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《3章迄完結済17万文字突破!》リアルとゲームのギャップが凄いが何故か絵になる美男美女  作者: 小春日和
第3章 夏祭り編

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第46話 淀む気持ちは梅雨のせい


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「リアルとゲームのギャップが凄い人達」

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メイン5人のリアルとゲームのキャラクター計10人をイラスト化したスタンプセットとなっています。

たっぷり40個入りです。


挿絵(By みてみん)


「実莉さん?」


「あ、晃くん?!」


降り続く雨。


駅前の屋根の下。


改札の近くで聞こえた聞き覚えのない男性の声に、実莉が勢いよく振り返った。


その先に立っていたのは、一人の青年。


グレージュのマッシュヘア。


眠たそうだがくっきりとした二重の瞳。


どこか気だるげな空気をまとっている。


肩の力が抜けていて、ダラっと立っている。


良く言えば自然体。


悪く言えばやる気がなさそう。


だが、端正な顔立ち。今風のイケメン。


そんな第一印象だった。


チクリ。


その青年を見た瞬間、


国崎の胸に小さな痛みが走った。


理由は分からない。


ただ、実莉の反応があまりにも自然だったから。


驚きと嬉しさが混ざったような声。


そして何より。


「晃くん」


下の名前。


しかも迷いのない呼び方。


親しい。


少なくとも、自分よりずっと。


国崎は小さく息を飲んだ。


「お知り合い、ですか?」


実莉に聞こえる程度の小声で尋ねる。


「あ、うん。ちょっと。」


「ちょっと?」


思わず聞き返してしまう。


実莉は一瞬だけ視線を泳がせた。


「えっと……お友達!」


実莉はゲーム仲間のことを会社の人に話していない。


そんな事情があるのだが。


国崎は知る由もない。


実莉の中では、それだけの間だった。


だが。


国崎には違って聞こえた。


ちょっと。


お友達。


その微妙な間。


その曖昧な表現。


まるで言葉を選んだようにも見える。


なにか深い意味があるのだろうか。


「お友達さんですか。」


国崎は笑顔を作る。


「いつもお世話になってます。」


そう言って頭を下げた。


笑顔だった。


けれど、それは普段の人懐っこい笑顔ではない。


どこかぎこちない。


作った笑顔だった。


それにつられるように青年も頭を下げる。


「朝倉晃です。」


「国崎翔馬です。」


再びお互い頭を下げる。


無愛想そうな見た目のわりに、礼儀はしっかりしている。


国崎は少しだけ意外に思った。


「同じ職場の人?」


晃が実莉を見る。


「あ、うん!」


実莉が笑う。


「後輩!」


そこは即答なんだな。


国崎は心の中で苦笑した。


友達の時はあんなに悩んでいたのに。


「突然現れたからびっくりした。」


実莉が言う。


「突然っていうか。」


晃は眠そうな目のまま答える。


「ずっとここに立ってた。」


「むしろ突然現れたのそっち。」


「あはは、ごめん。」


実莉が笑う。


その笑顔を見て、国崎は思う。


仲がいい。


とても自然だ。


付き合いが長い人特有の空気。


言葉にしなくても伝わる距離感。


それが二人の間にはある気がした。


「どうしてこんなところにいるの?」


実莉が聞く。


国崎も視線を向ける。


青年の手には荷物がない。


持っているのは――。


ビニール傘二本。


その瞬間。


実莉が察したように言った。


「あぁ!陽奈ちゃんのお迎えか。」


「うん、そうそう。」


晃が頷く。


「今日は強い雨の予報なかったから、日傘しか持って行ってなかったみたいで。」


「あ、私と一緒だ。」


実莉が笑う。


「姉ちゃん、こういうことよくやるから。」


「抜けてるんだよな。」


肩を竦める晃。


姉ちゃん。


その単語を聞いた瞬間。


少しだけ、国崎の体が強ばる。


つまり家族ぐるみで親しい相手。


先程まで数cmの距離で肩を並べて歩いていた実莉が、


むしろ遠い存在にも思えた。


そんなことを考えていると。


「良かったらこれ使って。」


晃が一本の傘を差し出した。


「え?」


実莉が目を丸くする。


「でも、陽奈ちゃんの傘は?」


「大丈夫。」


晃は淡々と言う。


「今日は帰る家一緒だから。」


「俺と姉ちゃんで相合傘して帰るし。」


あまりにも自然だった。


あまりにも迷いがなかった。


その様子を見て。


国崎は思わず目を見開いた。


さっきまで自分は考えていた。


もし傘が二本あったら。


一本を先輩に渡していただろうか、と。


答えはきっとノーだ。


たぶん自分は嘘をついていた。


一本しかないと言って。


こうして隣を歩く時間を選んでいた。


だけど。


今自分の目の前にいる青年は違う。


下心がない。


打算もない。


ただ困っている人がいるから渡す。


それだけ。


それができる人間だった。


(どこまで男前なんだこの人……)


