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《2章迄完結済15万文字突破!》リアルとゲームのギャップが凄いが何故か絵になる美男美女  作者: 小春日和
第1章 5周年記念イベント編〜5人が出会うまで〜

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第11話 そして気づく

開場から三十分後。


ラスクロ五周年記念会場はますます盛り上がりを見せていた。


会場中に流れるラスクロのBGM。


撮影に応じるコスプレイヤー達。


ドラぴこのぬいぐるみを抱えて歩く人々。


限定フードを販売するフードコート。


どこを見ても賑やかだ。


皆楽しそうに過ごしている。


そんな中。


乃村実莉は頭を抱えていた。


理由は簡単。


自分の両サイドを固める姉弟である。


本来の予定はこうだった。


ホワイトドラぴこを回収する。


帰る。


以上。


しかし現実は。


見ず知らずの美男美女姉弟と一緒にイベント会場を歩いている。


「……どうしてこんなことに」


実莉は遠い目をした。



遡ること三十分前。


開場直後。


「……猫くんだ」


「姉ちゃんだ」


互いを指差しながら固まる実莉と晃。


その様子を見ていた陽奈は。


二人の顔を交互に見た。


よく見ると少し頬が赤い女性。


そして。


「あっ」


何かを察した。


ニヤァ……


口元が緩む。


完全に悪い顔だった。


「ん?」


晃が眉をひそめる。


「ひちゃ今なんか悪い顔しなかった?」


「シテナイヨ」


何故か少し高い声。


しかも片言。


口を尖らせている。


「おい」


晃が呆れた。


「なんで急にインコみたいになるの」


嫌な予感しかしなかった。



一方その頃。


実莉は別のことを考えていた。


コソコソ話している二人を見る。


仲良さそうだ。


美男美女だ。


距離も近い。


自然だ。


そして何より。


絵になる。


(猫くん彼女さんいたんだ……)


胸が少しだけズキッとした。


別に。


好きとかじゃない。


たぶん。


でも少しだけ。


ほんの少しだけ。


胸の奥が変な感じになった。


気のせいだと思いたかった。



「あの」


実莉が口を開く。


「この前はありがとうございました」


軽く頭を下げる。


「あぁ、いえ」


晃もつられて頭を下げた。


少しだけ沈黙。


実莉は決断する。


(これ以上いたら身バレのリスクが上がる)


(撤収しよう)


「その……」


「私はこれで――」


帰ろうとした。


しかし。


「待ってください!」


彼女らしき女性に止められた。


実莉の肩が跳ねる。


「うちの晃とお知り合いなんですか?」


うちの晃。


その言葉に実莉の脳内警報が鳴る。


(うちの晃!?)


(独占欲強いタイプ!?)


(私何もしてないんだけど!?)


(修羅場に巻き込まれる!?)


冷や汗が流れた。


「あ、いや、その……」


「知り合いという程では……」


「たまたま少し話す機会があっただけで……」


しどろもどろになる。


そんな実莉を無視して。


陽奈は。


ガシッ。


実莉の腕を掴んだ。


「ひぇ!?」


後ろでは晃が頭を抱えていた。


「良かったら!」


陽奈が笑顔で言う。


「一緒に回りませんか!?」


(逃がさないってこと!?)


実莉は完全停止した。


そんな実莉を見兼ねて晃が助け船を出す。


「すみません」


そう言いながら二人の間に割り込む。


「うちの姉、距離感バグな所あるから」


姉。


その言葉に。


実莉は何故かホッとした。


「あ、姉弟なんだ……」


胸の中の何かが少しだけ軽くなる。


理由は分からない。


分かりたくもない。


「でも」


晃が続ける。


「ここで再会できたのも何かの縁だし」


「良かったら一緒にどうですか?」


首を傾げる。


グレージュの髪が春風に揺れる。


静かに返事を待つ青年。


その後ろでは。


目をキラキラさせた青年の姉。


完全に期待している。


……断れるはずがなかった。



そして現在。


「イベントでお友達できるとか思ってなかったから嬉しいなー!」


陽奈が笑う。


「よろしくね、実莉ちゃん!」


人懐っこい笑顔。


眩しい。


この子。


人見知りの”ひ”の字も無い。


実莉は少し引いた。


でも。


少しだけ嬉しかった。


「ね!晃もだよね!」


陽奈がニヤニヤしながら振り返る。


「ん、まあ」


晃も頷いた。


そして。


自然に実莉を見る。


パチッ。


また目が合った。


「っ」


実莉は慌てて逸らす。


「?」


晃は首を傾げた。


(俺なんかしたっけ)


何も分かっていない。



一人だけ落ち着かない。


実莉である。


理由は明確。


身バレの危機。


である。


(落ち着くのよ実莉)


深呼吸。


(このゲームをプレイしてる人は何千万人もいる)


(サーバーだって何百もある)


(同じサーバーの同じギルドに所属してる確率なんて……)


(宝くじで高額当選するようなもんよ)


(たぶん)


(知らないけど)


(大丈夫)


(赤の他人よ)


(赤の他人)


ここまで一秒。


気持ちが楽になる。


普段の冷静な実莉が戻ってきた。



その時だった。


「んぁああああ!!」


陽奈が叫んだ。


スマホを見ている。


ラスクロの画面だ。


「なんだよ急に」


晃が覗き込む。


「やばい!!!」


「なに」


「貝類さんが!!」


陽奈は顔を真っ赤にした。


「誕生日限定コスに着替えてる!!」


「え、早くない?」


晃が言う。


「まだ開場三十分だよ?」


「これいるじゃん!!」


陽奈は大興奮だった。


「貝類さん絶対いるじゃんこの会場!!」


「女の勘は当たるのよ!来てよかったぁあっ!」


「会えてから言うセリフだよそれ」


キャーキャー騒ぐ陽奈。


冷静にツッコミを入れる晃。


仲睦まじい光景であった。


……が。


その横で。


実莉は口を開けたまま固まった。


五年間聞き慣れた名前。


貝類。


聞いた瞬間。


実莉は二メートル後退した。


壁に顔を押し当てる。


「………………」


完全停止。


(身内じゃねぇかぁぁぁぁぁぁ!!!!)


(全然赤の他人じゃねぇぇぇぇぇ!!!!)


(五年の仲の身内じゃねぇかぁぁぁ!!)


脳内大パニック。


冷静さの欠片は一溜りもない。


完全に消滅してしまった。



「実莉さん……大丈夫……?」


遠くから晃が聞く。


「へ、へいきでぇすぅ……」


「なんかタラちゃんみたいな返事きたね」


陽奈が言う。


「平気じゃなさそうだな」


晃も言う。


「人酔いしちゃったのかも……」


心配そうな姉弟。


真実には全く気付いていない。



そして。


実莉は自ら地雷を踏みに行った。


「あの」


真剣な顔。


手汗が止まらない。


「二人のキャラ名……聞いてもいい?」


陽奈と晃を見る。


絶対に触れられたくない話だった。


しかし実莉は確認せずには居られなかった。

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