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《3章迄完結済17万文字突破!》リアルとゲームのギャップが凄いが何故か絵になる美男美女  作者: 小春日和
第3章 夏祭り編

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第62話 海斗の迎え

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屋台通りから離れた休憩所。


鯉と陽奈は向かい合わせになってパイプ椅子に腰掛けていた。


「もうすぐ花火始まるね!」


長机越しに鯉が嬉しそうに声をかけてくる。


「そうですね。」


「もうさ、このまま一緒に見ちゃおうよ!お酒でも飲みながらさ!」


「お酒は弱いので飲まないです。」


「へぇ!可愛い!酔ったハルちゃんと一緒にデートしてみたいな、なんて。」


あははと笑う鯉。


「はぁ、疲れる。」


しつこい鯉に限界を迎えた陽奈が呟いた。


「ん?なんて?」


「だからさ、」


「言ってますよね。」


陽奈は静かに続ける。


その表情から、いつもの柔らかな笑みは消えている。


「優しく断ってたらキリがないのではっきりと言います。」


「私はあなたとデートする気はないし、連絡先を交換する気もありません。」


「これ以上お話しする気もありません。」


一つ一つ、はっきりと言葉を区切る。


「だから、もうみんなの所へ帰ります。」


「え……。」


鯉は目を丸くした。


さっきまで困ったように笑っていた陽奈とは別人だった。


「しつこいです。」


「これ以上続けるなら、本当に警察呼びますよ。」


その一言が決定打だった。


鯉は固まる。


何も言い返せない。


そんな鯉の様子をみてから、陽奈は黙って立ち上がる。


りんご飴と唐揚げの入った袋を持ち直し、その場を後にしようと歩き出した。


「……っ!」


我に返った鯉が動く。


「行かせるかよ!」


陽奈の腕へ手を伸ばした、その瞬間。


パシッ。


横から伸びてきた別の手が、鯉の腕を掴んだ。


「……え?」


鯉がゆっくり顔を上げる。


そこには。


真顔の海斗が立っていた。


百八十センチを超える長身。


無表情のまま見下ろす視線。


長い前髪の間から、整った鼻と鋭い眼が見えた。


見覚えがある。


その圧に、鯉は思わず息を呑んだ。


「かっ……貝類!」


震えた声が漏れる。


その声に陽奈も振り返った。


「海斗さん!?」


海斗は何も答えない。


ただ、鯉の手首を掴んだまま、じっと顔を見つめている。


沈黙。


数秒しか経っていないはずなのに、何倍にも長く感じる。


「……な、なんだよ。」


鯉が強がるように言う。


その言葉を聞いて初めて、海斗はゆっくりと手を離した。


そして何事もなかったかのように鯉へ背を向ける。


真っ直ぐ陽奈の前まで歩いていく。


「海斗さん……なんで……。」


陽奈は驚いたまま立ち尽くしていた。


海斗は優しく微笑む。


さっきまでの威圧感が嘘のようだった。


「やっと見つけた。」


ほっと安堵の息が漏れる。


「ひなちゃん。」


その一言で、


陽奈の胸の奥に張り詰めていた糸が、ふっとほどける。


ぎゅっと袋の持ち手を握りしめる。


「ごめん…。待たせちゃった、みんなのこと。」


「気にしなくていいよ。」


海斗は穏やかに首を振る。


「そんなことより。」


「無事でよかった。」


「……ありがとう。」


陽奈は小さく笑った。


その時だった。


「ふざけんなよ!」


後ろから怒鳴り声が響く。


「オレじゃダメで、そいつならいいのかよ!」


「結局顔かよ!」


「ゲームの中じゃ清楚ぶってるくせに!」


「現実じゃぶりっ子してイケメンと仲良くして!」


「最低だな!」


周囲がざわつく。


「何?」


「喧嘩?」


人々の視線が集まり始めた。


海斗がゆっくり振り返る。


「……最低?」


小さな声。


それだけで空気が冷える。


「どの口が言ってる。」


