18話 絶望の時間1
~レオン視点~
やはり皆、混乱しているか。俺は最初の集合地点にて全員に今回のことを説明した。逃げたい者は逃げることを許したのだが皆逃げようとはせずにいる。混乱していてそれどころではないのかもしれないがまぁいいか。
「殿下、我々は何をすればいいのでしょう?」
「あの堕落貴族だけが切り札ではないってとこ見せてやる」
「そうだぁ~俺だってモテたい」
「私だってやります。うへへ」
「相手に不足なし」
貴族も平民も関係ないのは分からぬが士気がいいな。まぁ理由は様々ではあるが頑張ろうとしてくれているのだから貴様も早く来い。じゃないとコヤツらが全て終わらせてしまう勢いだぞ。この学園の生徒や教師は覚悟を決めている。
近衛騎士団と各ギルドが今回は協力してくれるらしい。ここまでに来るのに後30分はかかるが未来覗では1時間後だ。それまでには戦える戦力は集まりそうだ。やはりデオルを探しに行かなくて良かったのかもしれないな。
「報告があります!!」
「述べよ」
「はっ! スタンピードが森の中心にて確認されました」
「・・・未来が変わったということか」
「それに続き報告がございます」
「どうした」
「推定ランクはZSです」
そうであろうな。スタンピードではそのランクのモンスターしかいない。俺らが亡ぶ理由にしてはシンプルであるな。こればかりは祈るしかないのだから仕方ない。皆にも伝えないといけないのが上に立つ者のせきむであるな。
俺は拡声魔道具を使い先ほどの報告をそのまま伝えた。コレは完全に負け戦だと言うことを俺は堂々と伝え逃げるように言った。未来ある者達をここで死なせるわけにはいけないから俺はこの場に残り殿を務めることにした。
「アミル……フィーベル嬢、あとは頼む」
「残るなら私」
「ダメだ。唯一のZSランクを失う訳にはいかない」
「殿下。なら私も残ります」
「ならん」
こうしているウチにモンスターは近づいているというのに何をぐずぐずいしているのだ。俺が事前にここを包囲しておけば何も問題なかったのだ。俺はデオルを英雄に仕立てあげようとして欲をかいたからこんな事態になったのだ。その責任くらいは取る。
「王太子様、俺らはパーティーじゃなかったか?」
「アレンか……そんなものはもうない」
「そうか。だが他は違うみたいだぞ?」
アレンが指さす方を見ると武器を取り戦う覚悟を皆が決めていた。しかも作戦を立てているのか、決められたパーティーで話し合っている。確実に死ぬのに何故、ここから逃げようとしない。俺を置いていくことくらいは出来るはずなのに。
「殿下が死に戦するのであればお供します」
「殿下、行きますよ」
「「「殿下、勝ってやりましょう!!」
「私は未来の王妃として貴方のそばにいます」
アホ共め。俺が一人で覚悟を決めていたのに貴様らがソレを壊すのはダメだと思うのだがな。仕方ないが負け戦に付き合ってもらわねばな。俺は大声で「貴様ら、王国の敵を多く殺し時間を稼げ!!」と言って森に突撃しようとした。
上空から聞き覚えのある声が聞こえて固まってしまったつい先ほど聞いた声なのに別人だと分かるほどに生気がなかった。生気がないのはアンデッド系だと決まっているが、ここまでの威圧感はなかった。アレンがいる方を見る。
そこには驚いているアレンがいた。なるほど、デオルを攫った者はどうやってかは分からないがアレンの姿をコピーしていたのだな。それでデオルは足止めをくらい、縛られている可能性があるな。変化を使う者はよくいるがここまで精巧なのは初めてだ。
「私は邪神アマヅキの配下_リース。デオル・アグールは私が殺した」
「はぁ⁉ 死ね!! 〈火魔法_”ファイアボム”〉」
「ふっ、そこのエルフは殺してあげる。他は降参するのであればペットにしてあげるわ」
「コレは……糸?」
フィーベルの魔法をただの息だけで相殺しただと? ありえないことはないが実力差が無ければそんなことは出来ない。あのリースと言った者はフィーベルよりも上だと言うことだ。それよりもデオルが殺されただと?
確かに未来覗ではデオルは居なかったと言っていたけどコレがいない理由だとしたら何も変えれないってことになるのか。俺は何を期待していたのだか。これではただの道化ではないか? ペットになるのは屈辱的だが、皆が助かるならなるべき__
「お断りだ!! 俺は戦う」
「アンタは誰?」
「アデル・アグール、貴様を倒して兄の仇をとる者だ」
「アンタがあの方が言っていた息子ね。そして私の出来損ないの兄ね」
「は???」
「コレって言ったらダメだったっけ? まぁどうせ死ぬんだしいっか」
「アデル様っ!?」
リースはニヤリと笑った後、瞬間移動でもしたのかと思えるほどのスピードでアデルを貫いた。アデルが貫かれたと同時にアレンとミナトが剣で斬ろうとするが二人は手刀で斬られた。反応できないくらい早いのはおかしい。
いやフィーベルでも糸に気が付かなかったところを見るとコイツは本当に強いのだろうな。だがここで俺だけ折れている場合ではないな。俺は槍で刺そうとするが簡単に折られた。それは想定済みだから本命は投げナイフだ。
「はぁ……抵抗されたらうざいし、皆殺しだね」
「させない」
「無駄」
手も足も出ないほどに瞬殺された。しかもここにいる全員がだ。経験豊富な者でも無理なのか? このリースと言う者が使えているアマヅキとは一体何も__斬られたのか。これじゃあ絶望が目の前に来たみたいだな。
~リース視点~
「つまんない」
▲▲▲様が言うから楽しみにしていたデオルはあっけなく殺せたし、他も全くダメ。いやこのエルフだけは糸で縛っているのに私の手刀を避けた。まぁかすっただけとはいえ致命傷だろうからほっておくのもいいのかも。
ゲルハーツ王国を滅ぼして邪神アマヅキ様を蘇らせないと。あの方も人使いが荒いよねぇ。妹に兄達を始末させるついでに国を潰して、アマヅキ様の欠片を集めて来いとか。私の能力は便利だけどさぁ結構魔力消費が激しいんだよ?
まぁこの糸があれば実質無限でいけるけど。デオルとエルフに糸を付けてあるから魔力を吸い取れるからテレポートを簡単にできちゃった。えっとスタンピードは王都のど真ん中にテレポートさせればいいんだよね。
「んじゃま〈”テレポ__〈”異空間 時流れ”〉ート”〉はぁ?」
私のテレポートに被せてきたのは誰? 異空間はデオルしか使えない筈だからアイツしかいない。死んだかを確認しておけば良かった。私の詰めの甘さが出た。
「どこだ? どこにいる?」
・・・まさか、異空間の中? いやそれなら開いた場所か、あらかじめセットしている場所にしか無理だって▲▲▲様が言っていたのに。死にかけていることで進化した? そんなわけない。おそらくは私に何らかのスキルを使っていたんだ。それが今発動しただけだ。そうに違いない。私は確実に殺したんだ。
さぁ……絶望の時間の始まりだ。・・・邪魔される可能性もあるからこの広場に座標を移しておこう。〈”テレポート”〉コレでコイツらも潰れるし、この国の者達も終わりだ。




