6話 魔眼の力1
~フィー視点~
王城の門まで飛んできた私は持ってきた筈の平民聖女を降ろすが全くの別人だった。一体あの聖女は誰と変わったのかが分からないが、私を騙すほどの幻術を使えるのは相当なモノ。あの女は種族は本当に人種なのかを調べておかないと。
ここまで幻術を使えるとしたら獣人の狐族かサキュバスしか私は知らない。この二つの種は格上相手でも少しの時間であれば騙せる。デオルを置いてきたのは失敗だったかもしれないけど、まぁ何とかしてくれると思うから私は自分のやるべきことをしましょう。
「フィーベル様!? 一体何用でしょうか?」
「国王陛下に謁見したい。通さないとここを焼き払う」
「しょ、少々お待ちください」
「早くして」
「はっ」
門番の一人が王城へと向かっていくのを見てから私は少しアイテムの整理をすることにした。デオルの”異空間”をモデルに私だけのオリジナルスキル”あなたの近くに"を作成した。まさかスキルを自力で開発とは思っていなかった。
このスキルはデオルに関係する事しか機能しない。魔力の消費が激しいけど、デオルが教えてくれた裏技のおかげで問題はない。私が中に入れないのは残念だが、この空間には時間の概念が存在しない。だからデオルの食べかけや使用済みを保管している。
収納上限があるのかが分からないけどその時は考えよう。そういえばこうゆう考え方になったのはデオルに出会ってからか。私は恵まれている自覚があるから色々と頑張ろうとして必死だったが、周りがソレについて来れなくなってしまった。
民の暮らしを良く、そして出来る限り救える者は救いたかった。だけど私を狙う者が多かった。裏切る者が多かった。だから私は国を出た。だがハティツィールの名は捨てることが出来なかった。王族としての義務は私が死ぬまで続くと父に呪いとして深く繋がれていた。
国を出て冒険者として生きて誰とも関係など、築くつもりは微塵もなかった。私は不確かなモノを考えたくなかったので、確実なことを求めて考え動いていた。気が付くとソロでSSSランクになっていた。それがどのくらいの偉業かは分からないしどうでも良かった。
誰かに頭を撫でてもらいたかった。私は誰かに笑顔で、よくここまで頑張ったねって、ありがとうって言ってほしかった。報酬なんてどうでもよかった。何かを成し遂げれば成し遂げる程、誰も私に声をかけてくれなくなっていった。
サガとアカネくらいは何時も通りに振舞っていたが、距離があった。私は誰かに飢えていたのだと今は分かる。だからサガに頼まれてパーティーを組んだ者達がいたのだが、ソイツらは欲深かった。まぁその欲で死んだのだがな。
パーティーが受けたクエストはエンシェントドラゴンの森にある花を少しだけ摘んできて終わりな筈だった。一輪で金貨20枚はする花を目の前にしてソイツらは目の色を変えた。邪魔な私を殺そうと目的地に罠を仕掛けていたのだ。
嵌った私が悪いのだと思っているのでソレについては恨んではいないが……私をモンスターと交わらせようとしていたことは許す気は全くない。エンシェントドラゴンがやって来て私ごと吹き飛ばしてくれたから何もされるずに済んだのだがな。危なかったぞ、私は初めてなのだからな。
身体全身がボロボロで死ぬ覚悟を決めた後に「あれ? エルフが行き倒れてる」と幼い声が聞こえた。あの森に子供が一人だけいたのには驚いた。その子供がデオルだったのだけどな。私の身体をまじまじと見た後、「ここで見捨てるのもいいけど、どうしよう」と言った。
酷く冷たい瞳で。それを私は見たことがあるからなのかは分からないが恐怖に支配された。瞳は綺麗な空色なのにその中にはドス黒いモノがあった。初めて本物の恐怖を感じたのが私よりも小さく幼い子供だったのだ。
「い゛、や、だぁ。だずげ__ゴァッ」
「いいよ。寂しかったし」
彼は簡単に言っていた。まるで興味があったみたいに、そして寂しげにしながら私を助けてくれた。その時点で異常とは思ったが、それをより正確に分からせられることがすぐに起きた。私を嵌めたパーティーのリーダーの男がデオルの背後に剣を持って立っていた。
私は声を出そうとするが出なくて殺さると思ったが、それはなかった。あの男の血肉が空から降って来たのだ。あの男はSSSクラスはあるのだ。いくら油断していると言っても子供に負けることはない筈なのに一瞬でやられていた。
デオルは何も感じていないみたく私をどう運ぶかを考えていた。見えない敵でもいるのかと思って周りを警戒する私に対して「大丈夫、敵は皆殺しにしたから。君を助けないとだし」と笑顔で言ってきた。ありえないと思いつつ私には綺麗に映った。
