3.審美眼
旧車バイクが欲しい。しかも状態の良いものを。
そう口にする人は多い。
だが、あえて言わせてもらう。
そんな理想的な旧車は、この世に存在しない。
なぜなら、旧車と呼ばれるバイクは、製造からすでに数十年——ものによっては50年近くが経過しているからだ。
仮に、50年前から一度もエンジンに火を入れず、走行距離がほぼゼロだったとしても、それは「状態が良い」とは言えない。
ゴムやシール類は劣化し、内部の状態も保証はできない。
結局のところ、どんな個体であっても、乗る前には必ず点検と整備が必要になる。
「手間が少ない個体」は存在するかもしれない。
だが、「壊れない個体」は存在しない。
それを踏まえたうえで、ではどうすれば理想に近い旧車バイクを手に入れられるのか、という話になる。
一つ目は、旧車専門店での購入だ。
ここまで読んできた人は、「さっきと言っていることが違うじゃないか」と思うかもしれない。
だが、見ているポイントが違う。
まず店に入ったら、並んでいる車両をよく見てほしい。
多くの店では、購入が決まってから整備に入るため、展示車両はある程度埃をかぶっている。
一見すると、それは普通の光景に見える。
だが、この時点で違和感を持ってほしい。
店内に置かれているバイクは、すべて「商品」だ。
ふらっと立ち寄った客がそれを見て、「これがいい」と思う可能性は十分にある。
つまり本来であれば、いつ誰に見られてもいい状態であるべきなのだ。
それにもかかわらず、「売れてから整備します」という前提で展示されている車両は、言い換えれば“その場しのぎで仕上げる”可能性を含んでいる。
実際、納車前点検だけを行い、見た目と調子だけを整えて引き渡すケースも少なくない。
では逆に、店内の車両が綺麗に整備されていれば安心なのか。
そうとも限らない。
ここにも落とし穴がある。
外見だけを整え、交換部品に安価で質の低いものを使っている場合、購入後数ヶ月で不調が出ることもある。
これは見抜くのが難しい。
だが、完全に回避できないわけではない。
店員に、こう聞いてみればいい。
「すごく綺麗に整備されていますが、部品も交換されているんですか?」
この一言で、店の姿勢が見えてくる。
曖昧な返答をするのか。
具体的に、どの部品をどのメーカーに交換したか説明できるのか。
あるいは、現状の部品を活かして整備している理由まで語れるのか。
その違いは、そのまま店の“中身”だ。
旧車は、見た目ではなく中身で判断するしかない。
そして、その中身は店の言葉と姿勢に表れる。
だからこそ、購入前に会話をすることが何より重要になる。
理想を言えば、
展示車両の状態が行き届いており、
エンジン始動の確認にもすぐ応じ、
整備内容を具体的に説明できる店。
そういう店であれば、大きく外すことはない。
もっとも、そうした店は多くはない。
そして当然、修理費用も安くはない。
だがそれが、旧車と付き合うということだ。
安さと安心は、基本的に両立しない。
ここまでが、購入時に気をつけるべき話だ。
では次に、購入した後に何に気をつけるべきなのか。
その現実について、次は書いていこうと思う。




