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《3章迄完結済17万文字突破!》リアルとゲームのギャップが凄いが何故か絵になる美男美女  作者: 小春日和
第1章 5周年記念イベント編〜5人が出会うまで〜

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第18話 すい♡の正体

賑やかなラスクロのテーマソングが流れている抽選会場。


限定グッズを抱えて喜ぶ人。


ドラぴこぬいぐるみを見せ合う人。


抽選の結果に一喜一憂する人。


会場は大盛り上がりだった。


――にも関わらず。


その一角だけ


まるで時間が止まったかのように静まり返っていた。


先程まで実莉の無理難題に対応していたスタッフですら、


「これは近寄らない方がいいやつだ」


と察したらしく、そっと距離を取っている。


妙な緊張感。


近寄りがたい空気。


そんな中


グレージュのマッシュヘアの青年がゆっくりと口を開いた。


「……すい?」


晃だった。


その視線は落ちたスマホへ釘付けになっている。


画面に映るのは、


Lv83 すい♡


赤いツインテール。


幼い見た目。


五年間見慣れたギルドメンバー。


そして


その画面の持ち主。


赤髪ボブの美人。


乃村実莉。


実莉は顔面蒼白だった。


生きた心地がしない。


心臓が痛い。


帰りたい。


今すぐ帰りたい。


しばらくスマホを見つめていた晃が、


恐る恐る顔を上げた。


実莉を見る。


そして。


固まった。


そこには。


魂が抜けたような顔の実莉がいた。


真っ白。


屍。


完全に屍。


ミイラ化しそうな勢いである。


その瞬間。


晃は耐えられなかった。


「ぶふっ」


吹き出した。


肩が震える。


笑いを堪えようとしている。


「笑われた!!!!!」


実莉が叫ぶ。


ショックだった。


「いや、ごめん」


「ギャップが凄すぎて笑ったんでしょ!?」


「いやいや」


晃は首を振る。


「そうじゃなくて」


まだ笑っている。


「実莉さん今の顔やばすぎ」


「ひどいーーー!!!」


実莉は両手で顔を覆った。


その場でしゃがみ込む。


もう無理。


終わった。


さよなら私の人生…



数分後。


ようやく笑いが落ち着いた晃は、


拾ったスマホを差し出した。


「はい」


実莉が受け取る。


「……」


「……」


気まずい。


とても気まずい。


だが、晃は特に気にしていない様子だった。


「まあ」


ぽつりと言う。


「ここじゃなんだし」


「一旦座りに行こう?」


近くの休憩スペースを指差した。


実莉は抵抗する気力もない。


顔を隠したまま立ち上がる。


晃に軽く腕を引かれながら歩く。


「死にたいーーー……」


「物騒だな」


「ほんと死にたい……」



休憩スペース。


運良く空いていた席へ座る。


向かい合わせ。


実莉は机に突っ伏した。


「はぁぁぁぁぁ……」


大きなため息。


今日何回目か分からない。


身バレした。


ホワイトドラぴこは外れた。


目的達成もできなかった。


そして何より。


すい♡の中身だとバレた。


最悪だった。


来なきゃよかった。


そんな言葉ばかりが頭を巡る。


一方


晃は頬杖をついていた。


静かに実莉を見る。


そして聞く。


「なんでそんな落ち込んでんの?」


実莉は少し顔を上げた。


「だって……」


小さな声。


「一番隠したかったことがバレたし……」


「うん」


「キモいって思うよね」


「何が?」


「大人があんなキャラ使って演じてるの」


晃は少し考えた。


「思ってたのと違うでしょ?」


「それはそうだね」


「うっ」


自爆した。


自分で聞いて。


自分でダメージを受けた。


晃は少し笑う。


「でもさ」


「それってダメなの?」


実莉が顔を上げる。


「え?」


「俺だって思ってたのと違ったでしょ」


「女キャラ使ってるし」


「一人称も私だし」


「……」


確かに。


アキの中身は完全にクールな女性だと思っていた。


まさか猫系イケメンとは思わなかった。


「ダメだった?」


晃が聞く。


「……ダメじゃない」


「じゃあ同じじゃん」


あっさりと言う。


「誰がどんなキャラ使おうが」


「どんな話し方しようが」


「どんな事しようが」


「別に問題なくない?」


「ゲームなんだし」


静かな声だった。


でも、不思議と胸に入ってくる。


「まあ」


晃が続ける。


「人に迷惑かけんのはダメだけど」


「俺ら別に迷惑なこととか何もしてないでしょ」


「現実から離れて楽しむためのゲームなんだから」


実莉は言葉を失った。


何も返せない。


ずっと。


周りの目を気にしていた。


知られたらどうしよう。


笑われたらどうしよう。


勝手に怖がっていた。


勝手に苦しんでいた。


でも


晃はそんなことを一切気にしていなかった。


だから、少しだけ。


心が軽くなった。


「……ありがとう」


小さく呟く。


すると晃が首を傾げる。


「なんの感謝?」


「え?」


「俺思ったこと言っただけだし」


そう言って立ち上がった。


「ちょっとここで待ってて」


実莉が顔を上げる。


「どこ行くの?」


「ちょっと」


曖昧な返事。


そして歩き出す。


……が。


途中で止まった。


振り返る。


「今回はちゃんと動かず待ってること」


実莉を指差す。


「はい……」


「よろしい」


満足そうに頷く。


「すぐ戻るから」


そう言って人混みの中へ消えていった。



静かになる。


実莉は再び机へ突っ伏した。


「はぁ……」


ホワイトドラぴこ。


欲しかったな。


抽選外れたしな。


もう無理だな。


そんな事を考えながら。


完全に伸びたスライム状態になっていた。



五分後。


「お待たせ」


声が聞こえる。


「おかえり……」


力なく顔を上げる。


そして。


固まった。


「えっ……」


勢いよく立ち上がる。


視線の先。


そこには


ホワイトドラぴこを片手で抱えた晃が立っていた。


ふわふわ。


真っ白。


丸い。


夢にまで見た。


ホワイトドラぴこ。


「え?」


「どうやって……?」


晃は肩をすくめた。


「ん?」


「これ欲しかったんでしょ?」


そう言って差し出す。


実莉は受け取れない。


信じられなかった。


「いいの……?」


晃が笑う。


「ここは」


「ありがとうでしょ?」


その瞬間。


実莉は震える手でぬいぐるみを抱きしめた。


柔らかい。


温かい。


夢じゃない。


本物だ。


「……ありがとう」


小さな声。


「うん」


晃は満足そうに頷く。


そして。


悪戯っぽく笑った。


「これで貸し1、ね?」


ポン。


軽く実莉の頭を叩く。


「子供扱いしないで」


「さっき駄々こねてた人が何か言ってる」


「こねてない」


「ほぼ土下座してた」


「してない!」


「してた」


「してない!」


久しぶりに、実莉がちゃんと笑った。


腕の中のホワイトドラぴこをぎゅっと抱きしめる。


そして宣言する。


「大事にする!!」


目が輝いていた。


晃はそんな実莉を見て、


満足そうに小さく頷いたのだった。


挿絵(By みてみん)

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明日の7時頃更新します

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