閑話 陽奈と海斗の初デート?前編
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今回は、オフィス編から少し離れて陽奈×海斗の閑話です!
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待ち合わせ場所に、海斗は陽奈より少し早く到着していた。
白のTシャツに、薄手の黒いシャツをさらりと羽織り、細身のデニムにスニーカー。
シンプルな組み合わせなのに、服の着こなし方が妙に様になっている。
頭には黒のキャップ。
そして顔には、少し色の入ったお洒落なサングラス。
ラフな格好のはずなのに、どこか芸能人のオフショットのような雰囲気を醸し出していた。
そんな海斗の前に――。
「海斗さん、お待たせー!」
陽奈が小走りでやってくる。
ふわっと揺れる白いワンピース。
足元には、少しだけ靴底の高いサンダル。
ピンクがかったグレージュの髪はハーフアップにまとめられていて、歩くたびに毛先が柔らかく揺れている。
小花のチャームがあしらわれたブレスレット。
何だかんだ手の込んだオシャレをしてきている。
海斗はサングラス越しに陽奈を見つめ――。
ふっと微笑んだ。
「ひなちゃん、いつもよりかわいい」
「……っ」
あまりにも真っ直ぐな言葉。
心臓が、ドキッと大きく跳ねた。
(おかしい)
今までなら、海斗の言う口説き文句は全てスルーできた。
『今日も可愛いね』
『ひなちゃんと会えるなら、毎日でもいいんだけどな』
『その服、似合ってる』
何を言われても、
「はいはい」
と流せていたはずなのに。
完全に恋愛対象外だと思ってたのに。
なのに。
(なんでドキッとしてんの……)
夏祭りが終わってから。
真っ直ぐな「好き」を聞いてから。
私。
なんか変だ。
そんなことを考えながら、慌てて海斗から目を逸らす。
「海斗さんは、いつもよりチャラすぎるよ」
「ひど。気合い入れてきたのに」
「とりあえずサングラス外して!」
「えー……」
「芸能人のお忍びデートみたいになっちゃうじゃん!」
「あながち間違いじゃないけど……」
「なに?」
「いや、なんでもない」
「いいから取って!」
「ひなちゃんが言うなら仕方ない」
押しに負けた海斗が、渋々サングラスを外す。
そして、それをシャツの胸元に引っかけた。
「これでいい?」
両手を軽く上げながら、陽奈に尋ねる。
目が合う。
英国ハーフ特有のくっきりとした目鼻立ち。
サングラスに隠されていた綺麗な二重の瞳が露わになり、真正面から陽奈を見つめていた。
「……っ!」
彫刻のように整った顔。
それを真正面から見てしまった陽奈は、反射的に目を逸らした。
(ほんと、何してんだわたしーーーっ!)
「?」
海斗は不思議そうに陽奈の顔を覗き込む。
「何、今日の反応ひなちゃんおもしろいね」
「からかわないで!」
「ごめんごめん」
ケラケラとひとしきり笑ったあと。
ふと、海斗の視線が陽奈の足元へ向かった。
「足、治ってよかったね」
「え?」
「夏祭りのとき、草履の怪我結構痛そうだったから」
「あっ……うん!」
陽奈は自分の足元を見る。
「大丈夫。もう全然平気。あの時はありがと」
そう言って、なぜか足をサッと後ろへ引いた。
「いえいえ」
海斗は笑顔で答える。
「じゃあ、行こうか」
そう言って、海斗はごく自然に手を差し出した。
陽奈は固まった。
「…………」
差し出された手。
そして、その手の持ち主を見る。
「……手、繋がないの? デートなのに」
「デートじゃない!」
即答だった。
「ただのお出かけ!」
「はいはい。分かった分かった」
呆れ顔で苦笑する海斗。
陽奈はそのままスタスタと映画館へ向かって歩き出した。
海斗はそんな陽奈の後ろ姿を眺めながら、ゆっくりとあとを追う。
「ひなちゃん、歩くの早くない?」
「普通!」
「そう?」
「そうです!」
「じゃあ、追いつかないようにしようかな」
「なんで!?」
振り返った陽奈が睨む。
海斗は楽しそうに笑った。
