ち去ったのを確認すると、傘を構えるミント。脇をグッと締め、背筋をピンと伸ばす。
「傘で歯向かう気か? 正気の沙汰じゃないぜ」
「正気じゃないのは自覚していてね」
「まあいい。口を塞ぐ迄だ」
引き金を引いていく男。その目はギラギラしている。人を傷付けることに快感を覚えているかのように。辺りに響く銃声だが、お店の方には活気で聞こえていない。
「フーン。なかなかの腕じゃねえか」
「何!?」
「珍しくなんてねえだろ? 〝傘で銃弾を弾く〟だなんて」
男が動揺しているうちに手首を叩く。傘とはいえ、使い方次第では凶器になる。流れるように眉間を突き、残り二人の手首も叩いて、地面に銃を落とさせた。
「「ひぃっ!!」」
「銃持ちは片付けた。そっちの二人はどうする? アタシは相手になってもいいが?」
「ここは退こう!」
「ちぃっ! どうしてこうも邪魔をしてくるんだ。魔術師は悪なんだ! 撲滅しなければならない!」
「アンタらの事情は知らねえ。アンタらのやり方が気に入らなかっただけだ。とっとと消えな!」
逃げるように去っていく五人。逃げる際に落としていった地図と、叩き落とされたままの三丁の銃を拾うミント。
「まだ弾が残ってるじゃねえか。勿体ねえことするヤツらだ。ご丁寧に地図まで置いてったか。ラッキー」
地図を見たミントは頭を掻いた。今の場所が分からなかったからだ。仕方なく、近くの人に訊いた。
「アロポリアってのが首都なんだな。汽車に乗りゃあ三十分みてえだし、ちょいと行ってみるかね」




