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《2章迄完結済15万文字突破!》リアルとゲームのギャップが凄いが何故か絵になる美男美女  作者: 小春日和
第1章 5周年記念イベント編〜5人が出会うまで〜

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第6話 のん、猫を養いたい



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たっぷり40個入りです( ˘ᵕ˘ )



その頃。


コンビニから少し離れた駅のホーム。


終電にはまだ早い時間帯だが、仕事帰りの会社員たちでそこそこ賑わっていた。


そのベンチに。


一人の女性が座っていた。


肩までの赤髪ボブ。


白いジャケット。


黒のインナー。


細身のパンツスタイル。


仕事帰りのオフィスレディ。


乃村実莉、二十八歳。


仕事では頼れる姉御肌。


社内外から信頼も厚い。


後輩からの相談も多い。


広報担当として社外とのやり取りもそつなくこなす。


いわゆるデキる女である。


そんな彼女が今。


ベンチの上で顔を真っ赤にしていた。


「やば……」


小さく呟く。


数十分前。


残業を終えた実莉は職場近くのコンビニへ立ち寄っていた。


甘いものでも買って帰ろうと思っただけだった。


それなのに。


帰り道でナンパに遭遇した。


しかも結構しつこいタイプ。


断っても断っても離れてくれず。


正直かなり困っていた。


そこへ現れたのが――


あの青年だった。


グレージュのマッシュヘア。


少し眠そうな目。


気だるげな雰囲気。


黒い服をゆるく着こなした高身長。


整った顔立ち。


そして。


無愛想そうなのに妙に優しい。


「やば……」


もう一度呟く。


思い出すだけで顔が熱い。


恋。


ではないと思う。


多分。


きっと。


おそらく。


だが。


なんというか。


「養いたい……」


ぽつり。


本音が漏れた。


「猫っぽい……」


「なんか飼いたい……」


自分でも意味が分からない。


だがそんな感情だった。


すると。


背後から声が聞こえた。


「え、なんか飼いたいんすか?」


「へっ?!」


実莉は飛び上がった。


勢いよく振り返る。


そこには。


明るい茶髪。


癖っ毛。


人懐っこいタレ目。


大型犬みたいな笑顔。


国崎翔馬が立っていた。


「なんでいんの!?」


思わず叫ぶ。


国崎は首を傾げた。


「いや、普通にここ会社の最寄り駅っすけど」


「そういうことじゃなくて!」


近付いてきた瞬間。


ふわりとアルコールの匂いがした。


実莉が眉をひそめる。


「……飲み会か」


「っす」


「元気だなぁこんなど平日に……」


呆れ顔で言う。


すると国崎は笑った。


「付き合いっすよ付き合い」


そう言ってから。


じっと実莉を見る。


「それより」


「ん?」


「のん先輩も顔赤いっすよ?飲みました?」


「え」


反射だった。


両手で頬を覆う。


隠す。


全力で隠す。


「こ、これは違っ!」


「ふふ」


国崎が笑う。


そして。


「かわい」


自然に言った。


実莉が固まる。


国崎は何も気にしていない。


本当に何も考えず言っている。


だから余計にタチが悪い。


実莉はぷいっと顔を背けた。


「あんたほんと距離感バグってるわ」


「えー」


国崎が不満そうな声を出す。


「冷たー」


そのタイミングで。


ホームにアナウンスが流れた。


『まもなく電車が到着します』


風が吹く。


電車がホームへ入ってくる。


「方向一緒なんで途中まで帰りましょー」


「勝手について来ないでよ」


「偶然です偶然」


絶対違う。


だが言っても無駄なので実莉は諦めた。


二人で乗り込む。


車内はそこそこ混んでいた。


空席は一つだけ。


国崎が即座に言う。


「どうぞ」


「ん?」


「座ってください、のん先輩」


「いいの?」


「はい」


国崎は満面の笑みで頷く。


そして。


「俺、年上敬うタイプなんで」


ニコッ。


腹が立った。


絶妙に腹が立った。


実莉は席へ向かおうとしていた足を止める。


方向転換。


ドアの前へ移動。


「やっぱ座んない」


「えっ」


「完全におばあちゃん扱いしたじゃん今」


「してないっす!」


国崎が慌てて追いかけてくる。


「そんなつもり全然ないんですが?!」


「絶対あった」


「ない!」


「いやあった」


「ない!」


小学生である。


結局二人並んでドア前に立った。


しばらく無言。


電車の揺れる音だけが響く。


すると。


思い出したように国崎が口を開く。


「そういや」


「ん?」


「何飼いたいんすか?」


「ぶっ!?」


思わずむせた。


掘り返すな。


なんで覚えてるんだ。


国崎はじーっと見ている。


大型犬のような目で。


実莉は視線を逸らした。


脳裏に浮かぶ。


グレージュの髪。


眠そうな目。


気だるげな雰囲気。


助けてくれた青年。


「……猫?」


「猫?」


「猫に近いな」


「へー」


国崎が感心したように頷く。


「先輩猫好きなんすか」


「好きとかじゃないけど」


実莉は腕を組む。


「まぁ養いたい」


「飼いたいから養いたいになってる」


「いいの!」


実莉が即座に反論する。


「とりあえず可愛いから飼いたいの!」


「ふっ」


国崎が吹き出した。


肩を震わせている。


「ほんと案外可愛いもの好きっすねぇ」


「悪いか!」


「いや全然」


国崎は笑う。


優しい顔だった。


そして小さく呟く。


「そういうとこ可愛いんだけどなぁ」


「ん?」


「何でもないっす」


ちょうどその時。


電車が駅へ到着した。


ドアが開く。


実莉は勢いよく降りる。


「私ここだから!」


「送りましょうか?」


「いやいい!!」


即答である。


「でも1人だとナンパされるかもっすよ?」


ちょーどそのナンパ帰りなんだよ、今。


心の中でツッコミを入れる。絶対口にはしないが。


国崎が一緒に降りようとした瞬間。


実莉は両手で押し返した。


「いいからあんたは帰りなさい!」


「えー」


「気使わなくていいのにー」


「そういう問題じゃない!」


本当にそういう問題ではない。


国崎がついて来たら余計疲れる。


「じゃあまた明日!」


「はーい」


ドアが閉まり始める。


その瞬間。


実莉は指を差した。


「そうだ!」


「ん?」


「明日の資料!ちゃんとまとめといてね!」


「げぇ……」


国崎の顔が一気に曇る。


「パワハラだ……」


「仕事です」


「ブラック企業だ……」


「自業自得」


「のん先輩ひどい」


電車が動き出す。


国崎はガラス越しに不満そうな顔をしていた。


実莉は思わず吹き出した。


電車は夜の街へ走り去る。


ホームに一人残された実莉は。


ふと。


空を見上げた。


そして。


思い出す。


グレージュの髪。


眠そうな目。


助けてくれた青年。


「……猫だな」


誰にも聞こえない声で呟く。


その頬は。


まだ少しだけ赤かった。


5周年記念イベントの日は刻々と迫っているのだった。


挿絵(By みてみん)

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