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一致団結

 黒い玉の雨霰。降り掛かる度に爆発して芝生を乱す。それを掻い潜りながらレイフォンに近付くミラ。スカートの裾を揺らしながら活発に動く。ミラの動きに驚いたレイフォンは後退する。


「只のお嬢ちゃんではないようだ。何者だ」


「貴方は魔術師を狙っているのでしょう? 私が魔術師であることにも気付いている筈です」


「やれやれ、とんだお嬢ちゃんだ」


「お嬢ちゃんと呼ばれたことなんて初めてです。貴方がこのようなことをしない方なら嬉しい御言葉でした」


「この私が大統領である以上、悪しき魔術師は消えなければならない。この国の未来の為だ」


「アンオールの為ですか。それは壮大な野望ですね」


「野望だと」


「自分の為ならば、他はどうなっても構わない。貴方の考えなんてその程度なんじゃありません?」


「人は死なない……どんなに憎い相手だろうと。殺せないのならば、手足を引きちぎってしまえばいいだけのこと。この国の未来の為だ」


「そうですか、それが答えですか。手足を奪うことを軽くみているようで残念です。貴方は相応しくありません。大統領としても……人としても!」


 スカートの裾に隠れる太股に備えていた短剣を取り出すと、レイフォン目掛けて投げ飛ばす。反応が遅れたレイフォンの左肩に突き刺さる。レイフォンの左肩から血が流れる。


「いい度胸だ」


 黒い玉を右手から撃つ。左肩の痛みが響いており、なかなか狙いを定められない。外れた黒い玉は芝生を傷付けるばかり。


(そろそろ皆さんが来る頃でしょうか。シャリア様が、妙な気配に気付いて動く。皆さんを連れて)


 左の太股に備えていた球体をレイフォンに放る。たちまち黒い煙幕が広がっていく。視界を遮られたレイフォンに隙が生じ、その隙を突いて鎖をレイフォンの身体に巻き付けた。


「これで身動きを取れないでしょう」


「こんな鎖!」


「特別な鎖ですので簡単には切れません。どうやら、騎士団がやって来たようですね。貴方の負けです、レイフォン大統領」


 ミラとレイフォンを囲む騎士団。レイフォンの姿を見て、驚きを隠せないようであった。そんな騎士団の中でも冷静でいるリンク。騎士団長としての佇まいを崩さない。


「事情はじっくり訊くとしましょう。レイフォン大統領を連れていけ」


 レイフォンを連れていく騎士団。だが、レイフォンの言葉に固まってしまう。そして、その目はミラに向けられた。


「そのお嬢ちゃんは魔術師だ。私を捕らえようと攻撃してきた」


「そうきましたか。この状況を見ただけでは分かりませんね。私と貴方、どちらが敵なのか」


「私は大統領だ! 民間人に襲われたんだ! 騎士団、あのお嬢ちゃんを捕らえろ! 大統領命令だ!」


 レイフォンの言葉に動き出す騎士団。その目は正気を失っているようだ。操られているかのように。


「大勢の殿方に襲われるのは御遠慮願います。これでも乙女なもので」


「確かにそうですね。騎士道にも反しています。一人の乙女を大勢で襲うなど言語道断! 今一度、騎士道を鍛え直してやるまで!」


「リンク様」


「私の名前を存じていたのですか。これはこれは光栄です。心配は要りません。貴女を守ってみせましょう」


「私は魔術師かもしれないのにですか」


「関係ありません。魔術師を嫌う理由が見つかりません。魔術師が呪いを掛けるというのなら、その呪いを祓うだけです。まぁ、貴女のような可憐な方に呪われるのなら構いません」


「私が……可憐?」


 襲い掛かる騎士団に対し無双するリンクの背中を見るミラ。周りからは活発に見られ、自分のメイド姿を見てリーリッドは褒めてくれた。その時に感じた心は温かかった。そして今、リンクの言葉を受けて感じている心は熱い。胸がとても熱くなる。


「フンッ!」


 黒い玉を芝生に叩き付けて逃げ出すレイフォン。騎士団を一人で相手にしている為、リンクは追うことが出来ない。ミラが追おうとするが、さっきの戦闘で足を痛めていた。


「ライトニング!」


「何!?」


 レイフォンの前に落雷が起きる。そこに現れたのは、鋭い眼光で睨むルキだった。


「逃がしません」


「悪い冗談だな、お嬢ちゃん」


「それはこっちの台詞だわ。ミラさんを襲うだなんて許されないわ!」


「私は大統領だ! この場に居る全員の口を塞ぐことなんて簡単なんだ!」


「それは初耳だよ」


 茶色の髪を靡かせるミクの目は潤んでいた。自分の祖父が脅している現実に。ミラを襲った現実に。


「ミ、ミク!?」


「ここは王城だよ。大統領は偉いけど、王城で暴れていいわけじゃないよ。国民を傷付けていいわけじゃないよ!」


「……どうして……誰も理解しない……私は正しい筈だ!」


 黒い玉を作り出す。掌サイズではなく、巨大な玉を作り出す。


「こいつが爆発すれば最後、ここ一帯は消し飛ぶ!」


「ミクさんが……自分の孫がどうなってもいいの!?」


「逆らうのなら従わせる迄。今なら助けてやるぞ、ミク」


「拒否するよ!」


「なら消えろ!!」


 巨大な黒い玉が落とされた。眩しい光と爆発、爆風に一帯は包まれた。









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