正義の暴走の終わり
爆発なんかなかったかのように睨み合うレイフォンとミク。潤んだ瞳から涙が流れ、両膝から崩れてしまうミク。祖父であり大統領であるレイフォンの、自分の知らない姿を受け入れられずにいた。
「……どうして……誰も理解しない……私は正しい筈だ!」
(七度目の正直になってしまいました。巨大な球体を撃たれたら終わり! ルキ様は躊躇している。魔術師であることが周囲にバレることを、ミク様の御祖父様でもあるレイフォンを攻撃することも)
痛む足を必死で動かしていくミラ。右太股に備えていたもう一本の短剣を持つと、レイフォン目掛けて放り投げた。
「ぐっ!? ぅぅぅ……う、後ろからだと!?」
(魔術師だろうと関係ないとリンク様は言ってくれました。だから、ルキ様!)
「ルキ様!! 貴女の力で止めて下さい!! 私達を信じて下さい!!」
ミラから攻撃されたことにより、巨大な球体を小さくしてしまったレイフォン。ミラからの言葉により、カードを取り出す勇気を大きく得たルキ。レイフォンが巨大な球体を作り出すよりも先に、『ライトニング!』と稲妻を炸裂させた。
※ ※ ※
レイフォン大統領は騎士団に連行された。泣き崩れるミクを抱えて歩くルキとシャリア。疲労困憊のミラは、リンクに抱き抱えられていく。不安がるラルロアとナナを安心させるハル。
荒れた芝生を見た門番は腰を抜かし、一緒にいた番犬は大人しくなる。犬の勘なのかもしれない。
「ルキ、いいか?」
「いいわよ」
ルキの部屋に入るハル。ベッドに横たわるルキは元気がない様子だった。
「なーにショボくれてんだよ? らしくないぞ」
「色々とありすぎたわ。大統領が不穏の正体だったのも、ワタシが魔術師であることがバレたことも」
「別に構わないだろう。俺もリーリッドもお前が魔術師なのは知ってたんだから。他の皆だって分かってくれる」
「リーさんは自分も魔術師だからだわ。キミは転生者だから価値観が違うのよ。けど皆は違うわ。魔術師を嫌っているに決まってるわよ」
「被害妄想だって。お前が魔術師だと分かった瞬間、目の色を変えて襲ってくるってか? それはないと思うがなぁ」
「キミは楽観的だわ! ネネちゃんの一件、忘れたわけではないでしょう?」
「あれはあれだ。皆は違うよ。もし万が一、皆がお前を襲ってきたその時は、俺がお前の盾になってやるよ。心配すんな」
「何を格好のいいことを。お世辞にも腕が立つわけではないし、魔術を使えるわけでもない。褒められることといえば、手先が器用なことくらい」
「今の俺は死なない。お前は死んじまう。盾になるには充分じゃないか」
「やれやれ、そういうところがズルい。それを自覚していないのは更にズルいわ」
「はぁ?」
「こっちの話だわ。ありがとう」
ルキの部屋の扉を叩く音がする。ルキの代わりにハルが開ける。そこに立っていたのはシャリア達だった。
「大広間に集まるせえ。ケーキを焼いてくれたようせえ」
「あんなことがあったからこそ、甘いものを食べるんよ」
「ハルハル、ルキルキ、早く行かないと冷めちゃうよねん。焼きたては格別よねん!」
「新しい折り紙の折り方が閃くかも!」
「私なら大丈夫だよ。祖父のことは残念だけど、私はめげたりしない。祖父は祖父、私は私だから」
誰ひとり、ルキを襲おうとする者はいない。変わらず接してくれている。それが嬉しくて堪らなく、嬉し涙を流す。
「言った通りだったろう?」
「そうね……キミは正しいわ」
(もっと甘えてもいいのかしら? 皆にも……ハルにも)
※ ※ ※
「大したことではなくて安心しました」
「リンク様が守ってくれたお陰です」
「騎士として当然のことをした迄。女性の傷は騎士の恥です」
「御上手ですね」
「騎士をおだてるのが上手いですね。勝手に力が湧いてきます。さぁ、行きましょう。大広間で皆さんが待っています」
ミラに手を差し伸べすリンク。オレンジの髪から覗く瞳に吸い込まれるかのように手を取るミラ。
(どうやら私、恋をしたようです。王城を守る騎士様に)
こうして大広間に集まった一同。レイフォンが王城を狙った理由は、『魔術師の気配があったから』だそうだ。だがそれが誰なのかは分からず、ゴルドの希望で、詮索されることもなかった。
ゴルドがリーリッドとラルロア、シャリアとナナ、ミクに招待状を送った理由は、『久し振りに顔を見たくなった』という単純なことであった為、深く考えていたリーリッドは肩透かしを食らったのだった。