「冗談だよ」
「もう……」
陽奈は再び前を向く。
けれど。
頬が、少しだけ熱い。
(……手、繋ぐとか)
(急に言わないでよ……)
夏祭りの日。
海斗に手を引かれたことを思い出す。
あのときは、ただ転ばないようにしてくれただけ。
そう思っていた。
なのに今は。
差し出された手を見ただけで、胸の奥がざわついてしまう。
「ひなちゃん」
「なに?」
「映画、楽しみ?」
「うん!人気の映画だから。」
陽奈の表情がパッと明るくなる。
そんな彼女をみて、海斗は思わずクスッと笑う。
「何気に今日、俺も楽しみにしてたんだよね」
「えっ、海斗さんも?」
「そりゃね」
海斗は少し前を歩く陽奈の隣に並ぶ。
「でも、映画の内容と言うより。」
「ひなちゃんと映画って、初めてじゃん」
「……そうだね」
「だから楽しみ」
「……」
まただ。
こういうところ。
さらっと言う。
何でもないことみたいに。
(……ずるい)
陽奈は小さく唇を尖らせた。
「でも、映画館では静かにしてね」
「俺そんなにうるさい?」
「うるさい」
「即答?」
「この前ラスクロメンツとのLIME電話でずっと喋ってたじゃん」
「あれはゲームだから」
「ゲームでも映画でも、静かにしてください」
「了解」
海斗は敬礼するように手を額へ添えた。
「……もう」
思わず笑ってしまう。
その瞬間。
海斗が陽奈の横顔を見た。
「……やっぱり、笑ってるほうが可愛い」
「!」
陽奈の笑顔がピタッと止まる。
「だから、そういうの!」
「何?」
「そういうことを普通に言うの!」
「本当のことだから仕方なくない?」
「仕方なくない!」
「じゃあ、どうすればいい?」
「言わなければいいの!」
「それは無理かな」
「なんで!」
「思ったこと言ってるだけだから」
「…………」
陽奈は言葉を失った。
海斗はそんな陽奈を見て、また笑う。
「ひなちゃん、今日ずっと忙しいね」
「誰のせいだと思ってるの……」
「俺?」
「……海斗さん」
「はい」
「……知らない!」
陽奈はぷいっと前を向いた。
その耳が少し赤くなっていることに。
海斗は気づいていた。
けれど、あえて何も言わなかった。
映画館に到着すると、二人はチケットを発券する。
「ポップコーン買う?」
「うん!食べたい!」
「味はキャラメルでしょ?」
「なんで分かったの?!」
「俺天才だから。」
「はいはい。」
「じゃー、飲み物は?」
「オレンジジュース」
「子どもみたい」
「いいでしょ別に!」
「もちろん」
海斗は笑いながら注文する。
ポップコーンを一つ。
飲み物を二つ。
そして受け取ったところで、海斗が何気なくポップコーンを陽奈へ差し出した。
「持つ?」
「え?」
「俺が持っててもいいけど、ひなちゃん食べにくいでしょ」
「あ……うん」
陽奈が両手で受け取る。
そのとき。
指先が、ほんの一瞬だけ触れた。
「……っ」
まただ。
胸が跳ねる。
(もう……!)
どうして今日は、こんなにいちいち反応してしまうのだろう。
ただのお出かけなのに。
海斗はそんな陽奈を見て、少しだけ首を傾げた。
「ひなちゃん?」
「な、なに?」
「顔赤くない?」
「映画館、暑いんじゃない?」
「そう?」
「そう!」
「ふーん」
海斗は納得したような、していないような顔で頷く。
二人は並んでスクリーンへ向かう。
その距離はいつもより、ほんの少しだけ近かった。
映画が始まるまでのこの時間が、思っていた以上に楽しい。
そんなことを、二人とも同じように感じていた。
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ご覧頂きありがとうございます!
今回はオフィス編にはあまり出番のない2人の閑話でした。
少しづつではありますが、お話の更新を頑張って参ります。是非ブックマーク登録で最新話の更新をお待ちいただけるとありがたいです( *´꒳`*)
次回は後編に続きます!♡
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