第21話 魔王と探索者⑤
いざ洞窟に入洞する寸前で、
「ん」
そう声を漏らしてガレットが、こん棒として使うには細く、杖にしては短い太めの枝を青年に手渡してきた。
用途が分からないまでも青年は受け取り、その真意を尋ねる。
「これは?」
「戦闘できるの?」
「いや、できないな」
青年は臆せず素直に答える。
「ここで待っている?」
「いや、一度中に入っているし、俺からすれば外より中の方が安全だ」
昨夜の一件もあり、猛獣やら魔獣やらに襲われる方が危険だと付け足す。
なにより、青年からすれば、ダンジョン内に入らなければ何もできない。
ガレットは青年の意見に同意しつつ、その真意を悟ることはできない。
「もう少し上に掲げて」
言われるまま、枝を目の高さくらいまで上げたところでガレットの指先から枝に向けて魔法が放たれる。
枝の先が燃え上がり、松明としての役割が与えられた。
「なるほど」
ダンジョンである洞窟は暗い。その為の光源だった。
青年の振る舞いは常に自然だった。
そんな様子をミルにじっと見られていた。
「何?」
「え、あ、いや、あははは」
下手な誤魔化しだ。
青年に気づかれているとは思っていなかったのだろう。
しかし、ミルの特性に勘がするどいと認識を足してから青年のアンテナはさらに鋭いものになっている。
しかし、それすらも疑いの種になってしまう。
だからこそ、見られていた行為を咎めるような尋ね方はしない。
あくまで、自然な疑問をぶつけただけ。
「どうかしたのか?」
これからダンジョン攻略が始まる。
その前のいざこざかとラブも気が付き近づいてきた。
「大したことないわよ。ミルが彼を見つめすぎていただけ」
仕返しの為だろうガレットはにやにやとしてすぐさま報告。
青年はまたこのパターンに巻き込まれるのかと思いつつも、ミルの観察を続けている。
「あー、」
しかし、ガレットが思うような反応をミルはしていない。
むしろ、
「言っていいんすかねー……」
どこか申し訳なさそうにしている。
その反応が気に食わなかったガレットが詰め寄る。
「何よ? 言いたいことがあるなら言いなさいよ」
「そうだな。攻略前にわだかまりが残るのは良くないな」
そういわれれば隠す必要がないとミルが答えた。
「松明をもった人は当然一番前っすよね? だとしたら、戦闘が出来ない彼が一番前、だから、中々えげつないなーと」
確かに光源を持つ者が道の先頭を歩くのは、道の確保という意味でも当然。
しかし、それを戦闘が出来ないといった青年にやらせるという事は……。
流れで三人の視線がガレットに集まった。
「ち、違うわよっ! そ、そんなつもりじゃ――」
ラブが青年に手を差し伸ばしてきた。
「僕が持とう」
「ちょ、ちょっと――」
「自分も前衛職っすから」
ミルまで手を伸ばしてくる。
「ち、ちがっ――」
「ある意味、言い出しっぺは俺だから。役に立つなら、それくらいの役割を果たそう」
青年とラブは純粋に己の役割を、ミルだけは完全にからかいだった。
「違うって言っているでしょおぉおおおおおおおおおおおおおっ‼」
そんな一コマに、青年はダンジョン前でこんな騒がしくていいのだろうかと、疑問に思うのだった。
次話17時up予定




