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《2章迄完結済15万文字突破!》リアルとゲームのギャップが凄いが何故か絵になる美男美女  作者: 小春日和
第1章 5周年記念イベント編〜5人が出会うまで〜

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第2話 のん先輩、今日も悩む



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たっぷり40個入りです( ˘ᵕ˘ )



昼休み。


都内某所。


大手企業の広報部。


今日も乃村実莉は忙しかった。


「A案じゃなくてB案で進めてください」


「先方への返信、私が確認してから送って」


「会議資料できたら共有お願い」


テキパキと指示を飛ばしていく。


短い赤髪のボブ。


黒のインナーに白いジャケット。


すらりとしたスタイル。


ヒールの音を鳴らしながら歩く姿は、誰が見ても仕事のできる女性だった。


部内では有名である。


困ったら乃村先輩。


炎上案件も乃村先輩。


クレーム対応も乃村先輩。


新人教育も乃村先輩。


もはや万能。


頼れる姉御。


それが乃村実莉だった。


「乃村さん、助かりました!」


「ありがとうございます!」


「いえいえ」


柔らかく笑う。


周囲から見れば完璧だった。


仕事ができる。


面倒見がいい。


美人。


頼りになる。


隙なんてどこにもない。


ただし。


誰も知らない。


この完璧な姉御が。


夜な夜なMMORPGで五歳児を演じていることを。



ようやく昼休み。


実莉はコーヒー片手に休憩室へ向かった。


「はぁ……」


思わずため息が漏れる。


最近寝不足だ。


原因は仕事ではない。


ラスクロである。


五周年イベント。


行くべきか。


行かざるべきか。


毎晩悩んでいる。


そんなことを考えながら休憩室へ足を踏み入れようとした、その時だった。


「今週末ラスクロの五周年イベントやるよねぇ!」


「もちろん参加するー!」


「えー!さやかも行くのー!?」


「一緒に行こうよ!」


「やっぱ限定ドラぴこ欲しいよねー!」


実莉の動きが止まった。


ラスクロ。


ドラぴこ。


限定。


聞き覚えしかない単語が飛び込んでくる。


反射で入口の陰へ隠れた。


「…………」


壁に張り付く。


息を潜める。


(こ、こんなところにもラスクロプレイヤーが……!?)


冷や汗が流れる。


気が抜けない。


本当に気が抜けない。


もしイベント会場で鉢合わせたら。


もし身バレしたら。


もし。


「え!? あのすい♡さんだったんですか!?」


なんて言われたら。


社会的に死ぬ。


完全に死ぬ。


キャリアが終わる。


実莉はその場にへたり込んだ。


頭を抱える。


「終わった……」


「何がです?」


「ひゃっ!?」


真後ろから声がした。


ビクッと肩を震わせる。


恐る恐る振り向く。


そこには。


明るい茶髪。


無造作な癖っ毛。


人懐っこいタレ目。


大型犬みたいな雰囲気の青年が立っていた。


首を傾げている。


「のん先輩?」


国崎翔馬。


実莉の直属の後輩だった。


乃村実莉。


その名前が呼びにくいらしい。


本人曰く。


「のが多いんで」


という意味不明な理由で。


いつの間にか「のん先輩」になっていた。


「あー……くに……」


実莉は咳払いをした。


何事もなかったように立ち上がる。


スッ。


完璧な社会人モードへ切り替え。


「大丈夫すか?」


「大丈夫」


「絶対大丈夫じゃない顔してましたけど」


「大丈夫」


「二回言った」


面倒くさい。


非常に面倒くさい。


この後輩は妙に勘が良い。


「そんなことより」


実莉は話を変えた。


「いい加減その髪型どうにかしなさいよ」


「え?」


「私が怒られるの」


「えー」


国崎は不満そうな顔をした。


「でも同期も結構髪の毛遊んでますよ?」


「人は人」


「のん先輩だって髪色遊んでるじゃないですか」


そう言いながら。


なんの躊躇もなく。


実莉の髪へ手を伸ばした。


さらり。


赤い髪を指先で触る。


「ほら」


「……あんたねぇ」


実莉はため息をついた。


その手を軽く払いのける。


「ほんと距離近いわ」


「そすか?」


本人は本気で分かっていない。


頭の上にハテナマークが見える。


だから余計に厄介だった。


悪気ゼロ。


下心ゼロ。


天然。


最悪である。


「いいから」


実莉は国崎の肩を掴んだ。


くるり。


食堂の方へ方向転換させる。


「昼休みでしょ」


「はい」


「ご飯行ってきな」


「普通に心配してるだけなんですけどねー」


「はいはい」


背中を押す。


渋々。


本当に渋々。


国崎は歩き始めた。


数歩進み。


ふと立ち止まる。


「最近」


ぽつりと呟く。


「のん先輩、疲れてますよね」


実莉は少しだけ目を見開いた。


「目の下」


国崎は振り返る。


「クマできてますよ」


「……」


確かに。


最近少し目立っている。


とはいえ。


よく見ないと分からない程度だ。


仕事の疲れ。


きっと国崎はそう思っている。


だが。


違う。


全然違う。


原因は。


夜な夜なラスクロをやっていること。


そして。


五周年イベントへ行くかどうか。


悩みすぎて寝不足になっていることだった。


国崎が去ったあと。


実莉はスマホを取り出す。


カレンダーを開く。


三月二十一日。


土曜日。


予定欄にはしっかり書かれていた。


『ラスクロ5周年イベント』


『ドラぴこ確保』


「…………」


しばらく眺める。


そして。


小さく呟いた。


「ホワイトドラぴこ……欲しいんだよなぁ……」


姉御肌のキャリアウーマンは。


今日も真剣に悩んでいた。


仕事ではなく。


ぬいぐるみのことで。


挿絵(By みてみん)

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