第27話 姉弟との再会
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仕事帰りに夕飯を買うために寄ったコンビニ。
出入口から出てきたのは、まさかの人物だった。
「……あれ、実莉さん?」
聞き覚えのある声。
晃だった。
「え!?」
「あ、アキちゃん?!いや違う、猫?……じゃなくて晃くん!」
数時間前
好きなタイプを聞かれた時に頭へ真っ先に浮かんだ人物。
本日だけで何度目の登場だろう。
いや、正確には初登場なのだが。
実莉の脳内には既に何度も現れていた。
まさか本物と遭遇するとは思わなかった。
そのせいで少し挙動不審になる。
「……どうしたの」
晃が静かに言う。
コンビニから出てきた時の驚いた顔は既に消えていた。
今は完全に変な人を見る目である。
「ど、どうしてここに?」
平静を装いながら聞く。
「あー、ちょっとデザートの買い出し」
そう言ってレジ袋を少し持ち上げる。
中には大福らしきものが見えた。
「そうなんだ」
「1回ここで雪いちご大福買ってからハマってるんだよね」
「実莉さんは何買いに来たの?」
「夕飯買おうかなーって」
「へぇ」
短い会話。
なのに何故か緊張する。
自分でも理由が分からない。
すると
店内からもう一人出てきた。
「ごめんごめん、お待たせー」
白基調のワンピース
サラリと揺れる胸下まで伸びた髪。
グレージュがかった髪は
毛先にかけてピンク色に変化している。
陽奈だった。
そして晃の背中越しに実莉を見つける。
「って、実莉ちゃん!?」
ぱあっと表情が明るくなる。
「えー!こんなとこで再会するなんて!」
嬉しそうに駆け寄ってきた。
その勢いに思わず笑ってしまう。
「ほんとビックリした」
「私もー!」
楽しそうな陽奈。
ふと、実莉の視線が陽奈の手元へ向く。
大きなレジ袋。
ぱんぱんだった。
「何そんなに買ったの……?」
隣で晃も同じことを思ったらしい。
呆れた声を出す。
「お菓子見てたら一つに絞れなくてさ」
「なんかもう全部買っちゃえーって」
「あとお酒を少々」
えへへ。
そんな顔をしている。
「二つまでにしときなって言ったのに」
晃がため息をつく。
「ストックです」
陽奈は真顔だった。
完全に開き直っている。
「実莉ちゃんは何買いに来たの?」
「夕飯だってさ」
実莉が答える前に晃が言った。
実莉は苦笑しながら頷く。
「最近ちょっと作る気力なくてね」
「今日はコンビニで済まそうかなーって」
「あ」
それを聞いた晃が何か思いついた顔をした。
実莉へ向き直る。
「じゃあさ」
「うち来る?」
「カレー作る予定だから」
「どうせ余るし」
「え?」
予想外だった。
「いやいや、それは悪いよ」
「別に問題ないけど」
晃は本当に何でもないことのように言う。
「だって五年の仲だし」
さらっと。
当然のように。
陽奈も隣で大きく頷く。
「そうそう!」
「お菓子もいっぱい買ったし一緒に食べようよ!」
そして晃を指差した。
「ちなみに今あたかも自分の家みたいに言ってるけど私の家だからね?」
「家来ない?って言うの私のセリフだからね?」
「へいへい」
晃は適当に返事をする。
その態度が気に入らなかったらしい。
陽奈が頬を膨らませた。
微笑ましい。
本当に仲の良い姉弟だ。
「ほんと仲良いね」
実莉が思ったことをそのまま言う。
すると。
「「そうか???」」
二人同時だった。
息ぴったりである。
実莉は思わず吹き出した。
「じゃあ……」
「お邪魔しちゃおうかな」
その言葉に。
二人とも嬉しそうな顔をした。
⸻
そして三人は歩き出す。
先頭を歩く晃。
その後ろを実莉と陽奈が並んで歩く。
「うちね、このコンビニから徒歩五分くらいなんだよ」
陽奈が言う。
「一番近いからよく来るの」
「ちなみに俺も」
晃が前を向いたまま言う。
「ひちゃの家にいる時はだいたいここ」
「そうなんだ」
「実莉ちゃんは職場近い感じ?」
陽奈が聞く。
「うん。職場の最寄り駅の近くだから結構利用してる」
「あー!やっぱり!」
陽奈が納得したように頷く。
「なんか仕事帰りっぽかったもん」
「今までもすれ違ってたかもしれないね」
そう言われると本当にそうかもしれない。
まさか五年間ゲームを一緒にしていた仲間がこんな近くにいたなんて。
世間は狭い。
三人とも同じことを思っていた。
⸻
そんな話をしているうちに。
あっという間に陽奈のアパートへ到着した。
「ほんと近いね」
実莉が驚く。
「でしょー?」
「駅も近いし結構立地いいんだよ」
陽奈が胸を張る。
「褒められたの家であって姉ちゃんじゃないけどな」
階段を上がりながら晃が言う。
「うっさい」
即座に返ってきた。
先に到着した晃が合鍵でドアを開ける。
そして二人が入るまで、そのままドアを押さえて待っていた。
「お邪魔します」
実莉は軽く頭を下げながら部屋へ入る。
綺麗に片付いた廊下。
奥からは炊きたてのご飯の香りがふわりと漂ってきた。
その匂いだけで一気に空腹を自覚する。
「夕飯、ほんとに助かるわ。ありがとう」
実莉が陽奈へ向かって言うと、
「いいのいいのー!」
陽奈は手をひらひら振った。
そしてそのまま――
何故かリビングのソファへ直行した。
「……ん?」
実莉が首を傾げる。
すると陽奈が気付いたように笑う。
「あっ、作るの私じゃないよ?」
そう言って指差した先。
キッチンには既に夕飯の準備を始めようとしている晃の姿があった。
「え」
思わず声が漏れる。
視線が合う。
晃はベージュのエプロンの紐を腰の後ろで結びながら首を傾げた。
「ん?」
何か変?
そう言いたげな顔だった。
(え、待って)
(まさか晃くんの手作りなの!?)
(てっきり陽奈ちゃんが作るものだと思ってたんだけど!?)
(軽い気持ちで来ちゃったけど、今から晃くんの手料理食べるの!?私!?)
実莉の頭の中は一瞬で大混乱するのであった。
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