第23話 魔王と合流
「分断?」
「ああ、探索者とやらが、どれほどの実力者なのかわからないが、少なくともランの気配を察知し、警戒する実力はあると考えていい。そうなると、孤立させる方がいいと考えるべきだ」
「個々の撃破ですか……」
ゼンが口にする不安材料も分かる。
個々に分断するということは、個々に相手をしなければいけないという事。
分断させたのち、数の有利を作り出せないわけでもなかったが、集まられては意味がない。
そうなると、足止めでそうなることになる。
「対応が難しくあります」
ランが誰を誰に対応するか判断できないという。
「そこは俺が合流してからまた決めたいと思う」
「……できるの?」
ブンは潜入で魔王がいない状況を鑑みて尋ねる。
「分断の中には俺も含まれる。その時、一度合流したいと考えている」
「そこで、改めて対応策を練ってもらうと……」
「鍵を握るのは、【暗霧】と【幻惑】」
パインとマスカの喉がゴクリとなる。
「第一の作戦は、俺を含めた探索者の分断だ」
細かい作戦は立てられないが、出来限りの策を話しておく。
「大半を任せるばかりの作戦で悪いが、タイミングは任せる」
そして、それは見事に成功した。
中央の間に、青年とランが急いで戻ってきた。
この成功のカギは全て後手にある。
探索者はダンジョンの中だけに警戒を向けていたが、実際のところランは外にいた。
その上、青年と探索者である三人の後続を付いてきていた。
だから、【暗霧】と【幻惑】が展開され、魔法使いであるガレットの認識が外れた瞬間、ランは青年をその場から引きはがした。
【幻惑】は魔法使いであるガレットに通用する。
つまり、ガレットが視たのは青年がいなくなった空間であり、実際その場に青年はまだいたのだ。
「よくやった」
だが、青年は気を抜いたりできなかった。
それは探索者である三人が想像していたより、実力があるという事。
運がよかったのは、ランの存在が感づかれることがなかった事、魔法使いであるガレットが【幻惑】に惑わされたのが大きい。
おそらく、現在【魔王】の魔力を有しているダンジョンコアから漏れる魔力が、【幻惑】のカモフラージュになり、ランの気配を消す形になった。
だが、【幻惑】に関しては、いつまで気づかれない状況が続くかわからない。
強張る表情の青年に、集まった五人はただ青年の声だけに集中した。
「時間があるとも限らない」
急ぎ早に話される自身の声に焦りが見えていることを自覚する。
青年は一呼吸置く。
焦りはミスに繋がる。
なにより、青年が焦っていては、その指示に従う者は不安しか残らない。
だから、いたって冷静に話はされた。
「探索者の特徴を伝える。男性一人は剣士、それも魔法を剣にまとわせる事ができる元騎士。女性の一人は格闘家。拳にグローブを付け、魔法の類は使えないが、それに近いモノを拳に纏わせる。最後に魔法使いの女性、おそらく一番警戒しなければいけない人物だ」
魔法に精通している者に対して、魔法が使える者が二名、それも戦闘向きではない。
そこから勝つための組み合わせを、この場にいる六人で割り振らなくてはならない。
「組み合わせは――」
全てを考慮し、最善の組み合わせを全員に伝える。
やるべきことを伝え、最後に青年からの指示ではない命令が下される。
「決して死ぬな」
静かに頷きあう仲間たちと共に、最初の戦いが始まる。
その頃、ダンジョン入り口近くで切り株に足を斜めに腰掛け、バナがサーベルライトタイガーの番の頭を撫でる。
森の中で生きる生物は決してレスノイを攻撃することはない。
バナはダンジョンの入り口をただじっと眺めていた。
次話12時up予定