なんやかんやあって彼の住んでいる小屋まで運ばれて治療を受けながら、喋り相手になっていた。傷が治った後も色々と一緒にしながら過ごしているうちに私はデオルのことを愛してしまったのだ。だって私の頭を撫でてくれるし、褒めてくれる。
悩みを一緒に考えてくれるのだ。好きになるなと言う方が無理だ。誰かに寄り沿われるというのを知ってしまったら、私はもう抜け出せないから彼と一生を過ごしたいのだが、それは今のままでは無理だと分かっているので、デオルの元から離れることにした。
ちゃんと毎日、手紙のやり取りはしていたし学園のことを聞いたのでそれに向けて叔父さんへ返事も答えた。辺境伯にもデオルをもらうことを一方的に伝えて承認をもらえた。少しごねられたがアグール家を滅ぼすくらいは簡単だと言ったら即OKしてくれた。
「フィーベル様、準備が整いましたのでどうぞ」
「そう。ありがとう」
私がアイテム整理と昔のことを思い出していたら時間が相当過ぎていたみたいだった。さてと国王は私の話をマトモに聞いてくれるといいんだけどね。
謁見するのは玉座の間で行われる。一応の礼儀として跪いているけどもあまり好きではない。だって汚れるから。にしても国王は私のことを相当警戒しているみたい。大臣などは居なく近衛騎士団と王妃、そして第一王子か。確か名前はイオル・ゲルハーツ。
あまりいい噂は聞いていない男だ。それはデオルもそうだが、あの男は違う。婚約者がいる身で他の女に手を出している。貴族の方の聖女にも手を出しているって話も出ているのだ。聖女には勇者がいるのではないか? と思うがまぁいい。本人が否定しているしな。
「フィーベル殿、一体何用かな?」
「イオル、貴様は何様のつもりだ?」
「父上、私めは彼女を助けてあげようとしているのですよ」
「私を助けるだと調子に乗るなよ?」
「騙されているんだよ。ボクが救ってあげるから結婚しよう」
「「は?」」
この男は頭にゴミでも詰まっているのかと思えるくらいには理解できないのだが? よくもこんなのを私との謁見に連れてきているなと思うが、許してやろう。仕事を教え込むためには必要なことだしな。このアホのことについては放置だ。
私はこの男に対して全く好意を抱けないのはおそらくはあの魔眼によるものだろうな。よくサキュバスが使っている魅了スキルを増幅できる眼だ。私には一切効かないから気持ち悪いしかない。それは国王も近衛騎士団長もそうみたいだがな。
魔眼は確かに強力ではあるが自身の飲み込んでいくモノもあるから使い方を間違えなければいいのだが……頭が悪いアイツでは無理か。そんなことよりもデオルのことだ。
「陛下、私はデオル・アグールのことについてお願いがあり来ました」
「うむ……我もその者に対してお主に聞いてお_「可哀そうに騙されているのだね」_うるさい!! 黙らんか!!」
「ち、父上? 私めは救ってあげようかと」
「黙れと言っておるのが聞こえぬか?」
「しかしあの堕ら_「黙れ」_えっ?」
私はこの男を黙らせることにした。デオルが一切気にしていないから私も何もしないし、訂正する気はないが全く持って意味が分からないことで迷惑を掛けようとするのであれば黙らせる。殺すまではしないでおいてやるが、地獄を見せる。・・・今回は脅しだけにしておくか
「ボクの愛しのフィアンセ? どうして怒っているのかな?」
「まず私は婚約者ではないし、婚約する気はない」
「何を言って……」
「お前なんてどうでもいいし、視界にも入れたくない。消えるか地獄を味わうかどっちがいい?」
「ひっ!!」
逃げたのか。腰抜け過ぎるぞ。まぁコレで話やすくなったからいいとするか。近衛騎士団も動いていない所を見るとこのタヌキの計画通りって可能性があるな。はぁ……目が汚れたからデオルに癒してもらおう。その方がいい。
魔眼の力に取り込まれないといいがな。まぁその時は殺してやればいいってだけの話だからいいだろう。その前に婚約者が止めればいいだけの話だからな。アイツのことを本当に愛しているのであればって話だが。
~イオル・ゲルハーツ視点~
なんだよ!? ボクの魔眼が効いていないじゃないか!! 何が「コレがあれば全ての女は貴方の物」だ。騙したな!? 絶対に許さないぞ。いや待てよ、ほとんどの女には効いた。あのバカな婚約者もボクの虜だ。だから悪いのはあの堕落貴族のデオルだ!!
そうに違いない。アイツを殺せばあの美しいエルフのフィーベル・ハティツィールはボクの物になるんだ。あの白く美しい髪も赤い瞳も……身体も全てがぁ!! ボクの物になるんだっ!! あの二人の聖女だってボクの物になる。
何が異世界の勇者だ。何も出来ない奴ではなかったじゃないか。だからボクはやれる。あの男共を殺せるんだ!!!! 最高に冴えているぞぉ~ボクは!!




