2球目:北松中学校
前回までの【あらすじ】
光羽虹翔が小学5年生の時に地元で開催された《インターハイ》
友達に誘われ見に行った、そこで行われていた競技は《バドミントン》
初めて近くで見るバドミントンという競技の迫力。
そして、目にもとまらぬ速さで展開される攻撃の応酬。
その魅力にひかれて中学でバドミントンを始めるが――。
――あれから、4年3か月
光羽虹翔、中学3年生、春。
「うわぁぁぁぁああああ。緊張する」
「体育館デカい!」
「人多い!!!」
思わず声が漏れた。
《岩手県総合体育館》
《中学校総合体育大会 男子バドミントン競技》
天井は高く、コートの数はけた違い。
2階に観客席まである。
「..........6、7、8、、、」
下のフロアに広がるコートを数えてみる。
「じゅ、10!!!!!」
虹翔の顔にも嬉しさと緊張が入り混じる。
「せ、先輩...........」
後ろから、遠慮がちな声が聞こえる。
振り返ると、1年生2人が両手を握りしめて並んでいる。
「.........ん?」
「いや、その.........」
「み、みんな強そうだなって.........思って」
もう一人もコクコクと頷く。
「だ、大丈夫!みんな、同じ中学生なんだし!」
緊張する自分を鼓舞するかのように、返答する。
――パァンッ!!!!!!
ちょうどその瞬間、下のコートで強烈なスマッシュが決まる。
「ひっ............!!!!!!」
思わず肩をすくめる1年生。
「今打った人、先輩よりスマッシュ早い!」
「あんなの当たったら、死んじゃう........」
すでに緊張で挙動不審になっている。
「だ、大丈夫だって!きっと何とかなる!」
そういうと虹翔は右手をぐっと握りしめる。
「おーい!!!」
後ろから太い声が聞こえる。
「こうちゃん!!」
振り向くと、手を振りながら歩いてくる二人組がいる。
「.........おーい!こっちこっち!」
虹翔も手を振り返し、二人に合図する。
そこには、虹翔の同級生2人が並んでいる。
「遅いよ!二人とも!!!」
「もしかしたら、来ないかもって心配したろ!」
虹翔が少しだけ身を乗り出して話しかける。
「いやいや!体育館広すぎだろ!これ!」
笑いながら近づいてきたのは野球部の三上悠。
「迷ったの、お前だけだろ!」
その後ろで、肩をすくめるのが、バレー部の高木紘一。
「普段、体育館なんて来ねえもん!てか、お前も迷ってたろ!」
「俺は、付き合わされただけだ!」
「てかさ、」
三上がグイっと顔を寄せてくる。
「俺らバドミントンの大会なんて初めてで、全然わかんねえんだから、仕切って!キャプテン!」
「お、おう!!!!」
「でも、やっと大会に出られた........。」
「出るからには、絶対勝つぞ。」
虹翔の表情が緊張から決意の顔に変わっていく。
「え!?こうちゃん、この即席チームで勝つつもりなの?」
「俺らルールも知らない助っ人だぞ!」
三上がケラケラと笑う。
「あ、当たり前だろ!!!やるなら勝つ!!!」
(........すげぇ、強気)
二人の顔が自然と苦笑いになる。
「でも、三上も高木も、助っ人に来てくれてありがとう!」
ふと、虹翔が二人に視線を向ける。
「や、やめろよ!照れる!」
三上のほほが少しだけ赤くなった。
「まあ、俺ら中総体終わっちゃったしね」
高木が続ける。
「学校で勉強してんのも暇だからな!」
「暇じゃねぇよ!」
即座に高木がツッコむ。
その様子を1年生は後ろで、ぽかんと、見ている。
「あ、あの........先輩、この人たちは?」
「あー。」
虹翔が軽く息を吐く。
「今日の大会の助っ人で来てもらったの!」
「同級生!」
虹翔が2人を手で示す。
三上と高木は1年生に向かって、軽く手を挙げる。
「マジっすか!?」
「え、でも........試合!?」
1年生が不思議そうにしているのを見て、虹翔が口を開く。
「大丈夫!今日は団体戦だから!」
「団体戦???」
「そっか!まだ、1年生には説明してなかったっけ!」
虹翔が頭をポリポリと掻きながら説明を始める。
「バドミントンには、大きく分けて2つの競技があるの!」
「1つは、個人戦。これは、みんなが想像しているような、トーナメント形式で戦っていくやつね!」
「テレビでよくやってる○○選手が優勝しました!みたいなのは大体個人戦!」
「シングルスなら1人、ダブルスなら2人でひたすら勝ち上がっていくって感じ!」
「それで、今日やるのが、もう一つの団体戦っていう競技。これは学校ごとに2複1単って言って、ダブルス2試合とシングル1試合をして、先に2勝したほうが勝ちなの!」
1年生が「へー」という顔でうなずいている。
「でも、こうちゃん、それって一人強い人がいたら.........」
三上が口を挟むと、虹翔がすかさず答える。
「そう!そこが大事なところで、団体戦は重複で出場するのが禁止されてるの!」
「だから、最初にダブルスに出た人が、次のダブルスにも出る!みたいなのは禁止されてて........」
そこまで言うと、三上が口をはさむ。
「なるほど、だから俺ら入れて5人必要だったのか!」
「そう!ダブルス4人とシングルスで1人。最低でも5人必要なの!」
「1人が勝利しても、残り2試合落とせば、負けになる。」
「逆に、1人だけ強くても負ける可能性があるのが、団体戦!」
「もちろん、個人戦でも勝つつもりでいるけど、今のうちが最も優勝を狙える可能性があるのはこの団体戦!」
「一人だけ強くても、周りが弱ければ薄まるってことね!」
高木も理解したように口を開く。
「そういうこと!」
虹翔が答えると、1年生も納得したようにうなずく。
「それに!俺だって、中学3年間何もしてなかったわけじゃないし!」
「ほんと、よく出場までこぎつけたよな.........部員一人だったのに」
高木が「ハハハ」と笑いながら話す。
「一人で打つ相手もいなかったけど、その分壁打ちもフットワークもいっぱい練習した!」
「ジャンピングスマッシュは.........まだ、未完成だけど打てるように練習した」
それを聞くと、三上も高木も「ハハハ」と笑い。2人で顔を見合わせる。
(俺らもだいぶ、シャトル出すの付き合わされたな............)
「だから、大丈夫だ!!!!」
「きっと勝てる!!!!」
こぶしをぐっと握りしめて、意気込む虹翔。
――しかし
ほかの中学校の生徒が、そんな虹翔たちのジャージを見て、こそこそと話している。
「おい、あそこって」
「あ、北松中!?」
「今年からできたんだっけ?」
「マジで!?」
「それで、1回戦、滝川南と当たるんだろう?」
「そうなの!?」
「うん。心折れないといいけどね」
「まじ、かわいそう...........」
そんな会話など、耳に入らず




