第55話 手を繋いでるか否か
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メイン5人のリアルとゲームのキャラクター計10人をイラスト化したスタンプセットとなっています。
たっぷり40個入りです。
「うん、美味しい。」
屋台が並ぶ道沿いにある街路樹の下。
人波が少し緩やかになった場所で、二人は焼きそばを食べていた。
実莉は麺を頬張ると、大きく頷く。
「ほんとに美味しいね。ソースもお野菜も自家製だなんて、すごすぎる……。」
国崎家特製の焼きそばソース。
辛味は控えめで、子どもでも食べやすい優しい味だった。
「少しフルーティーだね。」
晃がもう一口食べて呟く。
「なるほど。隠し味はリンゴかな。」
「隠し味まで分かるの!?」
実莉は驚いて目を丸くした。
「何となくね。」
「合ってるかは分からないけど。」
「すごいね!」
「まあ、料理するの好きだから。」
そう言って晃は最後の一口を食べ終える。
「ごちそうさま。」
綺麗に空になったプラスチック容器を閉じ、両手を合わせた。
その様子を見て、実莉も慌てて焼きそばを口へ運ぶ。
「別に慌てなくてもいいのに。」
「いや、私のために待ってもらうの悪いから。」
晃から見えない角度で最後の一口を大きく頬張り、もぐもぐと咀嚼する。
空になった容器を片付けると、実莉も両手を合わせた。
「ごちそうさま!」
「さて。」
晃はスマホを取り出した。
「そろそろラスクロメンバーと合流しますか。」
そう言ってLIMEを開き、いつメングループへメッセージを送る。
『みんなどこいるの?』
すると、すぐに既読が一つ付いた。
直後、拓郎から写真が送られてくる。
開けた広場の最前列ではしゃぐみはるととうや。
大きな虹色の綿あめを分け合う海斗と陽奈。
そして、ブルーシートの上には白いうさぎの大きなぬいぐるみと、黒いラジコンが並んでいた。
『花火の席、確保してます。エリアAです。』
その一言が添えられている。
「花火か。」
晃が写真を見ながら呟く。
「席の確保、早いな。」
「なになに?」
実莉が横からスマホを覗き込む。
「花火の席取れたって。」
「早っ……。」
「しかもこれ、有料観覧席だな。」
「すごっ!」
実莉は目を輝かせた。
「そんなところで花火見るの初めて!」
普段の大人びた雰囲気とは違う。
子どものような無邪気な笑顔だった。
そんな実莉を見つめ、晃は小さく微笑む。
「行こうか。」
「みんなのところ。」
そう言って、
自然な動作で実莉の手をそっと握った。
「えっ!?」
予想外の出来事に、実莉は目を丸くする。
「だ、大丈夫だよ。自分で歩けるから……。」
そう言って腕を引こうとする。
だが、離れない。
見た目以上に、晃の手は力強かった。
本人はまったく気にした様子もなく、人混みをすり抜けるように歩き始める。
「だめ。」
短く一言。
「また寄り道されたら、俺が困るから。」
「うっ……。」
言い返せない。
晃はそんな実莉を見て、少しだけ悪戯っぽく笑った。
「ちゃんと捕まえとかないとね。」
その一言で、実莉は抵抗するのをやめた。
繋がれた手を、そっと見つめる。
男の人らしい、大きな手。
もっと細い手を想像していた。
(なんか……ずるいな。)
二人で屋台を回った時間は、ほんの数十分。
少し前までは、
「早くみんなと合流したい。」
そう思っていたはずなのに。
あと少し歩けば、みんなのところへ着く。
安心するはずなのに。
ほんの少しだけ。
この時間が続けばいいのに。
そんなことを思ってしまった自分に、
実莉は少しだけ驚いていた。
一定のリズムを刻む二人の足音は、
祭りの喧騒の中へと静かに溶けていった。
───
その頃。
花火観覧席。
用意されたブルーシートに腰を下ろし、
大人二人は綿あめを食べていた。
その前では、みはるととうやが楽しそうにはしゃいでいる。
「晃たち、楽しんでるかなー。」
海斗の持つ綿あめをちぎって自分の口へ放り込みながら、陽奈が呟く。
「そりゃもう、ぐーんと距離も縮まってる頃でしょ。」
海斗はケラケラと笑う。
「キスくらいしてんじゃないの〜?」
「それは絶対ないわ。」
陽奈が即答する。
「そろそろこっち来るかなー。」
「先程、『今向かう』と連絡が入りましたよ。」
答えたのは拓郎だった。
「手くらい繋いで帰って来るんじゃない?」
「それも絶対ない。」
「あの奥手な晃に限って、そんなことはない。」
陽奈は自信満々に言い切る。
「えー、そうなの?」
「じゃあ賭けちゃう?」
「負けた方が買い出し係。」
海斗がニヤリと笑う。
「賭け事好きですね。」
拓郎が真顔で言った。
「だって、ただ待ってるだけじゃつまんないでしょ?」
「じゃあ俺は、手を繋いで帰ってくるに一票。」
海斗が片手を挙げる。
「賭け事なんてくだらないですよ。」
拓郎はため息をつく。
その直後。
「手繋ぎデートに一票。」
真顔で手を挙げた。
「「参加するんかい。」」
海斗と陽奈のツッコミが綺麗に重なる。
「参加しないとは一言も言ってません。」
拓郎は眼鏡の位置を指で直した。
「で、陽奈ちゃんは?」
「もちろん、手は繋いでないに一票。」
自信満々に腕を組む。
「大丈夫?」
「このままだと男二人で買い出し行くことになるけど?」
悪戯っぽく笑う陽奈。
すると。
「「……。」」
海斗と拓郎が同時に固まった。
口を半開きにしたまま、
同じ方向を見つめている。
「今さら自信なくなったって言っても遅いからね?」
陽奈が勝ち誇ったように笑う。
「いや、違くて。」
海斗が小さく言う。
「え?」
「あれ見て。」
海斗が指差した先へ、陽奈も視線を向ける。
そして。
「……嘘でしょ。」
思わず目を見開いた。
人混みの向こうから歩いてくる二人。
辺りをキョロキョロ見回しながら歩く晃。
その隣には、
顔を真っ赤にし、俯き加減で歩く実莉。
そして――
二人の手は、
しっかりと繋がれていた。
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