3球目:”滝川南中”と”鷹宮蓮”
前回までの【あらすじ】
光羽虹翔。中学3年生にして初めての公式戦。
1年生2人の入部に加え、同級生の助っ人2人で”初めての”団体戦に挑む。
会場の雰囲気に圧倒されながら、期待と不安が入り混じる。
そして、試合の時間が近づいてくる。
その初戦の相手とは――。
「おい、あそこ」
「ん?どこ?」
「あそこの、入り口で話してるの!」
「見ないウェアだな!」
「北松中じゃね?今年からバド部出来たって聞いたし」
「もしかして、初戦から『滝川南中』と当たるところ?」
「そうそう!初出場で、初戦から『滝川南』は可哀そうだよな.......」
「今年、県でも優勝候補だろ?」
「3年生にヤバいのいるって聞くし!」
「ほら........噂をすれば!『滝川南』!」
会話をしていた、中学生もその存在感に押されて思わず道を譲る。
(.........すご!)
(オーラ半端ねぇ~)
「おい、たぶんあの前列の中心にいるのって」
こっそりと、耳打ちをする
「鷹宮蓮か?」
その声が聞こえたのか、蓮が中学生のほうを振り返る。
あわてて、2人は視線を逸らす。
(こえ~!!!)
(圧、半端ね~!)
「今年、個人戦でも県優勝候補だもんな!」
「そもそも、あの身長、中学生かよ!」
「175以上ありそうだもんな」
「あんな身長でスマッシュ打たれたらとれる気しねぇ~」
「バカ速いらしいからな!」
「でも、なんか雰囲気怖かったな........」
「たしかに、すごいピリピリしてるっていうか」
「見てる分にはいいけど、同じチームだとやりづらそう!」
「それはわかる!少しでもミスったら、すごいキレられそうだしな!」
「ハハハ――」
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「こうちゃん!そろそろ時間じゃない?」
高木が虹翔に声をかける。
「あ、ほんとだ......」
「こうちゃん????」
三上も虹翔を見ながら話す。
「あ!」
「え、えっと...........」
明らかに緊張して口数が減っている。
「おい!しっかりしろよ!!!!こっちまで、心配になるだろ!」
「う、うん。」
「だ、大丈夫。。。。。大丈夫。。。。。。」
そう言いながら、すでに、右手と右足が一緒に出ている。
(ああ、ダメそう...........)
三上と、高木が苦い顔をする。
「と、とりあえず、公式ウォームアップだね」
「こ、コートは.........」
虹翔が割り当てコートを確認しようと、プログラムに目を落としたその時。
『たきなん!!!!!!!』
『たきなん!!!!!!!』
『たきなん!!!!!!!』
2階観客席から大歓声が響き渡る。
学校の練習では聞くことのない音量に、北松中のだれもがビクッと肩をすくめる。
「す、すごい応援!」
「強豪校って感じ!」
「しかも、コール、たきなんって!」
「あんなんと、やんのかよ.........」
思わず、高木が声を漏らす。
「だ、大丈夫!声が大きいほうが勝つってわけじゃないし!」
取り繕うように虹翔が口をはさむ。
「それに、俺にはスピードがある!」
「どんなシャトルだって、とって見せる!」
自分を鼓舞するかのように右手を強く握りしめる。
「たしかに、こうちゃん、よく動くもんな!」
――その時。
『よろしくお願いします!!!!!!!!!!!!』
虹翔たちの背後のコートから、まるで相手を制圧するかのような大きな声が聞こえる。
とっさに全員が振り返る。
《第8コート》
公式ウォームアップが始まった。
そして、そのウェアの背中には『滝川南中学校』の文字。
「公式ウォームアップ時間は10分間です。それでは開始してください」
大会関係者の掛け声とともに、試合に出場するであろう5人と、もう1人の合計6人が入る。
「基礎打ち開始!」
掛け声とともに、一斉に選手がシャトルを打ち始める。
その声を聴き、三上が虹翔に話しかける。
「今やってる、基礎うちってのは何?」
「ああ、あれはね.........」
そういうと、虹翔が話し始める。
「バドミントンで一般的に行われるウォーミングアップみたいな感じかな」
「バドミントンで主に使うショットをああやって、ネット挟んで2人で撃ち合うの!」
「ちなみに、今やってるネットからあまり浮かせないで、平行に速い球を打ち合うのが”ドライブ”」
「ネットの下から上に向かって高い球を上げるのが”ロブ”」
「あとは........」
そういうと、虹翔が周りをキョロキョロとする。
「あ!」
そういうと、隣のコートを指さした。
「隣のコートでやってる、ネットの近くに立って、下に沈めるショットのことを”プッシュ”」
「それと、ああやってネットを挟んで、2人でチョンチョンって感じで、緩い球を打ち合うのが”ヘアピン”」
「あとは、上から打つショットがあるんだけど!」
そういうと、いつの間にか滝川南中の基礎打ちがドライブから切り替わっている。
「上から打ってねっとギリギリに落とすのが”ドロップ”」
「同じ、上から打つショットでも、相手のコートの奥深くまで高い球で返すのが”クリア”」
「それと.........」
――ズバァァァァァン!!!!!!!!
虹翔が最後のショットを説明しようとした瞬間に、まるで銃声のような音が響き渡る。
反射的に全員が振り返る。
第8コート。
ネットを挟んだ奥。
誰が打ったのかは、見ていなくともわかった。
滝川南中の中でもひと際大きく、オーラが違う選手がいる。
「な、何、今の音..........」
「バドミントンって、あんな銃声みたいな音出るの!?」
北松中の全員が固まる。
再びシャトルが上がる。
――ズバァァァァァァン!!!!!!!!
今度は北松中全員の目にしっかりと焼き付いた。
やはり間違いではなかった。
あの銃声のような音を出していた選手。
《鷹宮蓮》
「うわぁぁぁぁぁああ!やっぱりレベルちげー!」
「あんなの、だれが捕れんだよ!」
「てか、あのスマッシュ、当たったら死なないかな?」
「間違いなく、アザにはなりそうだよな.........」
周りのコートからささやくような声が聞こえる。
「よし!残り5分でダブルス合わせろ!」
滝川南中の監督の声が響き渡る。
「はい!!!!!!!」
6人の返事とともに、鷹宮蓮を含めた4人がコートに入る。
――パァン!
――パァアアアン!!!!
たった1ラリーでわかる。
明らかに、北松中のダブルスとはレベルが違う。
「ねぇ、こうちゃん。ほんとにあんなのとやるの??」
三上が不安そうに問いかける。
「だ、大丈夫!勝負なんてやってみなきゃわかんないし!」
虹翔も不安そうに答える。
その時。
「おい!!!!!今の、もっと早く入れるだろ!!!!!!!!!!」
コートの中から怒号が飛んだ。
とっさに近くにいた全員が振り向く。
鷹宮蓮だ。
「わ、わりぃ.........」
ペアも、申し訳なさそうに謝る。
その時、監督が声をかける。
「鷹宮!」
「スピードにこだわりすぎるなよ!大事なのは、お前個人の技術じゃなく、いかにペアと連携を図るかだ!速くても、ペアがついてこられなかったら意味ないんだ。」
「っ........はい..........」
「そんなこと、わかってます!!!!」
鷹宮は不満そうに答える。
「.............」
監督も何かを思うかのようにそれを見つめる。
そして、北松中のアップも終わると――。
『整列ーッ!!!!!!』
主審の号令がかかる。
いよいよ。
虹翔の初めての公式戦が始まる――。




