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《23万文字1.8万PV突破!》リアルとゲームのギャップが凄いが何故か絵になる美男美女  作者: 小春日和
第4章 オフィス編

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第70話 初出勤

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「ちょっと早過ぎたかな……」


朝7時頃。


早くも会社の最寄り駅に着いた実莉が、ホームの時計を見ながら呟いた。


普段の出勤時刻に比べると、乗客はかなり少なく、ゆったりと座席に座りながら優雅に出勤できた。


エスカレーターに乗りながら、スマホを開く。


LIME画面。


晃とのトークを開き、駅到着を知らせる。


改札を出て向かう先は――。


陽奈のアパート。


目的地に向け、ヒールで一定のリズムを刻みながら歩く。


アパートは駅と会社のちょうど真ん中辺りに位置する。


セミの鳴き声が聞こえる公園を通り過ぎ、数分歩く。


アパートの階段を上がった先。


目的地に到着する。


暑い中歩いてきたため、乱れた息を深呼吸で整える。


「……よし」


暫くしてからインターホンに指をやり、少し固まる。


扉の先に晃が居る。


いつもと違うフォーマルな装いの晃が脳裏に浮かび、少しドキッとする。


慌てて首を横に振り、インターホンを押した。


暫くしてから、足音が近づいてくる。


――ガチャ。


「あっ」


思わず声が出た。


開かれたドアから出てきた晃の姿は。


白いTシャツに黒いズボン。


黒いリュックを片方の肩にかけている。


王道カジュアルスタイルである。


普段と変わった様子もない。


「ごめん、お待たせ」


「全然! むしろ早く来すぎちゃったね」


実莉は顔の前で小さく両手を動かしながら答える。


そして改めて晃の姿を見る。


初めての職場だからといって、


特別なことはしていないようだ。


「なに?」


視線に気づいた晃の眠たげな瞳が、実莉を見つめ返す。


「ううん、何も」


慌てて首を横に振る。


「そっか」


そう言って、スタスタと階段に向かって歩き出す。


普段通り。ありのままの姿。


これが朝倉晃という男なんだな。


そう思った。


そして晃の後ろ姿を見て、小さく跳ねた1束の髪に気づく。


晃が歩く度、癖っ毛は命を宿したかのようにぴょこぴょこと揺れる。


「……かわい」


実莉はクスッと小さく笑い、彼の後を追った。


―――


朝9時。


就業開始前のオフィス内は、普段より少しザワついていた。


「今日から新人が来るんだよね?」


「どうやら芸能人並みにイケメンだとか」


「えーー! マジ?! どこ情報?!」


「履歴書の証明写真を見た事務の子が言ってた」


オフィスは朝からイケメン新人の噂話で持ち切りである。


周りから聞こえてくる話題に、


国崎翔馬は出勤直後からげんなりしていた。


ついに今日から。


彼にとって最大の敵、朝倉晃と同じオフィスで時を過ごすことになる。


……一方的に敵視しているだけだが。


そんな彼とは正反対なテンションで話しかけてくる男がいた。


「なぁ、くに!」


国崎の隣の席。


同僚の青年、相澤健人(あいざわ けんと)だ。


「何?」


「お前、新人と知り合いなんだろ?」


「まあ……知り合いというか、ただの顔見知りというか」


「実際のところ、どんな奴なの?」


「どんな奴……」


別にそんなに深く知らない。


ただ、先輩と話しているのを数回見たくらいだ。


返答に困りながら、ちらりと相澤を見る。


完全に興味津々な視線が向けられていた。


答えざるを得ない雰囲気である。


国崎は小さくため息をついた。


「まあ」


「サラサラマッシュヘアの今風イケメンだね」


「かーーーーっ! 出たよ! マッシュヘア!」


相澤はデスクに腰を掛けながら、片手で自分の太腿をペチンと叩いて落胆する。


「マッシュヘアで顔隠したら誰だって雰囲気でイケメンに見えるもんなんだよ。絶対ただの雰囲気イケメンだよ! 雰囲気!」


話題の新人が気に食わない様子である。


「何その理論」


熱く語る相澤の姿に、思わず鼻で笑ってしまう。


「前髪縛り上げて顔面拝んでやる」


拳をぎゅっと握り締めながら言う。


その時だった。


「よし、朝礼始めようか」


部長の一声で、オフィス内の社員全員が席につく。


「相澤、デスクに座るな」


「はい、すみません」


慌てて席につく相澤。


「まずは本日の業務確認から始めよう」


業務確認、連絡事項の共有、会社理念の唱和など。


朝礼はいつも通り、淡々と進められた。


「そして最後に」


部長の声に全員が顔を上げ、期待の目を向ける。


「短期間ではありますが、一緒に働くことになった仲間を紹介します」


その一言と共に現れた青年。


表情ひとつ変えず、部長の横に立つ。


カジュアルな装いにも関わらず、その場にいる全員の目を引く美貌。


そして、


緩くセットされたグレージュマッシュヘアのてっぺん。


不自然にピョコンと跳ねた1束の髪。


「え……俳優さんみたい」


「何あの髪の毛、可愛い」


「連絡先聞こうかな」


女性社員がキャッキャと声を上げている。


「確かに……イケメンかもしれない」


「ちなみに、あの触覚ヘア流行ってんのかな」


あんなにマッシュヘアを毛嫌いしていた相澤が、目を細めて晃の顔をまじまじと見ながら呟いた。


「イラストレーター兼デザイナーの朝倉晃くんです」


「朝倉晃です。短い間ではありますが、どうぞ宜しくお願いします」


一言の挨拶を終えると、拍手が起こる。


「声も素敵」


「クール!」


次々に上がる黄色い声に、相澤はチッと舌打ちする。


「声は俺のが絶対イケてるって。イケメンなら何しても肯定されるのかよー」


不服ダダ漏れな同僚に、国崎は苦笑いした。


だが、心のどこかでは相澤に賛同していた。


「はい、では今日も一日宜しく」


ザワつく社員に喝を入れるように、部長が大きく手を叩きながら言った。


「お願いしまーす!」


各々、仕事を開始する。


「朝倉くんは、乃村さんに色々教えて貰って」


「分かりました」


部長は晃が頷いたのを確認して、実莉の方を向く。


「乃村さん、朝倉くんをよろしく頼むよ」


「はい、お任せ下さい」


ノートパソコンを抱えた実莉が、2人の元へ駆け寄る。


「晃くん、こっち来て!」


「うん」


小会議室へと向かう2人の様子を、国崎と相澤はボーッと眺めていた。


「ほんとさ」


相澤が口を開いた。


「ん?」


「お似合いな美男美女コンビだな」


「……」


ふと横を見ると、明らかにふくれっ面になった国崎がいた。


「ゆでダコみたい」


「うるさい」


そんなやり取りをしていると、遠くから実莉がこちらに気づき、手を上げる。


「くにと相澤くん!」


「2人も一緒に来て」


国崎と相澤は顔を見合わせる。


「えっ俺らも?」


「いいから!」


実莉に手招きされ、二人も渋々その後を追う。


こうして、朝倉晃の短い会社員生活が始まった。


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