陽奈は不安そうに海斗を見る。


「海斗さん……。」


「もういいよ。」


「あんな人、放っておこう。」


海斗は小さく頷く。


「大丈夫。」


「少しだけ待ってて。」


そう言って鯉の前まで歩く。


「ひなちゃんは。」


「顔で人を選ぶような子じゃない。」


静かな声だった。


「むしろ。」


「顔だけ見て近付いてるのは、あんたの方だろ。」


鯉の表情が強張る。


「ゲームで誰彼構わず女の子に声かけてるの、知ってる。」


「人を責める前に。」


「自分がやってきたこと、一回振り返ってみたら?」


鯉は何も言えない。


海斗はさらに一歩近付く。


「この前言ったよね。」


「これ以上近づいたら容赦しないって。」


そう言って胸ぐらを軽く掴む。


「ひっ……。」


鯉の肩が震えた。


海斗は真っ直ぐ目を見つめる。


「勘違いするな。」


「殴る気はない。」


「でも。」


「もう二度と、ひなちゃんの前に現れるな。」


「次は本当に許さない。」


その声には感情をぶつけるような怒鳴り声はなかった。


だからこそ、重かった。


その瞬間。


『まもなく花火の打ち上げを開始いたします。』


会場中にアナウンスが響く。


続いて祭囃子が流れ始めた。


海斗はゆっくりと手を離す。


鯉は慌てて数歩後ずさる。


海斗と距離を取りながら、逃げるように人混みの中へ消えていった。


その背中を、海斗は黙って見送る。


「海斗さん!」


陽奈が駆け寄った。


「ごめん。」


海斗は苦笑する。


「もっと早く見つけられたらよかった。」


「違うよ。」


陽奈は首を横に振る。


「助けに来てくれて……ありがとう。」


海斗は照れくさそうに笑った。


「こちらこそ。」


「無事で、本当によかった。」


その時。


ブルルルル――。


海斗のスマホが震えた。


画面には『晃』の文字。


「もしもし。」


『海斗さん! 姉ちゃん見つかった?』


「ああ。」


海斗は陽奈を見て微笑む。


「今、一緒にいる。」


『よかった…。』


心底安心したように息を吐く。


『ごめん、うちの姉が迷惑かけてしまって。』


「気にしなくていいよ。」


海斗は夜空を見上げる。


「花火始まるし、そっちには戻れそうにない。」


『だよね。お金払ってもらったのに、ごめん。』


「いいんだ。」


「みんなで楽しんで。」


その時。


陽奈が海斗の浴衣の袖を、ちょんとつまんだ。


「どうしたの?」


手に持った袋を少し持ち上げる。


「りんご飴と唐揚げ……どうしよう。」


「ああ。」


海斗は笑う。


「聞いてみる。」


再びスマホを耳に当てる。


「買ってきた食べ物なんだけど――」


『それなら二人で食べちゃってください。』


聞こえてきたのは拓郎の声だった。


「了解。」


電話を切る。


「俺たちで食べていいって。」


「そっか。」


二人は顔を見合わせ、小さく笑う。


やがて、夜空に一発目の花火が咲いた。


大きな音が夏の夜へ響き渡る。


「始まったね。」


陽奈が夜空を見上げながら言う。


「だね。ちょっとこっち来て。」


そう言って陽奈の手を自然に引いた。


陽奈は一瞬目を見開いた。


いつもの陽奈ならきっと言っていただろう。


「1人で歩けるから」と。


だが今は、自分の手を包見込む大きな手が心地よかった。


海斗は人混みから少し離れた、大きな木の下へ歩き出す。


さっきまでの騒ぎが、まるで遠い出来事だったかのように、夏の夜空には、大輪の花が次々と咲き始めていた。


その光に照らされながら並んで立つ二人の距離は、祭りが始まる前よりも少しだけ近くなっていた。

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ご覧頂きありがとうございます!

少しづつではありますが、お話の更新を頑張って参ります。是非ブックマーク登録で最新話の更新をお待ちいただけるとありがたいです( *´꒳`*)


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