思わず心の中で呟く。


悟りでも開いてるのか。


今の国崎にはそんなレベルに感じられた。


……単に傘1本渡しただけの事なのだが。


「でも悪いよ。」


実莉が困った顔をする。


「晃くん達が困るでしょ?」


「困らない。」


「本当に?」


「うん。」


短い返事。


迷いもない。


「それなら……お言葉に甘えさせてもらおうかな」


実莉が笑う。


「ありがと、今度会った時、絶対返すね。」


すると晃は首を横に振った。


「ただのビニール傘だし。」


「返さなくていいよ。」


「今後も実莉さんが使って。」


無表情のまま。


当たり前みたいに言う。


国崎は言葉を失った。


かっこいい。


たぶん同性でもそう思う。


「俺のこと気にしないで改札行きな。」


晃が言う。


「電車来ちゃうかもよ。」


「あ、ほんとだ。」


実莉が時計を見る。


「それじゃあ行くね!」


「お疲れ様です!」


国崎も頭を下げる。


「お疲れさま」


短い返事。


それだけなのに不思議と嫌な感じがしない。


ほんの数分。


それだけの時間だった。


だけど国崎には伝わっていた。


この人はきっといい人だ。


無愛想だけど優しい。


言葉は少ないけど、ちゃんと見ている。


そんな人だ。


そして同時に。


嫌な予感がした。


改札を通る。


ふと振り返る。


そこには実莉の姿。


そして。


晃と話している時の実莉は。


さっきまで自分と話していた時とは少し違った。


ほんの少し。


頬が赤い。


本当に些細な変化。


ほとんどの人は気づかない。


だけど国崎は勘がいい。


周りが思っている以上に。


だから分かってしまった。


以前昼休みにランチした時に聞いた、


実莉の好きなタイプ。


『普段は何考えてるか分かんなくて。』


『読めなくて。』


『でも何だかんだ、いざって時に頼りになる人かな。』


あれは。


きっと。


他の誰でもない。


朝倉晃という男のことなんだろう。


そんな気がした。


ホームへ向かう階段を上る。


胸の奥が少し痛い。


失恋ですらない。


始まってすらいない。


実莉はただの尊敬する先輩。


それなのに。


梅雨空みたいに、少しだけ胸の中が重たかった。


ーーー


実莉と国崎が去った後の改札前。


まるで入れ違いになるようなタイミングで、一人の女性が改札を抜けてきた。


「あっ、晃!」


朝倉陽奈だった。


「ありがとうー!」


ぱたぱたと駆け寄ってくる。


学校から最寄り駅まではタクシーを使ったらしい。


傘を忘れた割には、服が濡れている部分は少なかった。


「おかえり。」


晃が短く返事をする。


すると陽奈の視線が、ふと晃の手元で止まった。


「……あれ?」


怪訝そうな顔。


「傘……一本……?」


晃の手にあるのは一本のビニール傘だけ。


来る時は確か二本持っていたはずだ。


「あー、これ?」


事情を説明しようとした、その時だった。


陽奈が突然、両手で口を押さえる。


「まさか……!」


「……?」


「私と相合傘したかったの?」


「…………は?」


「やっぱ晃、シスコン……?」


「違うわ。」


即答だった。


間髪入れないツッコミ。


「傘一本なくなっただけで、なんでその結論になるんだよ。」


「だって2本持って来てって連絡したのに忘れてくるから……意図的に持ってこなかったとしか……」


「違う。」


「絶対違う。」


「食い気味に否定された。」


陽奈が少しだけショックを受けた顔をする。


「実莉さんに貸した。」


「実莉ちゃん?」


「そう、さっき駅でたまたま会って。」


「えー、じゃああと少し早く帰って来たら会えたってこと?!」


陽奈は悔しそうに言う。


「晃だけ会ったなんてずるい」


「別に。」


「……でも。」


陽奈がニヤリと笑った。


「晃も好きな人できたら、ちゃんとその人と相合傘とかするんだよ?」


「何のアドバイス?」


「青春って大事だから。」


「青春拗らせた人に言われたくない」


「うっ。」


痛いところを突かれたらしい。


陽奈が視線を逸らす。


「ほら、帰るよ。」


晃が傘を開く。


「ん。」


陽奈も傘の下へ入った。


駅前には相変わらず強い雨が降っている。


二人は並んで歩き出した。


「……あ。」


「晃、肩濡れてる。」


「別にいい。」


「姉ちゃんは風邪ひくと面倒だから。」


「それ遠回しに私の看病が面倒って言ってる?」


「……言ってない。」


「今ちょっと間あった!」


雨音の中。


いつもの姉弟のやり取りが夜の街に溶けていった。

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