5話 ■■■の普通1
フィーが何やら少し急用が出来たと言って飛んで行った。僕に対しては「いい子で待っていて」って言っていたけど、子供じゃないから待てるからね。あとすごい音したんだけど、一体何があっ__ギルマスが爆破されていた。
「フィーベル様ですね。全く、ほら起きて下さいよ」
「あ、あの小娘いつかシバく」
「無理ですね。私もギルマスも成長していますが、彼女はソレを遥かに凌駕しています」
「アカネ、これを頼む」
「・・・はぁ……デオルくん、少しコレをお願いします」
アカネさんはギルマスを無事な壁に叩きつけてからどこかに行った。えぇ……僕はドン引きだよ。まぁ頼まれたからにはやるけどもさ、何があったのかを聞きたいよ。ポーションとか持っていないから治療が出来ないんだよね。”異空間”にはあるけど、ここで使う気はない。
”収納”スキルは持っていないけど、似たようなモノは作ってあるから何も問題はないのだ。スキルなどにもレベルがある。スキルなどの習得やレベル上げにはポイントがいる。Plvは経験値で上がるが、職業に応じて変わるとのこと。Plvは言わばプレイヤーレベルだ。
冒険者ならモンスターを倒すことで、農家なら収穫で経験値は入る。僕の場合は何もないのでPlvが上がらないどうしたものかと悩みながら色々と試行錯誤してみたら経験値が手に入った。Plvは1のままだけど。
その理由は経験値をポイントに変換したからだ。Plvが上がる際、確認画面が出てくる。それにハイかイイエがあるのでイイエを選択したら経験値分のポイントをゲットした。ゲットしたポイントは体力やスタミナ、魔力などにも振れることが分かったので最初に均等に分けた。
Plvが上がることで体力、スタミナ、魔力、防御力、力、攻撃力、知力、器用さ、素早さに少しだけポイントを振れるがコレは効率が悪い。フィーにお願いして実験した結果分かったことだ。
しかもスキルを取得するポイントは1万ポイントがいる。誰かにそのスキルを教えてもらうことで半分にはなるが、Plvが上がれば上がるほど必要な経験値は増える。その分、ポイントなども比例して増えるが……大変なのだ。
スキルレベルには限界がありマックスが10みたいだ。その他には分からないが、フィーを見る限り上限はなさそうだ。まぁだからみんな職業を絞って必要なスキルを取得していくみたいだ。もちろん生まれながらスキルや職業を持っている者もいる。何かが平均よりも高かったりすることもあるから世界は不平等だな。
「このままに出来ないな。〈治癒〉」
ちなみに職業を選ぶのには色々と訳があり、スキルレベルが上がりやすくなったりする。他にも魔術師なら魔力や知力が2倍は成長できたりする。ちなみに副業もアリだ。あと特殊な職業には専用のスキルがあるのでそちらを優先的に取得した方がいい。一般人が出来るわけではないからね。
僕は無職だから、普通にスキル上げ自体が大変なので使えるモノから取得からレベル上げだった。今は”学生”ってのがあるが経験値も何も入らない。だから通う意味がないのだが、決まりだからやるしかないんだよな。
「嘘……デオルさん」
「デロ……ア……さん? いつから?」
「ヒールを、使え、るのですね」
ヤバいなコレ。僕が色々なスキルを使えるのがバレたら貴族用に移されてしまうんだよな。偽造スキルを持っているしレベルはMaxだしね。ここは誤解だって言うことを伝えないといけないんだけど、どうしたらいいのかな?
「すぅはぁ、職業は何ですか? デオルさん」
「何もないです。あるとしたら学生って職業ですかね」
「魔力の消費量は?」
「100です」
「やっぱり……気分は? レベルも1のままですよね?」
「えっ? 大丈夫です。レベルはその通りです」
一般的にはスキルを使う時は魔力が消費される。消費された魔力はPlvが上がるかポーションを飲むか、あとは自然回復を待つかしかない。スキルレベルを上げれば、ヒールなどの消費魔力が抑えられたりするし治癒師ならそれプラスで抑えられる。だから皆、職業に就く。金も稼がないといけないしね。
レベル1の平均的な魔力量は39だ。魔力を消費して0になると死ぬことはないけど、吐き気やめまいが出てくる。気絶する者だっている。そして所有魔力量よりも消費魔力が多い場合は死ぬことになるので要注意ってことで。
「デオルさんは、魔力が多い方なんですね」
「まぁはい」
「やっぱり貴族様は多いのですね」
嘘を吐いてごめんなさい。僕のパラメータは貧弱でした。それも相まって実家に捨てられますので、よろしく。まっ気になんてしていないからいいんだけど。魔力は平均のさらに下の15だった。他パラメータも平均以下だった。アグール家の最低値と言えるほど酷かった。
だから堕落貴族なんて言われたりする。努力次第でどうにもならないことだってある。女神の祝福の前にはしっかりと努力するように義務付けられていた。まぁなんの意味もないってことをフィーに教わったからもう気になんてしていないけどね。家の教育方針が悪かったってだけなのは分かったし。
「治癒師になってみませんか?」
「教会の?」
「はい、私達が育った教会で」
私達か……おそらくはあのパーティーは全員が孤児だったのだろう。まぁただの推測でしかないから違う可能性が多いにあるけどな。孤児が聖女になるってのは美しくていいじゃんね。僕は何も出来ないけど頑張ってほしいよ。
「治癒師にはなりません」
「どうしてですか!?」
「冒険者になってもFランクのままでいいと思っています」
「えっ」
「僕には夢がありません。信念もない。誰を救おうとも思ってません」
「ならどうして……」
「ソレが普通だからですよ」
「・・・普通じゃないですよ」
「いえ普通です。僕が家族に虐げられようが、君が誰かを救うことと同じです。普通なのです」
そうだ。この世は普通で溢れている。死ぬことも生きることも助けることも殺すことも笑うことも泣くことも……全てが普通だ。だから見捨てるもするし助けもする。僕を実家から追放することも普通のことだし、使用人や騎士がストレス発散に使うのも普通だ。前世では違うかもしれないが。
この世界は前世とは違うが、普通は存在している。感情で話すなら憎んでいるが感謝している。死にたいと常に思っているが、生きている。僕の感情には矛盾があるし、迷いがあるのが愛おしく思っている。何も理解してくれなんて言う気はないし話す気もない。
「おかしいです」
「えぇ知っています」
「決めました。私は貴方を救ってみせます」
「はぁっ?」
「善は急げです。ではまた明日」
「ちょ、早っ!!」
何か斜め上のことを言ってけども何故だ? 僕が何かを言った訳ではないだろうに。誰かに助けてなんて言ったことは……あるか。前世で一度だけだな。まっ誰も助けてくれなかった。勝手に手を差し伸べた者は僕を殺そうとしてきた。
善も悪も全てが普通なんだよ。それが神様だろうが何だろうが変わらない。どうでもいいか。僕はアカネさんに頼まれたことをしないとな。大きな傷だけは治したけど、小さな傷があるからソレをどうにかしないとな。戻ってくるまで待とうっと。
「早く帰ってきてくれないかな?」
このまま、時間だけが過ぎると寮母さんに怒られてしまう。さっさと登録だけ済ませようと思ったのにどうしてこうなった? あぁ~平和な日々がほしいぃ。”異空間”に引き籠るのもアリだけども無理だよぉ。まだしっかりと出来ていないからもう少し我慢しないと。
そこで……ただの■■■として生きることもアリかな。普通ではないのかもしれないけどね。




