騎士との遭遇
カフェではラジオが掛かっていた。今は、アンオールの話題のスポットを紹介する番組をやっている。
(随分と平和な番組なこった。話題になってるだ? ホントに話題になってんなら、とっくにごった返してんだろ)
コーヒーを飲みながら、周りに座っている他のお客の話に聞き耳を立てる。
「まさか大統領がなあ」
「次の大統領候補は誰なんだろな」
「誰でもいい。魔術師じゃなければ」
「それは当然だ」
(魔術師は相当嫌われてるみてえだ。さっきのネエチャンも魔術師みてえだけど、見て呉れは美人だった。誰でも構いなしか)
「どうやら、その事件に貴族も関わったらしい。噂だが、リルリッドとかシャナーズらしい」
「けっ! 王様に招待されたってやつか。そんな時に巻き込まれたとあっちゃ、貴族には尚更近付けなくなるな」
「王城だって手厚くなるさ。門から覗いているだけで不審者扱いだろう」
(貴族は存在すんだな。王城ってのは綺麗らしいって話だし、ちょいと拝みに行きますかね)
※ ※ ※
「どうなっても知らないぞ!」
「退散するからな!」
カフェで話をしていたお客が車を走らせ去っていく。背中で聞き流しながら、芝生が生い茂る敷地を眺めるミント。
(うっせー。王城に連れてけって言っただけだろ!)
「招待状を持っているか?」
「あぁん!? このツラ見て分かんねえか」
「持っていないなら許可出来ない」
「傘で肩をグリグリしてる女は駄目ってか。男尊女卑かコンニャロー!」
「そうじゃない。招待状を持ってないから駄目なんだ」
「じゃあ、くれ」
「王族の方からしか貰えない」
「ケチケチすんじゃねえ。ちょいと拝むだけだ」
「だから! 招待状がなければ……」
「グチグチうっせーな、マニュアル野郎! 臨機応変に出来ねえのか!」
傘を門番に突き付けるミント。そのミントの気迫に押された門番は、顔をしかめつつ門を開けた。
「どうなっても知らないぞ」
「さっさと警備を呼んだらどうだ?」
「そうさせてもらう」
門番がトランシーバーで騎士団に連絡している隙に、颯爽と芝生を駆けていく。風を切って芝生を走るのは気持ちがいい。黒髪を揺らしながら笑顔のミントだったが、目の前に現れた黒服の少年を見て止まる。
「早いじゃねえか」
「門番を脅して入るとは。随分と元気のいい方と見受けます」
「元気が取り柄なもんで。どうしても王様のツラを拝みたくてね」
「招待をされていないということは、歓迎されていないということ。この先に通すことも、王様に会うこともなりません」
「頑固な男だねー。そんなんじゃモテねえんじゃねえか?」
「そうかもしれません。この十八年、女性との出逢いはありませんから。そもそも騎士という職務上、恋愛をしている暇はありません」
「勿体ないね。アンタ、イケメンの部類なのに」
「いけめん、ですか。そのように言われたのは二度目です」
「フーン。アタシの気のせいじゃねえってこった」
「褒めて下さったようで嬉しいです。が、それとこれとは別問題です。このリンク、王様に迫る者を排除する!」
「悪くねえ。いくぜアンチャン!」
剣を抜いたリンクに向かうは、傘を構えるミント。吹いていた風が止んだ瞬間、二人は同時に動いた。




