↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王と平穏な日常を  作者: ダルマ787
PR
15/26

第14話 魔王と報告

ようやく全員が集まることになった初めての食事は穏やかでありながらも、緊張感を含んでいた。


理由は一つ。


「早速で悪いが、状況を聞かせてくれるか」


ランの話は、森を移動し二日ほど経った頃だった――。



夜が深くなる少し前、その日も夜の間は移動を最小限に留め、休みを取る直前の事だった。


「っ――⁉」


距離にすればまだ大分離れている。


動物とは違う気配にランは一足先に気が付き、瞬間的に気配を闇に溶かす。


風の流れる速度に合わせ、一瞬の隙も見せない。

その正体を探る為に距離を徐々に近づける。

近づくにつれ、小さな明かりが見えてくる。


どうやら相手はまだ気が付いていないようだ。

そして、野営の為に火を起こしている。


その時点で、ランは捜査の名分を得た。


理想は声が聞こえる距離まで縮める。


そう思い、境界線を測るためにランはさらに近づいた。


姿がはっきりと見えてくる。

だが、その距離はとても人の視力では届かない距離だ。


そう思い、さらに半歩近づいた時だった。


「ん?」


野営をしている一人がランの方向へ視線を向けた。


緊張感が走る。


それでいてランは汗の一つも零さない。


じっと耐え、闇に溶け続ける。


姿は見え、声は届く。


野営をする正体達は探索者だ。


「何?」


「獣っすか?」


静まり返る探索者。


そして、


「いや、気のせいの様だ」


その声にランは安堵し、半歩出した足を下げた。


そのまま情報を聞き出せれば御の字、捜査を続ける。


たわいのない会話から、得られる情報を確保した。


それからの時間、ピクリとも動かず、探索者が寝静まる頃にランは選択を狭まれる。


暗殺か帰還か。


探索者は野営の為の見張りが一人起きている。


気づかれず暗殺が成功すれば、残りも簡単だろう。


しかし、即座に出された答えは帰還。


魔王の命は調査であり、それ以外の指示は受けていない。


暗殺に成功すれば、ダンジョンへの危機は過ぎ去るだろう。

しかし、失敗はもとより魔王の意志がそこに加えられていない。


新たなる主の意志が明確でないのであれば、自己の判断は危険である。


そう結論づけた。


探索者から距離を離すまで闇に溶け続け、適度な距離を取ったところで走り出す。


深い夜の中、帰還の為ランは疾走し続ける。




「バナの協力があって時間短縮……。人族の探索者は三名。それも手練れか……」


ランの報告を整理しつつ、青年は考える。


「はっ。会話の内容から、調査が本文」


「ランが感じた感覚でいい。そいつらはダンジョンの中まで入ってくると思うか?」


「おそらくは――」


「理由は?」


「探索者の行動はギルドを通しての依頼。詳しい内容までわかりませんでしたが、魔王の存在の有無の確認。ダンジョン前まできてもその有無は確認できないでしょう」


「中まで確認するのが筋か」


「会話からは戦闘を構える様子は窺えませんでしたが、戦うことになれば……」


そういったランは、パインとマスカを見た。


そうなると青年は確認しなければならないことがある。


「パインとマスカは……、争いで人を傷つけたことはあるか?」


二人は顔を見合わせ、首を横に振る。


「正直に答えていい。できるか?」


びくっと二人の肩が跳ねる。


それでいて、二人はしっかりと正直に答えた。


「……多分、無理」


「…………ごめんなさい。無理です」


誰も責めたりはしない。


なにより、青年はそれを理解していた。


この二人、【魔王】を復活させようとしたが、実のところ【魔王】に世界征服を望んでいたわけではない。

望んでいたのは平穏な日々。

その為の力を欲していただけだ。


「無難なところ、何もせずお帰りいただくのが一番ではあるな」


それは逃げ隠れ、やり過ごすという事。


しかし、


「失礼ながら」


当然、出る批判がある。


ゼンが代表して声を上げた。


「それは無理かと」


それを青年は理解している。


そもそもの話だ。

青年は探索者という存在を知らない。

その上で、バナの情報からランを走らせた。

しかし、それは人里まで行き、動きを知らせてほしいというものだった。


それが蓋を開けてみれば侵入するものがすでに近くまで来ているという。


そして、それが最後ということはない。


「脅威と見られても見られなくとも同じだな」


訪れようとしている探索者が脅威はないと報告したとしても、それが信用され世界各地に伝わる保証がない。

なにより、誰にとっての脅威になるか。

それが全てに共通することなどない。

例えば、この森を手に入れたいと思っている者がいたとする。

そのものからすれば、ダンジョンは脅威と言える。


「そもそもダンジョンは脅威なのか?」


ゼンが答える。


「探索者の仕事の一つはダンジョンの踏破」


「だろうな」


青年が知りえる冒険者だの探索者だのの、やることは相場が決まっている。


青年がこの事態をどう受け入れたのか知る者はいない。


しかし、青年は伝える。


「各々出来る事、出来ないことを教えてくれ」


青年は出来る事をやるまでだ。


「覚悟は最初からしている。やるからには、手を抜けない」


【魔王】とは違う青年の存在価値。


攻めてくる者がいるのであれば、その気さえ奪う。


「さぁ、守るぞ。俺たちの居場所を」


各々が決意と覚悟を決める。


過去を振り返り、未来の為に――。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。